文学

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迎春

新年あけましておめでとうございます。 このブログを愛読くださる皆様全てのご多幸をお祈り申し上げます。 私は今日親戚の家で昼から新年会。 明日は夜実家で新年会です。 今年は、 目出度さも ちう位也 おらが春 という小林一茶の句のような気分が日本国中を覆っています。 小林一茶は、ことしの春もあなた任せになんむかへける、と俳文集「おらが春」につづっています。 阿弥陀仏による他力本願を深く信仰していた彼は、正月を迎えるのもあなた任せ、つまり阿弥陀仏の力によるものだと言っているわけで、大海を小船で漂流しているような人の生において、人間の自力では何事もどうにもならないと、信仰告白をしているものと思われます。 私は浄土教の教えである他力本願を信仰するものではありませんが、小林一茶の信仰告白には心打たれます。 今年一年を無事に過ごせるかどうかは、それこそお釈迦様にもわかるめぇと思いますが、今日一日だけは働くのだ、明日は知らんのだ、という一日出勤を積み重ね、お給料をもらいたいと思っています。 幸い今の部署は性に合っているようで、苦痛ではありません。 それどころか、たまには面白いと思うことさえあります。 ...
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寒波

連日、日本列島に厳しい寒波が襲っています。 北国は大雪。 名古屋でさえ、積雪8センチを記録しました。 首都圏では晴れてはいますが、冷たい北風が吹き荒れています。 なんとなく、心も荒むというものです。 冬蜂の 死にどころなく 歩きけり  村上鬼城 村上鬼城は江戸時代末から昭和初期に活躍した俳人です。村上鬼城です。 恵まれた境遇ではなかっため、困窮した生活や人生の諦念、弱者や病気への苦しみなど、独特の倫理観で憐れみ、哀しみを詠った句が多いのが特色とされています。 上の句、なかなか迫力ありますねぇ。 冬の蜂の生への執着と、迫りくる死が、寒々しい冬の妖気とともに私たちを圧倒します。 下手なホラー映画より怖いですねぇ。 俳句という世界最短の定型詩が持つ力強さを想わずにいられません。 鷹老いて あはれ烏と 飼はれけり 村上鬼城 こんなことってあるんでしょうか。 カラスと鷹を一緒に飼うなんて。 ここにも、老いた鷹という弱者への視点が、不気味なまでに提示されています。 冬は厳しい季節であるとともに、お正月やクリスマス、バレンタインデーなど、楽しい行事も色々あります。 また、雪景色は都会でも田舎でも、世...
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高等遊民

今日は格別寒かったですね。 いったい、日本家屋は夏をしのぎやすいように出来ているので、冬はかなりしんどいです。 私が現在住まいする千葉市のマンションは鉄筋鉄骨コンクリート造りの上、リビングが南を向いているため、日中は暖房を必要としません。 しかし、私が25歳まで過ごした実家は規模こそ大きかったものの、木造で、ずいぶん寒かったように思います。 西行法師の冬の歌を二首。 年暮れし そのいとなみは 忘られて あらぬ様なる いそぎをぞする 年が暮れた、その時の恒例の行事は忘れてしまって、出家した今は昔と異なるさまの正月の準備をするのだ、というほどの意かと思います。 じつは仏道修行にはあまり熱心ではなかった西行法師。 それでも仏門に帰依したときには殊勝な心がけだったようです。 おかしいですね。 さびしさに 堪(た)へたる人の またもあれな 庵ならべむ 冬の山里 こちらは西行法師らしいですねぇ。 寂しさに耐えている人が私のほかにもいればよいな、庵を並べて住もう、冬の山里で、といったほどの意かと思われます。 西行法師、山中で寂しさのあまり死体をかき集めて人造人間を作り出した、という伝説が残っているほ...
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木枯らし

関東の冬といえば木枯らし。 今日も冷たい北風が吹いています。 この風さえなければ、関東の冬は温暖で、長い秋と言ってもよいくらいでしょう。 しかしこの北風が、関東の冬を厳しく彩っています。木枯らしに 吹き合すめる 笛の音を 引き止むべき 言の葉ぞなき  「源氏物語」第2帖、「帚木」に見られる和歌です。 思いがけない男性から、木枯らしに合わせて笛の音と優しい声色で口説かれ、思わず「寂しく1人でいる私には、貴方にずっと側にいて欲しいだなんて、言いたくても言えません」という内容を彼女が浮気心で詠んだ和歌です。 「帚木」といえば、有名な雨夜の品定めが行われる帖ですね。 大の男が、しかも高位高官が雨の夜に寄ってたかってこういう女は良いの悪いのと、おふざけがすぎますねぇ。 でもちょっとうらやましいような。 大体「源氏物語」を読んでいると、光る君をはじめ、貴族たちは仕事らしい仕事をしていません。 あっちの女こっちの女とふらふらし、たまに宴会で舞を舞うと、光る君の舞は格別だなどと褒めそやされています。 しかるべき地位に生まれれば、この世は極楽でしたでしょう。 しかし一方、貧しい農民に生まれれば、一生地べ...
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昨日も今朝も路上に停めた車のガラスは、真っ白に凍っていました。 私はこれを、車屋で買った霜取りのための三角定規のような板で削り落しました。 削る傍から氷が手に降りかかり、冷たいことこの上ありません。 車通勤でも手袋が必要ですねぇ。 雪が降らなくても、公園や畑は霜がおりて真っ白です。 田んぼがあれば水が凍るんですかねぇ。 でも公園の池はかろうじて凍っていませんでした。 葦辺行く 鴨の羽がひに 霜降りて 寒き夕は 大和し思ほゆ 「万葉集」所収の志貴皇子の和歌です。 葦の生えた水辺を行く鴨の羽に霜が降って、こんな寒い夕暮れには大和のことを思います、といったほどの意かと思います。 私は冬の鴨を観察したことがありませんが、鴨の羽にも霜が降るんですねぇ。 鴨にしてみたらたまったものではありません。 そういえば、極寒の地の映像を見ると、人間の眉毛やひげにもつららが下がっていますもんねぇ。 寒々した風景を見て想うのは、故郷なのか、都会なのか。 歌が詠まれた当時は大和が都会だったわけで、志貴皇子にとっては、おそらく都会でもあり故郷でもあり、愛しい我が家が在る暖かい場所なのでしょうねぇ。 今となっては、寒...
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