文学

スポンサーリンク
文学

ほとんどあり得ない、しかし在ったかもしれない初恋物語

私の職場に、韓国に5年間留学し、かの地で出会った女性と結婚した後輩がいます。 奥様は来日し、日本で二人のお子様と家族仲良く暮らしています。 後輩、結婚に際しては、差別を心配していたようです。 韓国に住めば日本人ゆえの差別を、日本に住めば韓国出身者ゆえの差別を。 それは今のところ杞憂に終わっているようで、まずは良かった。 個人と個人の間では友情なり愛情なりが成立しても、集団となると差別が横行するのが人の世というもの。 まったく人の世は厄介なものです。 大日本帝國が朝鮮半島を支配していた大正時代、朝鮮半島で生まれ育った日本人の少年と、現地、朝鮮人の少女の恋を描いた小説に、「カンナニ」という佳作があります。カンナニ―湯浅克衛植民地小説集湯浅 克衛インパクト出版会 カンナニというのは朝鮮人少女の名前。 朝鮮ではよくある平凡な名前です。 朝鮮人貴族の家に住む巡査の子が12歳の龍二。 同じ屋敷に門番の子として住むのが14歳のカンナニ。 幼馴染の二人は、自然と、幼い恋に落ちていきます。 しかし、少年と少女の恋というだけで不埒とされた時代にあって、支配する民族とされる民族という関係性が、二人の間柄を複...
文学

10分の距離

今日は義母がワクチンを打つ日。 千葉駅に隣接する駅ビルのエキナカクリニックという病院で接種しました。 足が悪い義母のため、車で送迎しました。 ワクチン接種が終わって、車で自宅へ戻り、住まいの前にある蕎麦屋へ義母を誘いました。 蕎麦は義母の好物。 天ざるをしっかり完食していました。 普段は食欲がないと言って、ろくに食わずに体重が37キロまで落ちているのですが、「おしゃべりしながらだと食べられる」という言葉には泣かされます。 一人での食事が侘びしいのでしょうね。 切ないですねぇ。 でも義母は、週末に外食に誘っても、なかなか乗ってきません。 悪いと思っているのでしょうか。   昼食が終わって、義母を車で送りました。 わずか10分程度の距離。 その10分が、私たち夫婦と義母を決定的に遠ざけているようです。 コロナ疲れということがよく言われます。 私もそんな感じです。 週末になると用もないのに都内へ出かけ、わけもなくふらつくことを楽しみにしていましたが、去年の10月4日以来自粛しています。 10月4日は、たしか緊急事態宣言が解除になっていた頃のように記憶しています。 ご近所散歩ばかりでは飽きるの...
文学

恋猫と語る女

今日はよく晴れました。 そうだというのに、コロナを恐れて外出しませんでした。 そんな土日が続いて、どれくらいになるでしょう。 散歩に出かける気にもなりません。 こんな日は、句集でも紐解いてみようと、どれが良いかなと書棚を見つめ、なんとなく、「西東三鬼全句集」を手に取りました。西東三鬼全句集 (角川ソフィア文庫)西東 三鬼KADOKAWA ぱらぱらめくっていると、 恋猫と 語る女は 憎むべし という句が目に飛び込んできました。 ペットの猫を可愛がっている女。 その人は目の前にいて、はるか遠くにいる、女はそういう方法で挑発する、といったところでしょうか。 俳句は短歌と比べて、恋の句はあまり無いような気がします。 自然を賛美するようなものが多いでしょうか。 西東三鬼は、男と女をまったく異なる種類の生き物ととらえていたようで、上の句が生まれたのでしょう。 男と女は肉体の構造が異なっている以上に、その精神性に違いがあるのかもしれません。 こんなことを書くと、おっかないジェンダー研究者の叱責が飛んできそうです。 不倫がばれて、その行為を異文化コミュニケーションと言い放ったのは、森本レオでしたか。 ...
文学

迷言

人をポジティブかネガティブかに分ければ、私は間違いなく後者でしょう。 大量の精神病薬を飲んでなんとかやり過ごしていますが、薬が無ければ、10年前のうつ病発症の時に退職しているか、悪くすれば自殺していたでしょう。 うつ病は自殺率が極めて高い病気ですから。 ほぼ完治した今も、その頃の思い癖みたいなものから抜け出すことが出来ず、考えは後退していくばかりです。 よく、名言集というものがあります。 大体において、明日は明るい日と書くだの、夢は諦めなければ叶うだの、大の大人から見れば人生の真実とは程遠い迷言のオンパレードです。 そのような言葉に触れてポジティブな思考に入れるのは、ごく若いうちだけだと思います。 なぜならそれらは、嘘だからです。 下のような言葉を読んだことがあります。 誰の言葉かは忘れましたが。 死んでいる者は幸せだ、これからも生きていく人間よりも。 死んでいる者より幸せなのは、生まれなかった者だ。 西洋の学者が残した言葉だったように覚えていますが、うろ覚えです。 太宰治の「人間失格」みたいですね。人間失格 (角川文庫)太宰 治KADOKAWA 多くの、自分は成功したとか、勝ち組だと...
文学

心の底をたたいてみると

今週も月曜日を迎え、辛い一週間が始まりました。 誰でもそうでしょうが、自己が認識する自分と、他者が認識する自分には、ずいぶんと差があるものです。 私もそうで、日ごろから仕事をとてつもない困難な事業と感じ、終始必死の思いで仕事に向かっているのですが、上司からは、よく「易々とこなしているように見える」と評されます。 それは私が精一杯虚勢を張って、格好をつけているだけの話で、仕事中、心の底は苦痛と悲しみで満ちています。のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする。 夏目漱石の名言です。 どんなに生き生きとして元気そうに見える人でも、心の奥底には、悲しさを隠しているということでしょうか。 悲しみが人間の本性だとしたら、人生は苦痛に満ちていることになります。 しかし誰でも、生きていてよかった、最高に幸せだ、と思うことが、一瞬にせよあると思います。 この一瞬を求めて、悲しい音を隠しながら生きているのが凡人というものではないでしょうか。  私もそんな凡人の一人です。 心の底はひた隠し、今日も虚勢を張って生きています。 そうしなければ、職場に行くということ自体が耐えられないのです...
スポンサーリンク