文学

スポンサーリンク
文学

いやぁな感じ

今日もすばらしい陽気でしたね。 今朝は7時に起きてシャワーを浴び、ハムエッグとお新香で朝飯を食いました。 少し食休みをして、洗濯をし、掃除機をかけ、さらに便所掃除もして、布団を干しました。 なんとなく仕事ちっくですが、9時半には一とおり済ませました。 同居人は朝が苦手なので、日曜日の家事は大方私がやることになります。 その後、読書を楽しみました。  なんとなく嫌な感じのする男を主人公にした中篇3編を収めた吉田修一の「熱帯魚」です。 子連れの美女と、子供の頃親が再婚し、連れ子どおしだったために義理の弟となった青年と、奇妙な同棲生活を送る大工の青年。 ゲイの大学教授と仲良しで、それがスパイスになっています。 義理の弟は引きこもりがちで、熱帯魚を飽きずに眺めています。 で、この大工、なんというか心が狭いというか、自分ひとりの鬱屈にとらわれて、乱暴を働いたりします。 これが「熱帯魚」。 彼女にDVを働き、怒った彼女が主人公の親友と浮気してしまいながら、許さない、ということの意味がどうしても分からないひねくれ者を描いた「グリーン・ピース」。 会社の休暇を利用して房総の民宿でバイトし、その間に民宿...
文学

痛み

憂鬱ななか、一週間きちんと出勤できました。 まずは目出度い。 一週間ほど前に寝違え、首から肩にかけてひどく痛むのも憂鬱に拍車をかけているようです。 なんといっても痛いのはしんどいものです。 階段を下りるだけで、その衝撃で肩から背中にかけてひどい痛みが走ります。 ちょっと痛むだけでしんどいのですから、大けがや大病はさぞかししんどいでしょうね。 雪ぞ降る われのいのちの 瞑ぢし眼の かすかにひらき、痛み、雪降る 若山牧水の和歌です。 この歌人には珍しく、読点を打っているのが、痛みの激しさを物語っているかのようです。 それはもちろん、肉体の痛みとは限りません。 むしろ、精神的な痛みであったと解するほうが納得がいくでしょう。 しかし肉体の痛みが精神に惹起せしめるものは、苦しみであるに違いなく、私は痛みがもたらす苦しみと、痛みゆえに思わざるを得ない命の儚さとを感じ、しばし、瞑目せざるを得ません。 この歌は歌人が青年時代に出版した「死か芸術か」という大上段に振りかぶったタイトルの歌集に収められています。 若さゆえの気負いを感じさせます。 今は初夏。 雪に痛みを仮託することはできません。 そこで夏の...
文学

田舎町の人情喜劇

奥田英朗の連作短編集「向田理髪店」を読み終わりました。 かつては炭鉱で栄えながら、今はすっかり寂れてしまった北海道の田舎町が舞台です。 当然、夕張市がモデルと思われます。 理髪店の主人を主人公に、いずれも幼馴染のガソリンスタンド経営者や役場の課長などが登場し、コミカルに様々な騒動が繰り広げられます。 札幌でサラリーマンをやっている息子が家業を継ぐといって帰ってきたり、40男が中国の田舎から嫁をもらいながらお披露目をするのを頑なに拒んだり、、赤坂でホステスをやっていた女が帰省して新しくスナックを開き、町中の中年男が色めきたったり、映画のロケ地になったり、町出身の青年が東京で詐欺事件を起こして逃げてきたり。 寂れた田舎町とは言ってもそこは人が住む町。 必ず何事かが起こります。 寂れた元炭鉱町が舞台とはいえ、どこか明るく、楽しげです。  私は東京と千葉にしか住んだことがありません。 旅行で田舎に行くことはあっても住んだことが無いので、実状はよくわかりませんが、その私ですら、いかにも存在しそうな感じがします。 そこが作者の腕なのでしょうね。 寅さんの田舎版と言ったところでしょうか。 楽しい人情...
文学

初恋温泉

様々な温泉を舞台にした多様な恋愛模様を描いた吉田修一の短編集「初恋温泉」を読みました。初恋温泉 (集英社文庫)吉田 修一集英社 表題作は初恋の女性と結婚し、多忙な日々をおくる男が、妻と温泉旅行に行く直前に離婚話を切り出され、それでも温泉旅行に出かけるほろ苦い物語。 他にも、既婚者同士の不倫旅行を描いた切なさ満点の「ためらいの湯」や、高校生カップルが勇気を振り絞って温泉に一泊旅行に行く「純情温泉」など、温泉と恋をうまくからめて描き出した珠玉の短編集に仕上がっています。 「初恋温泉」で、妻が、分かれたい理由を、「幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとは限らないのよ」と告げるシーンは意味深長であり、印象的です。 なるほど、そうかもしれません。 しかし、辛いとき、人は楽しかった思い出を振り返って今を乗り切ろうとします。 それは奏功することもあり、そうでない場合もあります。 しかし、幸福な思い出がたくさんある人は、それだけでも人生を乗り切る財産を持っていると言えるのではないでしょうか。 浜田省吾は「もうひとつの土曜日」という曲で、 ただ週末のわずかな、彼との時を、つなぎあわせて、君は生きてる、...
文学

ひなた

今日はひどい風が吹き荒れています。 買い物に行った以外は、家で大人しく小説を読んですごしました。 吉田修一の「ひなた」を一気に読みました。 この作者、平凡な日常のなかのゆがみを描くことが得意なようです。 「ひなた」は、4人の春夏秋冬を、それぞれの独り語りを積み重ねる形で紡ぎだしていく、という手法で描かれています。 これといった盛り上がりのない、平凡な日常のなかに、小さな嘘や不安が丁寧に描かれています。 大学生の尚純とその彼女のレイ、直純の兄夫婦の4人です。 平凡なようでありながら、じつは4人とも、不倫であったり、出生の秘密であったり、同性からの求愛であったりといった、小さな日陰を抱えています。 日陰を抱えているからこそ、日向を求め、日向を守ろうとするのです。 そしてまた、台詞がじつに上手です。 まるで脚本を読んでいるかのような錯覚におそわれ、さらには私の中で配役を考えてしまうほど、演劇的でもあります。 身近な人の不倫を評して、 誰かを裏切りたくて、誰かを好きになるヤツなんていないんだし、誰かを好きになっちまうから、仕方なく誰かを裏切らなきゃならなくなるんだよな。残酷な話だけどさ。 など...
文学

怒り

吉田修一の「怒り」を読了しました。 八王子で一家惨殺事件が起き、現場には血で書いた怒の文字が。 犯人は逃走を続けます。 房総の漁村で暮らす少々オツムの弱い愛子の前に現れた青年田代との恋、沖縄の離島に暮らす女子高生と淡い恋を楽しむ少年の実家の民宿に現れた田中、ゲイのサラリーマンの前に現れ、同棲を始めた直人の、3つの物語が同時並行で進みます。 突如現れた3人には、年恰好が似ていること以外、とくに接点はありません。 そして3人ともが、誰にも言えない過去を抱えているのです。 田代も田中も直人も、それぞれに新しい人間関係のなかで信頼を勝ち得、愛されるようになります。 しかし人間というのは疑りぶかいもので、八王子での事件の容疑者の似顔絵が公表されるや、もしかしたら、という疑心暗鬼にとらわれ、それぞれに葛藤します。 終盤に至り、真犯人も、3人の過去も明かされますが、怒の意味するところは謎のままです。 人間という存在の不確かさ、人間関係のもろさが、切ないばかりに暴露されていきます。 作者が芥川賞作家ということもあってか、これはミステリーというよりは人間の本質に迫ろうとする文学作品の趣を呈しています。 ...
文学

年々歳々

今日は晴れて気温が上がり、20度に届こうかという勢いです。 今日も私は勤労意欲がわかず、無為に時を過ごしてしまいました。 勤労意欲がわくかどうかは、急ぎの仕事があるかどうか、あるいは懸案事項を抱えているかどうかにかかっています。 最近の私にはその両方が無いため、だらだらとしてしまいます。 そして窓の外の強い日差しを見ては、春の訪れを実感してため息をついています。 春宵や 屋根から上の 花の闇 久保田万太郎の句です。 花の闇という句が、なんとも春らしい感じを醸し出しています。こでまり抄―久保田万太郎句集 (ふらんす堂文庫)成瀬 桜桃子ふらんす堂 来週には桜が開花し、月末には満開を迎えるとか。 そして新年度を迎えるのですねぇ。 毎年4月は人の入れ替わりがあるため、混乱は避けられません。 年々歳々花相似たり、年々歳々人同じからず、と詠んだのは唐代の詩人、劉希夷でしたか。 まこと、花は毎年似通っているし、毎年同じように人々がいるようでいて、じつは年々入れ替わっていくものです。 そんなことを考えると、なんとも言えない憂鬱に囚われます。 私にとって不安や憂鬱は、もっとも親しい感情であり続けています...
文学

助走か、飲んだくれのオヤジか

年度末が近付いて、誰が異動するのしないのと、職場はそんな噂が飛び交っています。 どうせほどなく分かるし、どんな嫌な部署に異動になっても、また、どんな嫌なやつが自分の部署に着任しても、ただ淡々と仕事をこなすしかないのに。 時間の無駄です。  こんなことを繰り返してとうとう24年も過ぎてしまいました。 就職してしばらくは、プロの小説家を目指してせっせと小説を書いていましたっけ。 しかし専業作家で生きていけるのはそれこそ何万分の一という確率でしょう。 これはどうにもならんと、いつの頃からか、終業後は飲んだくれるだけのやさぐれオヤジに堕してしまいました。 それは精神の堕落には違いないのでしょうが、堕ちるということ、変に心地よくもあります。 世間的にみれば、安定した公的機関に勤めて、子供は出来ませんでしたが結婚もして、マンションも買ってと、順風満帆に見えるでしょうね。 でも精神的には、未だにモラトリアム気分を引きずって、自分が何者でもないように感じています。 それはおそらく一生続くでしょう。 筒井康隆の小説に、「大いなる助走」というのがありました。 直木賞(作中では直本賞でしたか)受賞を逃した若...
文学

無理

奥田英朗の長編「無理」を読み終わりました。 この作者お得意の、いくつかのストーリーが同時並行的に描かれ、ラストに到ってそれらが結びつく、というお話です。無理〈上〉 (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋無理〈下〉 (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋 町村合併によってできた地方都市、ゆめの市。 田舎町の退屈さにうんざりしながらも、そこでしか生きられない5人が描かれます。 東京の大学に進学し、田舎町からの脱出を夢見る女子高生。 田舎町のしがらみのなかで生きる市議会議員。 元暴走族で、今は詐欺まがいの訪問販売を生業とする青年。 新興宗教にはまる、スーパー保安員の中年女。 県庁から市役所に出向になり、勤務時間中に外回りと称して人妻専門の風俗にはまる公務員。 これらの人々が、様々な無理目な事情を抱え、奮闘しつつ堕ちていく物語になっています。  読ませる力は十分にあるのですが、この作者にしては人物の作りこみや物語の魅力に、やや物足りなさを感じます。 それは東北の架空の田舎町を舞台にしているからだけではないでしょう。 もっとどうしようもなく堕ちていく群像劇に仕立てることができれば、一皮むけた作品になっただろうに...
文学

花に酔う 事を許さぬ

なんだかずいぶん春めいてえきましたねぇ。 あと3週間もすれば、桜の季節です。  そして、今日は亡父の4回目の忌日。 あれから4年も経つんですねぇ。 私も年を取るわけです。 花に酔ふ 事を許さぬ 物思ひ 夏目漱石の句です。漱石俳句集 (岩波文庫)坪内 稔典岩波書店 夏目漱石は小説家として大成しましたが、俳句もよくしました。 その特徴は、どこか厭世的で愁いに満ちていること。 上の句も、春の物思いを詠んで、メランコリックな心地よさすら感じさせます。 以前、今年の春は珍しく春愁の気にあてられていない、と、このブログに書きました。 しかしいよいよ春めいてくると、やっぱり愁いが濃くなります。 年度末も近づいてきました。 木端役人をやっているかぎり、桜を見て憂鬱になるのは仕方ないのかもしれません。 午前中、実家の寺に墓参りに行きました。 座敷には7段飾りのお雛様が、庭には梅が、見事でした。
文学

性愛の文学

源氏物語の例をひくまでもなく、わが国において、というより世界において、恋愛あるいは性愛を描くのは文学の王道でした。 そして面白いことに、わが国の古典文学においては恋愛ということと性欲ということを分けて考えることはありませんでした。 また、男女間において、あるいは少年を愛する衆道において、愛する、という言葉を使うことはなく、通常は惚れるという言葉を使うことが多かったように思います。 それはすなわち、恋はあっても恋愛は無かったものと思われます。 明治に入ると、わが国における性的おおらかさは、庶民の風俗習慣はともかく、少なくとも文学の世界では性愛を描くことはタブー視されるようになりました。 森鴎外のヰタ・セクスアリスにおいても、性欲的生活を赤裸々に綴ると文頭で宣言しておきながら、まるでおのれの性欲を否定するようなエピソードばかり描かれ、まるで性欲を汚いものであるかのように感じさせます。ヰタ・セクスアリス (新潮文庫)森 鴎外新潮社 時代の制限なのでしょうか。 戦後にいたると、ほとんど性描写に終始している村上龍の限りなく透明に近いブルーなどがもてはやされ、これは大日本帝國の否定と同時に、性的な...
文学

凶暴で美しい?

久しぶりにきつい小説を読みました。 最近芥川賞を受賞した本谷有希子の「生きてるだけで、愛。」です。 自意識過剰の若い女が登場する、恋愛劇の亜種みたいな話ですが、とにかく主人公の女が、嫌になるほどわがままで、情緒不安定です。 一昔前の、自意識過剰の私小説を彷彿とさせます。 カバーの帯には、凶暴で、美しいとかれていましたが、私には凶暴で醜いとしか思えませんでした。 葛飾北斎の富士と荒波の絵は、五千分の一秒のシャッタースピードで撮影した写真をトレースしたかのごとき一致を見ており、北斎と富士の関係を示唆するなど、印象的な文章はところどころに見受けられ、それは面白いのですが、あまりにエキセントリックな人物を主人公に据える場合、作者は一歩も二歩もひいて描写しなければ、読者はドン引きすると思います。 読んだかぎりの印象では、作者は主人公にのめりこんでいるように見受けられました。 この作品は芥川賞候補になったそうですが、私には近代文学の悪しき伝統である自意識過剰の神経症患者を描いた、古色蒼然とした作品としか感じられませんでした。 ただし、一気に読んでしまったので、読ませる力はあるのだろうと思います。 ...
文学

今日の首都圏は晴れて気温がぐんぐん上がり、すっかり春めいてきました。 これからは寒い日と暖かい日がせめぎ合いながら本格的な春に向かっていくんですねぇ。 三寒四温とはよく言ったものです。 私は例年、春になると春愁の気にあてられ、なんとなく憂鬱になるのが恒例でした。 ところが今年はまるで平気。 健康になった証でしょうか。 春愁どころか、どこか浮かれたような気分でいます。 どちらが人間の自然なのかは分かりませんが、どちらにせよ、気分が良いのは結構なことです。 春立ちぬ 夢多き身は この日より 髪に薔薇の油をぞ塗る 与謝野晶子の歌です。与謝野晶子歌集 (岩波文庫)与謝野 晶子岩波書店 いかにも春に浮き浮きしている感じがでていて微笑ましくもあります。 私は香水などつけませんが、それでも薄着でお出かけするのは心浮き立つものです。 まして今が金曜日の終業後となればなおさらです。 もっとも明日は曇り後雨の予報。 今日と明日を交換させたいものです。にほんブログ村人気ブログランキングへ
文学

邪魔

奥田英朗の長編、「邪魔」を読み終わりました。 文庫本で上下巻、合せて800頁に及ぶ大作です。 会社で宿直中、火事にあい、火傷を負った夫。 被害者と思われた夫が、放火犯の疑いをかけられます。 平凡な日常を守ろうとする妻。 しかし、夫への疑いが深まるにつれ、妻は壊れていきます。 平凡な日常などじつに脆いものだと、戦慄を覚えずにはいられませんでした。 この小説には、サイドストーリーがあり、夫を追い詰める刑事の物語がそれです。 数年前に妻を交通事故で失い、それ以来義母を頻繁に訪れては自分を慰めています。 しかし、その義母は生きているのか、それが曖昧になっていき、サスペンスにホラーのスパイスを加味しています。 この刑事もまた、壊れていくのです。 さらにはこの刑事をオヤジ狩りのターゲットにし、逆に怪我を負わされた少年たちの物語も綴られます。 少年たちも、破滅に向かって突き進んでいくのです。 夫が邪魔な主婦、精神的に追い詰められ、生きることそのものが邪魔な刑事、将来を壊していく自分たちの行動が邪魔な少年たち。 様々な邪魔が重層的につづられます。 いやむしろ、「邪魔」というタイトルより、例えば「壊れる...
文学

春一番

今日の首都圏は気温がぐんぐん上がり、春一番が吹き荒れました。 午前中は雨も降って、台風のようでしたね。 午後からは晴れて、初夏を思わせる陽気でした。 まだ2月なのに。 梅も各地で咲いています。 春もやや けしきととのふ 月と梅   俳聖・松尾芭蕉の句です。 梅が咲けば、いよいよ春の訪れを感じますし、そこに月が登場すれば最強ということでしょうか。 金曜日に休暇を取ったため、今日まで4連休でした。 連休の最後というのはいつもそうですが、憂色濃いものです。 春を寿ぐ余裕もなく、私はまた愚かにも酒につかの間の慰めを求めてしまうのでしょうねぇ。
スポンサーリンク