文学 女流官能文学者
斎藤綾子という官能の世界を描く作家がいます。 私は「愛より速く」という自身の性遍歴を綴った自伝的作品と、バリの森の奥で女性ばかり4人の小さなコミュニティーで夜な夜な互いの体を貪り合う女たちと、東京から恋人を亡くして傷心旅行に着た女性との不思議な関係性を描いた幻想的作品「ルビー・フルーツ」を読みました。 私には少々性描写がきつくて、この2作だけで充分だと感じるほどでした。 ただ、性愛を描く女流作家が、えてして肉体的愉悦以上に、人間同士の愛情みたいなものをちらつかせて、私を白けさせるのとは逆に、この作家の作品はどこか明るく、乾いていて、ドロドロの女流官能作家とは一線を画しています。 「愛より速く」は高校生の時読んだのですが、官能小説というもの、どこか喜劇めいているな、という印象を持ちました。 それは団鬼六の「花と蛇」シリーズなんかも同様で、どこか滑稽で不思議な味が、官能小説の本質なのではないかと感じたことを覚えています。 性体験を秘め事とか言いますね。 秘めているからそこには神秘性や神聖さが内在しているのであって、文章で表に出し、秘することを止めれば、滑稽に思えるのは言わば当たり前です。 ...