文学 宗教の自殺
亡父の蔵書から、エキサイティングな対談集を読みました。 宗教学者の山折哲雄と哲学者の梅原猛による、日本の宗教をめぐる対談集「宗教の自殺」です。 ちょうどオウムによる蛮行が世間をにぎわせていた時期に出版されたもので、前半はオウム真理教に対する分析が語られ、後半は仏教や神道、儒教などの宗教について語られています。 日本人にとっての善悪の問題、倫理観の問題、ニヒリズムの問題などが、広く浅く語られ、専門書のような難しさはなく、広く浅い知的な読み物に仕上がっています。 その中で、江戸時代までは仏教・神道・儒教などが渾然一体となった日本教とでもいうべき倫理感が日本人の行動を律し、明治以降は天皇を現人神とする国家主義的な考えが日本人の道徳律となり、まがりなりにも欧米におけるキリスト教のような国民全般を律する考えがあったが、戦後はそれらが破壊され、日本人全般を律する一般的な考えがなくなってしまい、欧米におけるようなキリスト教を柱としたうえでの個人主義ではなく、無軌道な個人主義がわが国を覆い、それは今なお続いているということが、危機意識とともに語られます。 さらには、神道の根本思想である、人間のみならず...