文学

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侠気

今日は与謝野鉄幹の忌日だそうです。 じつは私は与謝野鉄幹の詩歌や書くものが苦手です。 何かと言うと男気だの侠気だの情熱だのを持ち出す暑苦しいやつだからです。 与謝野鉄幹と言うと、「人を恋ふる歌」と題する16の短い定型詩が有名ですね。妻をめとらば才たけて みめ麗 しく情けある 友をえらばば書を読みて六分の侠気四分の熱 これが最初の詩。 すでに暑苦しい感じが漂っています。わが歌声の高ければ 酒に狂うと人のいう われに過ぎたるのぞみをば 君ならではた誰か知る  これが10番目です。 いよいよ勢いがスパークしてきましたね。おなじ憂いの世に住めば 千里のそらも一つ家 己が袂というなかれ やがて二人の涙ぞや 15番目です。 好悪はともかく、詩の文句を直観的に選ぶ才は天賦のものであると認めざるを得ません。 男気や侠気に重きを置いた人だけあって、才能ある無名の若手を発掘することにも情熱を傾けたようです。 後の婦人、晶子、石川啄木などをプロデュースしています。 当時かれには妻があり、その妻を捨てて晶子と結婚することになるわけですが、当時はずいぶんなスキャンダルになったようです。 しかしなかなかのおしどり...
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瘴気

この週末は冴えない感じでした。 家でごろごろ。 早くも春の瘴気に当てられているようです。 遠白く 空は曇れりひそやかに 山椒の葉の かをり来る昼    窪田空穂 はるか遠くまで曇っている空、どこからともなく山椒の香が漂っている、という感じでしょうか。 私はこの和歌に瘴気を感じます。 どこか不気味な感じがします。 瘴気とは、平たく言えば悪い気配。 その昔は伝染病などを指す意味もあったとか。 でも私が使う瘴気は、まさに悪い気配とでも言うしかないもので、実体がありません。 私には、春には瘴気が濃厚になるように感じられてならないのです。 昔から、春愁とか春恨とか、そういう気配に当てられてわけもなく憂鬱になる感情を表す言葉が存在したところを見ると、時代と地域を問わず、春とは憂鬱なもののようです。 早く桜が咲いて、狂気のように散ってしまえば、春の瘴気は桜とともに去っていくような気がします。 早く桜の便りを聞きたいですねぇ。窪田空穂歌集 (岩波文庫)大岡 信岩波書店窪田空穂歌文集 (講談社文芸文庫)高野 公彦講談社にほんブログ村本・書籍 ブログランキングへ ↓の評価ボタンを押してランキングをチェック...
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春の雨

今日は朝から雨。 予報では寒くなると言っていましたが、そこは春。 それほどではありません。  春雨や ものがたりゆく 簑と傘    与謝蕪村 春雨のなかをおしゃべりしながら蓑の人と傘の人が歩いているのですね。 二人は恋人同士でしょうか。 あるいは友人。 春雨という言葉と合わせると、何であれ、なんとなく色っぽく感じられるから不思議です。  春雨や いさよふ月の 海半(なかば)   与謝蕪村 これはまた幻想的な句ですねぇ。 春雨のなか、出そうでなかなか出ない月が海に映えているというわけです。 月を出しちゃって、しかもこういう風に詠まれると、もうぐうの音も出ません。 お彼岸のお中日も過ぎて、確実に陽が伸び、暖かくなってきています。 この時季、何がどうということもありませんが、気が焦る感じがします。 何か新しいことをしなければいけないかのような。 あるいは悪習を止めなければいけないかのような。 こういう感覚は正月にもありますが、春にはひどい瘴気が漂うせいか、それが激しいような気がします。 動物の発情期にあたるからでしょうか。 動物はこの時季を逃しては自分の子孫を残せないのですから、それは焦るで...
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梅一輪

今日は暖かいですねぇ。 梅は今が見ごろ。  梅一輪 一輪ごとの あたたかさ     服部嵐雪 芭蕉の高弟、服部嵐雪は梅が一輪咲くごとに暖かくなる春の様を、見事に句にしました。 そして梅が散り、桜が舞う頃には、コート要らずの春がきます。 私は毎年近所の公園で花見をします。 正月と花見だけは、昼酒を自らに許しています。 でも今はまだ、梅を存分に楽しみましょう。 千葉の地酒に、梅一輪というのがあります。 私はこれを好んで飲んでいます。 わりあいと安価で飲みやすい、気取ったところの無い良い酒です。 桜には酒が付き物なのに、梅を観て飲もうという気が起きないのはなぜでしょうねぇ。 寒すぎるのかな? それとも梅のたたずまいが、アルコールを拒絶しているんでしょうか。 もっとも酒好きの私は、花も月も雪も、何もなくても、楽しく飲んで酔いを楽しむ無粋なやつなんですけどねぇ。 蕉門名家句選〈上〉 (岩波文庫)堀切 実岩波書店蕉門名家句選〈下〉 (岩波文庫)堀切 実岩波書店梅一輪 上撰 純米酒 1800ml 九十九里の地酒 【千葉県】【ギフト対応可】梅一輪酒造株式会社梅一輪酒造株式会社梅一輪 特撰 吟醸辛口 1...
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悪の華

近代詩の父とも称されるボードレール。 しかし生前はあまり認められず、世をすねたような詩も数多くあります。 生前唯一発表された「悪の華」は公序良俗に反するとして摘発され、罰金刑に処せられたりしています。 亡父の莫大な遺産を派手に散財し、準禁治産者にされてしまったとか。 後のヴェルレーヌやランボーに影響を与えたことでも有名ですね。 ボードレールです。 「悪の華」から、一篇。 「敵」と題されています。    我が青春は陰惨なる嵐に似たり    時に一筋の光明なきにあらずも    すさまじき雷雨吹き荒れ    ひとつの果実とて実を結ぶことなし    いまや実りの季節というに    鋤と鍬とで 洪水に浸った土地を    あらたに耕しなおさねばならぬ    墓穴のようなこの土地を    我が夢に見る新しき花々が    砂浜の如く不毛なこの地に    実を結ぶことなどあるだろうか    苦しや! 時が命を食いつぶす    我らの心臓をかじる隠れた敵が    血を嘗め尽くして肥え太るのだ ここで敵とは、時間と解するのが一般的なようです。 時間が若さを奪い、得られたであろう名誉や富を奪ったというのですか...
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