文学

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思い出は満たされないまま

先週の土曜日から始まった6日間の短い夏休みは今日まで。 明日から出勤です。 もっとも、明日は金曜日ですから、明日一日行けばまた土日なんですけどね。 金曜日も休暇を入れるという手もあったのですが、そうすると来週の週明け、おそろしく行きたくなくなるだろうなと思い、リハビリのつもりで明日出勤することにしました。 今日は静かに読書などを楽しんでいます。 「思い出は満たされないまま」、というノスタルジックな連作短編集を読みました。思い出は満たされないまま (集英社文庫)乾 緑郎集英社 多摩の古い団地を舞台に、様々は奇妙で不思議な物語が紡ぎだされます。 立入り禁止の神社の裏にある小山で神隠しにあう少年。  団地に核シェルターを設置するという話が持ち上がり、試しに数日間核シェルターで暮らす家族のありようとともに描かれる、認知症の母親を介護しながら、自治会の副会長を務める男と、かつて団地に住んでいたホームレスの男との不思議な交流。 ため池で釣りをする謎の老人と少年達。  かつて悪役のプロレスラーだった孤独な老人を、ライバルだった米国人レスラーが訪ねてくる話。 小説を書く高校生男女が、ある空き部屋で世界...
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兵器と軍隊の廃絶

昨日は広島に原爆が投下されてから73年目の記念日でした。 さすがに73年も経てば被爆者が減るのは当然です。 生まれたばかりで被爆した赤ちゃんが73歳の老人になるほどの年月ですからねぇ。 被爆者手帳を持っている人は、亡くなるとその名が平和公園に刻まれるのだとか。 しかし原爆投下から73年後に亡くなった人が原爆被害者だとは、私には思えません。 私の母は4歳だか5歳だかの時に長崎で被爆し、被爆者手帳を持っていますが、ピンピンしています。 被爆者手帳を持っていると、都営バスや都営地下鉄が無料になるそうで、しかも実家の最寄り駅は都営新宿線。 むしろ利益を得ているような気がしてなりません。 昨日のNHKの番組では、被爆二世までもが差別された時代があった、と報じていましたが、被爆二世である私は、差別された経験は皆無です。 むしろ広島と長崎でのみ、そういう差別があったのではないかと推測します。 「黒い雨」でも、広島で、被爆者である年頃の娘が差別される話が描かれます。黒い雨(新潮文庫)井伏 鱒二新潮社黒い雨 デジタルニューマスター版 今村昌平,井伏鱒二,石堂淑朗東北新社 井伏鱒二の名作で、映画化もされて...
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文藝の翼

8月に入りました。 本来であれば、いよいよ夏本番といった時季ですが、今年は梅雨明けが異常に早かったため、早くも、なんとなく夏の終りを感じさせて、寂しい気配に心が揺さぶられます。 私は8月22日生まれ。 もうじき49歳になります。 夏生まれの、夏嫌い。 夏は荒々しいまでの、生の力を感じさせて、私はそれに圧倒されます。 35歳くらいまで、いつかは小説家になって、文藝の世界で活躍したいと思い、同人誌などに作品を発表し続けました。 同人誌仲間の間では、最もプロに近いと認められ、私は必ずプロになれると信じていました。 しかし思いがけず、精神障害を発症。 その後は治療と、まともにサラリーマンを続けることが目標になりました。 私の背中には、もはや文藝の翼が生えることはありますまい。 Boys, be ambitious.(少年よ、大志を抱け)と言ったのは、札幌農学校(現在の北海道大学)のクラーク博士でした。 大志や野望を抱いていても、それを叶えられないのが圧倒的多数の凡人たちで、しかしその凡人たちが社会を支え、動かしているfのもまた事実。 私はもはや凡人の王として、余生を過ごす他なさそうです。 15...
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政治あるいは歴史における物語

先ごろ、わが国はワールドカップでベルギーに惜敗し、8強進出はなりませんでした。 それは誠に残念なことですが、今回のワールドカップによるわが国をめぐる物語が、二転三転したことは興味深く感じられます。 予選リーグでは3連敗を予想する解説者もいるなか、一勝一分け。 これは物語の始まり。 しかし、ポーランド戦で、わが国はあえて1点差での負けを選び、10分にも渡って無駄なパスを続け、わが国には、フェアプレーの精神が欠けているだとか、それでも侍か、だとか批判をされて、わが国は予選突破のためにはなんでもやるダーティな国、という物語が生まれたと感じました。 ところが決勝トーナメントにおいて、ベルギーに善戦したことにより、諦めないチーム、組織力の強いチームという物語が、泣きながらゴミ拾いをするサポーターとともに、美しくよみがえったように感じます。 私は何度もこのブログで、物語の中にしか真実は存在し得ない、と指摘してきました。 ことはサッカーのような、実生活にさしたる影響を及ぼさない事柄に限りません。 大日本帝國はかつて、東亜解放の大義名分を掲げて、太平洋戦争を戦いました。 今でも、あれは聖戦であったとい...
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機巧のイブ 新世界覚醒篇

せっかくの土曜日ですが、あいにくの雨。 梅雨時ですから仕方ありますまい。 午前中は、静かに読書をして過ごしました。 以前読んだ、SF時代伝奇ロマン、「機巧のイブ」の続編、「機巧のイブ 新世界覚醒篇」を読みました。機巧のイヴ: 新世界覚醒篇 (新潮文庫)乾 緑郎新潮社 「機巧のイブ」の感想は以下からお読みください。          ↓機巧のイヴ (新潮文庫)乾 緑郎新潮社 美しい女の姿をした機巧=ロボットの伊武。 江戸時代後期を舞台とした前作から、ざっくり百年後。 今度は米国を模したと思しき新世界大陸を舞台として、伊武を巡る物語が描かれます。 前作が、どちらかというとかちっとまとまった、文学的香気の漂う作品だったのに対し、「新世界覚醒篇」は、大活劇というか、エンターテイメントに徹した感じで、伊武の役割というか、比重が落ちているように感じられ、そこは残念な点。 ただし、面白さという点においては、前作を圧倒しています。 伊武を欲しがる大会社や、そこに雇われて伊武を盗もうとする私立探偵、伊武に恋する少年、私立探偵の暗い過去、伊武の秘密を知りたがる電気会社の技術屋であり社長でもある女などが、物...
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