文学

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不条理

生後わずか12日の長男を、41歳の母親が風呂で溺死させたという痛ましい事件が起こりました。 育児に悩み、将来を悲観して無理心中を図った、とか。 しかし乳幼児ではない大人は、どんなに意思が強くても風呂場で入水自殺できるものではありますまい。 息苦しければ顔を上げてしまうでしょう。 夫が風呂場にいる妻と息子の遺体を見て、消防と警察に連絡したとか。 わずか生後12日で育児ノイローゼのために赤ちゃんを殺害するとはにわかには信じがたい事実ですが、事実は小説より奇なり、世の中なんでもおこるのですねぇ。 そういえば夫婦で酔っぱらって銃を使った、ウィリアム・テルごっこ、をやっていたところ、誤って夫が妻を射殺してしまった、という笑えない事件が昔米国で起こりました。 しかも犯人が、ニュー・ウェーブSFの旗手にしてビート・ジェネレーションの代表、ウィリアム・S・バロウズであったことから、センセーションを巻き起こしました。 バロウズといえば、ヤク中でアル中でゲイ寄りのバイセクシャル。  代表作「裸のランチ」など、良く言えば実験的、悪く言えば意味不明。  クローネンバーグ監督が「裸のランチ」を映画化した時、あま...
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希薄

2009年、村上春樹がエルサレム賞を受賞したとき、私は初めて、しゃべって動く村上春樹を目撃しました。 村上春樹という人はそもそも存在しないんじゃないか、という漠然とした予感のようなものを感じていた私は、生身のさえない中年男をテレビで見て、失望を感じたものです。 デヴュー作「風の歌を聴け」は大学生のわずか19日間を描いた小説ですが、そこにはドラマがありながらストーリーが希薄で、架空の米人作家、ハートフィールドなる人物に仮託して作家の思いを語ったり、なんだか現実感がないのです。 そこが魅力なのですが、この希薄さはなんだろうと、何度も読み返したことを思い出します。 続く「1973年のピンボール」・「羊をめぐる冒険」・「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と、確かな物語がありながら、何か希薄なのです。 そのような印象から、村上春樹という作家は存在しない、もしくは表に出てこない、と勝手に決め付けていて、エルサレムでイスラエルを批判する政治的なスピーチをする丸顔の中年を見て、腰が抜けるほど驚いた、という次第です。 三島由紀夫や石原慎太郎、村上龍のように過剰にマスコミに登場する小説家もいれば...
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遊行女婦(うかれめ)

律令制の時代、都から各地に任官した役人は、地方役人から接待を受けました。 今と同じですね。 今、女性のいるお店で接待するのと同様、その昔宴席で和歌を詠んだり踊りを踊ったりする女性に遊行女婦(うかれめ)がいたそうです。 遊行女婦(うかれめ)は教養あふれる地方の名士であったらしく、万葉集に都からきた役人と恋歌を交わしたりしています。 おほならば かもかもせむを 畏(かしこ)みと 振りたき袖を 忍びてあるかも  児島(あなた様が普通のお方ならば別れを惜しんであれもこれもといたしましょうに、 畏れ多き身分のお方なのでこのようにお別れのしるしの袖を振りたくてもじっと我慢して耐え忍んでおります) 大和道(じ)は 雲隠(くもがく)りたり しかれども 我が振る袖を 無礼(なめ)しと思(も)ふな 児島(とは云うもののあなた様がはるか遠い雲の彼方と思われる大和にお帰りになると思うと、もう二度とお会いできないという気持がこみ上げ、ついに堪えきれず袖を振ってしまいました。どうか無礼な仕業とお思い下さいますな) 旅人も落涙を禁じえず、大勢の人の前で次の歌を返します。 ますらをと 思へる我や水茎の 水城(みづき)...
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冷泉家

BS-hiで冷泉家の歌会始を取り上げた番組を放送していました。 参加者はみなおじゃるな格好をし、平安時代そのままに和歌を朗々と読みあげていきます。 宮中の歌会始では洋装ですから、冷泉家のほうが古式ゆかしい儀式をおこなっているんですねぇ。 現代の作詞家やシンガーソングライターはやまとうたを学び、歌の世界をよりよいものにしてほしいですねぇ。 若い少年少女が愛してるだのふられただのと、あまりに直截に歌うのは、どうもいただけません。 花に託したり月に託したり、やんわりと歌ってほしいものです。冷泉家・蔵番ものがたり―「和歌の家」千年をひもとく (NHKブックス)冷泉 為人日本放送出版協会京の雅・冷泉家の年中行事 冷泉布美子が語る冷泉 布美子,南里 空海集英社冷泉家歌ごよみ―京の八百歳冷泉 貴実子,京都新聞社京都新聞出版センター冷泉家歌の家の人々冷泉 為人書肆フローラ↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
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寒い

今朝は特別仕立てに寒かったですね。 それでもほとんど毎日晴れている関東の冬は、雪に悩まされることがなくて楽です。 こちらでは雪かきは年に一二度の珍しい行事。 電車はとまり、ノーマルタイヤの車はスリップ、交通は大混乱。 要領を得ずに腰を痛めるやつやら、根をつめて体調をくずすやつやら。 雪国の人から見たらさぞ滑稽でしょう。 北風は冷たいですが、関東の冬の穏やかさはありがたいものです。 そこで、松本たかしの句。 玉の如き 小春日和を 授かりし 寒さが続いて、ある日、春のような暖かい日があった、その喜びを素直に表現しています。 門前の 小さき枯野の よき日和 小さき枯野に差す穏やかなお日様が目に浮かびます。  関東は関東でも北関東の雪の夜を思って、次のような句。 雪だるま 星のおしゃべり ぺちゃくちゃと 深夜、凍りついた小さな雪だるまが退屈しのぎにお星様とおしゃべりしてるんですねぇ。 どんな内容なんでしょう。 いずれにしろ、艶っぽい話や武張った話ではないでしょうねぇ。 与謝蕪村の京都の自宅への籠り居の句もよいですが、関東の冬もなかなかよいですねぇ。 松本たかしはもともと宝生流の能楽師の家に生ま...
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