文学 楽園
旧約聖書に拠れば、アダムとイブは知識の果実を食べてしまったがゆえに、楽園を喪失したことになっています。 これは一人キリスト教の問題に留まらず、広く人類全体の社会を言い表わしているものでしょう。 私たちは荒野に立っているのであり、あるいは立ち続け、あるいは歩き続けなければならないという、失楽園の苦しみを生まれながらにして持っています。 川端康成に「眠れる美女」という佳品があります。 強い睡眠薬で深い眠りに落ちている美少女。 高額の金を払って一夜を共にするのは、老いて不能となった老人。 本番行為以外は眠っている美少女に質の悪いものでなければ、いたずらをしてもよい、というのが店のルールです。 しかしここを訪れるのはいずれも役立たずの老人。 本番行為など、夢のまた夢です。 そこで老人たちはただ添い寝し、あるいは全身をなでまわし、若い女体に接することで、過ぎ去ったプレイボーイ時代の思い出に浸ったり、若さへの憧憬を取り戻したりするのです。 そこに、一人だけ、性的能力を保持したままの老人がやってきます。 しかし老人は戸惑います。 薄暗い部屋のベッドで昏々と眠る裸の美少女。 老人は、自分にはルールを...