文学

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アリス殺し

昨夜は小林泰三のダーク・ファンタジー仕立てのミステリーを堪能しました。 「アリス殺し」です。アリス殺し (創元クライム・クラブ)小林 泰三東京創元社 「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」は、誰もが知っている不思議なお話。 大学院生の亜理は、毎夜、その不思議の国で冒険する夢を見ます。 それも鮮明な夢。 しだいに不思議の国と現実との境界が曖昧になっていきます。不思議の国のアリス (角川文庫)河合 祥一郎角川書店(角川グループパブリッシング)鏡の国のアリス (角川文庫)河合 祥一郎角川書店(角川グループパブリッシング) 物語は、不思議の国を舞台にしたものと現実を舞台にしたものが交互に描かれながら進みます。 やがて、亜理以外にも、不思議の国の夢を見続けている人がいることを知ることになります。 共同してこの奇妙な事態を推理し、ついには不思議の国での存在と夢を見続けている人間がリンクしていることに気付きます。 彼らはこれを、アーヴァタールと呼びます。 要するに、アバターですね。 そして怖ろしいことに、アーヴァタールが不思議の国で殺されると、現実を生きる本体であるはずの人間も死んでしまうのです...
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中年サラリーマンの物語

午前中、軽作業をしたらひどく疲れてしまい、お昼で早退しました。 普段あまり自覚していませんが、加齢と運動不足により、だいぶ体力が落ちているようです。 帰宅途中、蕎麦屋によって鴨せいろを食い、帰るなり風呂に入って少し横になりました。 元気になって、最近お気に入りの作家、奥田英朗の短編集「マドンナ」を一気に読みました。マドンナ (講談社文庫)酒井 順子講談社 どれも40代の中間管理職を主人公にしたサラリーマン小説で、ちょうど私と同年代だけに面白く読みました。 表題作は、40代半ばの主人公が、新しく配属された25歳のOLに淡い恋心をいだき、一人相撲を取るというほろ苦いお話。 その他にも、何事もドライな年下の女部長の部下になった中年課長が、日本的慣習に染まらない外資系から転職してきたその部長の意外な一面を見つけて納得するお話など、サラリーマンにありがちな、小さな物語が巧みに紡ぎだされています。 私は精神障害で複数回にわたって半年以上の病気休暇を取ってしまったことから、出世しないことははっきりしています。 この短編集には、出世意欲ばりばりの中年から、事なかれ主義で出世を諦めた人まで、様々な中年男...
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ガール

30代未婚で働く女性たちの悲喜こもごもを活写した奥田英朗のユーモア短編集を読みました。 「ガール」です。ガール (講談社文庫)奥田 英朗講談社 晩婚化が進み、日本社会に30代未婚の女性なんて珍しくなくなりました。 で、いわゆる娘時代が長引いて、娘気分時代も含めると、40代でもガールだと思っている女性たちが溢れかえっています。 元気に人生を謳歌しているかに見える彼女たちも、時には将来を考えてブルーになったり、そうかと思うと一回りも下の若いイケメンに時めいて自己嫌悪に陥ったりと、胸中はなかなか複雑なご様子。 男の私は、そうなのかぁと感心させられることしきり。 でも、作者は男性なのですよね。 よくも揺れる微妙な女性たちの心理を描ききったものです。 昔太宰治の「女生徒」という小説を読んで、よく女の気持ちがかけるなぁと、驚いたことがあります。 それ以来の驚きです。美しい表紙で読みたい 女生徒太宰治ゴマブックス株式会社 自称ガールのみなさんが読めば身につまされ、私のようなおじさんが読めば感心する、快作でしたねぇ。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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昭和は遠く

今日は文化の日。 もともとは明治大帝の誕生日であることを知る人も少ないでしょう。 降る雪や 明治は遠く なりにけり と中村草田男が詠んだのは、昭和六年のこと。 明治が終ってやく20年後のことです。中村草田男集 (朝日文庫―現代俳句の世界)中村 草田男朝日新聞社 今、平成の御世も27年。 昭和は遠くなりにけり、というのが実感です。 激動の明治時代を生き抜いた明治大帝のご遺徳を偲びつつ、戦争に明け暮れた近代の反省に立って文化的な事柄に精を出そうというのが文化の日の主旨なんでしょうかね。 しかし生まれついての怠け者である私は、貴重な文化の日を、ただだらだらと過ごしています。
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家日和

昨夜は奥田英朗のユーモア小説集を読みました。 「家日和」です。家日和 (集英社文庫)奥田 英朗集英社 まったくこの作家のユーモアのセンスには笑わされ、感心させられます。 喜劇を生み出すというのは極めて知的な作業で、冷静さを必要としますね。 それでいて、ミステリや悲劇ほど売れないし評価されないというのは悲しいことですね。 この短編集は、ネット・オークションにはまる主婦や、妻と別居中に自宅マンションを自分好みの男の城に変身させてしまう中年サラリーマンなどなど、様々な滑稽な家族が提示され、面白くもあり、身につまされもしといった、読み応えのあるものに仕上がっています。 文学の世界において、シリアスなものがもてはやされがちですが、これからは喜劇をこそ、称揚せしめねばなりません。
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記憶破断者

今日は「記憶破断者」というSFミステリを一気に読みました。 記憶が1時間くらいしかもたないという奇病、前向性健忘症を患う男と、他人の記憶を書き換えることができる超能力者との対決の物語。 他人の記憶を書き換えられることを悪用し、悪事のかぎりを尽くすダーク・ヒーロー。 1時間前のことも覚えていられない男はノートを持ち歩き、こと細かくメモし続けることで、相手に対峙しようとします。 ラスト近く、超能力者にノートを読まれることを想定し、あえて嘘を書いたり、重要なことを書かないでおいたりといった工夫をこらしていることが判明します。 しかも当の本人はそれすら忘れてしまうので、ノートに書かれたことが本当だと信じ、だからこそ相手を欺くことが出来るという仕掛け。 巧妙に仕組まれた物語で、堪能しました。記憶破断者 (幻冬舎単行本)小林泰三幻冬舎
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謎解き

本格推理、SFミステリ、コメディ調のミステリなど、様々なタイプのミステリを集めた短編集を読みました。 小林泰三の「大きな森の小さな密室」です。大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)小林 泰三東京創元社 その多様さゆえに少々戸惑いを覚えましたが、独特の世界に引き込まれました。
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白玉の

私が最も敬愛する歌人、若山牧水はたいへんな大酒飲みでした。 朝2合、昼2合、夜6合の酒を欠かさなかったと伝えられます。 歌人は酒の飲みすぎが祟って43歳の若さではかなくなってしまいました。 病床にあっても酒を欲し、医者ももはや止めなかったそうです。 酒を詠んだ歌は数知れず。 その中でも、 白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしずかに 飲むべかりけり というのは絶唱とも言うべき秀歌でしょうねぇ。 この時季、帰宅して酒を口に含むと、必ず思い出します。若山牧水歌集 (岩波文庫)伊藤 一彦岩波書店 それにしても、40代後半に突入し、日々の楽しみは晩酌ばかりとなるとは、私も衰えたものです。 酒の酔いがもたらす心地よさを求めて研鑽を怠り、精神の怠惰を放置するようになろうとは、若い頃には想像もしなかったことです。 加齢がもたらす衰えは、ひとつ肉体ばかりではなく、精神にも及ぶのですねぇ。 しかし私はもはや、それに抵抗する術を持ちません。 肉体よりも先に朽ちていく精神の、その朽ちいく速さに、ただ、茫然とするばかりです。にほんブログ村 芸術・人文 ブログランキングへ
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神無月

今日から10月。 10月といえば神無月。 この月には日本国中の神々が出雲に出張するので神無月と呼ぶ、という俗説がまかり通っています。 本当のところ、なぜそう呼ぶかは諸説あって、定かではありません。 ちなみに出雲では神在月と呼ぶそうです。 しぐれつつ 留守守る神の 銀杏かな 高浜虚子の句です。虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 時雨という言葉が秋の寂しさを感じさせつつ、神社の大銀杏でしょうか、その大木のたたずまいが荘厳なイメージを喚起させる、スケールの大きな句に仕上がっていますね。 秋思という言葉があります。 秋に感じる寂しい物思いを指しており、春愁と対で用いられます。 春愁がどちらかというとメランコリックな愁いといった感覚的な語感なのに対し、秋思はもう少し詩的な感じを覚えます。 山塊に ゆく雲しろむ 秋思かな 飯田蛇笏の句です。新編飯田蛇笏全句集飯田 蛇笏,飯田蛇笏生誕百年記念実行委員会角川書店 これはとてもきれいにまとまった句ですね。 それが良くもあり、つまらなくもあり。 いずれにしろ秋思を詠んで見事です。 この季節に...
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幸せスイッチ

奇妙で邪悪な感じの短編集を読みました。 小林泰三の「幸せスイッチ」です。幸せスイッチ (光文社文庫)小林 泰三光文社 両親が亡くなり、莫大な遺産で暮らす傷心の女子高生。 悪い男にひっかかり、有り金全部もっていかれ、男にも捨てられ、絶望の淵に沈む彼女を救ったのは、脳から快楽物質を出させるスイッチ。 しかしそのスイッチを付けると、怖ろしい罠が・・・。 表題作の他、異常で奇妙な味わいの短編集で、テンポも良く、私の好みの作品群でした。 この作者の作品をしばらく続けて読んでみようかと思っています。にほんブログ村本・書籍 ブログランキングへ
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真夜中のマーチ

昨夜は奥井英朗の小説、「真夜中のマーチ」を一気に読みました。真夜中のマーチ (集英社文庫)奥田 英朗集英社真夜中のマーチ 窪塚俊介,玉山鉄二,香椎由宇,津川雅彦角川エンタテインメント 大手商社に勤めるダメ社員のミタゾウ、イベント企画をやりながら一攫千金を夢見るチンピラのヨコケン、クールな謎の美女、クロチェ。 何の関係も無かった25歳の3人がふとしたきっかけで出会い、ヤクザや中国マフィアを相手に10億円を横取りしようと八面六臂の大活躍をするエンターテイメントに仕立て、息をもつかせぬテンポの良さで、ぐいぐいと読ませます。 三人の微妙な関係や、一癖も二癖ある多くの登場人物が物語に彩りを添えます。 それにしてもこの作者、器用な人です。 「最悪」などの重厚なミステリーを書いたかと思えば、「空中ブランコ」・「イン・ザ・プール」などのユーモア小説を物し、「真夜中のマーチ」のような、青春小説の要素を盛り込んだ活劇をも書いて見せます。最悪 (講談社文庫)奥田 英朗講談社空中ブランコ (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋イン・ザ・プール (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋イン・ザ・プール 三木聡,奥田英朗ポニーキャ...
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蕎麦

今年は猛暑と言われましたが、8月の終わりから涼しくなり、その後長雨が続き、すっかり秋の気配です。 今日もひどい雨。 シルバー・ウィークは晴れる予報ですが、この調子では分りません。 涼しくなると、酒の味が一段と上がり、つまみの味も良いようで、酒が進んで困ります。 飯も麺類も旨く感じられます。 秋雨や 蕎麦をゆでたる 湯の匂 夏目漱石の句です。漱石俳句集 (岩波文庫)坪内 稔典岩波書店 昼餉でしょうか、あるいは晩、酒の上りでしょうか、秋雨の中、蕎麦をゆでる香りが食欲をそそられるようで、つい、蕎麦が食いたくなります。 現代ではラーメンの旨い店を特集するメディアが多いようですが、江戸時代にはもっぱら蕎麦番付が流行ったようです。 江戸っ子は江戸前鮨と並んで、蕎麦を愛したのですねぇ。 今宵、晩酌の上りには蕎麦を茹でましょうか。 あるいは、蕎麦屋で一杯やった後、ざるでも食いましょうか。 にほんブログ村 人気ブログランキングへ
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沈黙のひと

昨夜、小池真理子の長編「沈黙のひと」を読了しました。沈黙のひと (文春文庫)小池 真理子文藝春秋 小池真理子というと、わりと色っぽい小説が多いイメージですが、今作は老いさらばえて死んでいった父親を恋う娘の物語でした。 50代、独身、バツ1、編集者の娘。 この娘が幼い頃、父親はよそに女を作り、妻子を捨てたのでした。 そうでありながら、定期的に棄てたはずの妻と娘に会いに来る不思議な男。 元妻も、当たり前のように受け入れるのです。 父親は新しい妻との間に二人の娘をつくり、そのうえ浮気もする、女にだらしない男です。 物語は父親が亡くなって後、異母妹らと遺品整理をするところから始まります。 そこで、娘は古くなって動かない父親愛用のワープロを持ち帰ります。 パーキンソン病を患い、言葉を発することが出来なくなった父は、ワープロを駆使して手紙を書いたり日記のようなメモを残したりします。 娘はワープロに残されたデータを復原し、在りし日の父の思いを知ろうとするのです。 やがて父親の病状は進み、キイ・ボードを叩く力すら失い、文字盤の文字を示すことすら手が震えて不可能になり、沈黙のなか、最後の日々を過ごすので...
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刑死の明日に、迫る夜温(ぬく)し

私が一貫して死刑制度廃止を願っていることは、このブログに何度も書きました。 なんとなれば、この世に生きとし生ける者は、死から逃れる術を持たず、すべての生き物が死刑囚とも言え、いずれ来る死を早めることが刑罰になるとは思えないからです。 まして宅間守のように早期の死刑執行を望んでいる者を殺してしまうのは、本人の希望を叶えてやることになります。 それよりは、終身獄中に置いて、反省と贖罪を促すことが、刑罰として相応しいと思えてなりません。 死刑囚の中には、永山則夫のように、獄中で小説を書いて豊かな文学的才能を発揮した者もいます。無知の涙 (河出文庫)永山則夫河出書房新社 彼が日本ペンクラブに入会したいと言い出した時、ペンクラブは喧々諤々の騒ぎになり、結局入会を認めませんでしたね。 文学者の集まりと雖も社会を構成する団体である以上、犯罪者を入れることは出来ない、という意見と、文学は人間の恥部や悪をも描くものであり、犯罪者だからと言って入会を認めなければ、文学の死を意味するという意見が激しく対立したことを覚えています。 それはさておき。 死刑囚の歌人に、島秋人と言う人がいます。 強盗殺人の罪により...
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怠け者

昨日久しぶりに晴れたかと思えば、今日は早くも雨降り。 秋の長雨とは言いますが、いい加減にしてほしいものです。 今日は朝湯につかって朝飯を食った後は、テレビを観たり小説を読んだりしてのんびりと過ごしています。 昼は近所の蕎麦屋でとろろそばを食しました。 その後しばし昼寝して、少しだけ、明日のプレゼンの資料を読み返したりしました。 怠け者の私が日曜日にわずかとは言え仕事の資料に目を通すとは。 明日は西からお日様が昇るかもしれません。 なまけもの なまけてあれば こおひいの ゆるきゆげさへも たへがたきかな 北原白秋の短歌です。 全編平仮名、珈琲さえも平仮名。 読みにくいったら無いですが、いかにも怠け者な感じは漂います。北原白秋歌集 (岩波文庫)高野 公彦岩波書店 私の夢は専業主夫になって、家事さえも手を抜いて怠け者の暮らしをおくることですが、私と同居人と共働きだからこそ、どうにか経済的にやっていけているのも事実で、同居人1人の稼ぎでは、あっという間に貧窮することは目に見えています。 まぁ、夢なんて、叶えるものではなく、ただひたすら憧れているから楽しいのかもしれませんねぇ。
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