文学

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ヘヴンメイカー

昨夜、恒川光太郎の「ヘヴンメイカー」を読み終わりました。ヘブンメイカー スタープレイヤー (角川文庫)恒川 光太郎KADOKAWA / 角川書店 先日読んだ「スタープレイヤー」に連なる作品です。 物語としては独立したものですが、スタープレイヤーが活躍し、最後に前作の主人公が登場して結末を迎えます。スタープレイヤー (角川文庫)恒川 光太郎KADOKAWA 設定は前作と同じく、くじをひいた者が異世界に飛ばされ、10の願いがかなえられるスターボードなる道具を使って冒険を繰り広げる、というものです。 で、「ヘヴンメイカー」。 作者がこの設定で描きたいことはこれだったんだろうなと思わせるくらい、物語は深化しています。 佐伯逸輝という若者が異世界に飛ばされ、スターボードを使って様々な町を造ったり、現地の宗教の聖人、サージイツキになったりと、豊かな物語が紡がれます。 そこに感じられるのは、失ったものへのノスタルジアと、世界の繋がりということ。 佐伯はスターボードを使って、少年時代、淡い恋心を抱いていた、亡くなった女性を生き返らせ、自ら作った故郷、藤沢市そっくりの無人の町で、二人だけの世界を楽しんだ...
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スタープレイヤー

昨夜は恒川光太郎の長編、「スタープレイヤー」を一気に読みました。スタープレイヤー (角川文庫)恒川 光太郎KADOKAWA これまでの作品とは、印象がずいぶん違います。 これまではこの作者が描き出す世界は、詩的で幻想的な小品、というイメージでしたが、今作は痛快娯楽ファンタジーといった感じです。 エンターテイメントで勝負するぞ、という作者の意気込みが伝わってきます。 ふとしたことから、異世界に飛ばされた34歳、無職の女性、夕月。 異世界では、10の願いを叶えることができます。 願いをかなえる能力を持った者を、スタープレイヤーと呼びます。 夕月が飛ばされたところは、誰もいない草原のようなところ。 彼女は願いを使って皇居よりも広い庭を持った家を建て、のんびり暮らします。 ある時、マキオと名乗るスタープレイヤーがやってきます。 彼は夕月の家から馬で二日かかる場所に、ちょっとした町を作って住んでいます。 夕月はマキオから、異世界にはごくわずかのスタープレイヤーと、スタープレイヤーが願いを使って地球から呼び寄せた多くの人々(外来民)、さらにはもっと多くの原住民が住んでいることを知らされます。 マキ...
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南の子供が夜いくところ

今日はひどく寒いです。 スーパーに買い物に行った他は、暖房の効いた自宅で静かに過ごしています。 小説を読みました。 恒川光太郎の連作短編集「南の子供が夜いくところ」です。南の子供が夜いくところ (角川ホラー文庫)恒川 光太郎角川書店(角川グループパブリッシング) 一家心中寸前まで行った親子が、20代にしか見えない、しかし120歳だと自称するユナという不思議な女に導かれ、タカシという少年と両親、それぞれが別の島で暮らし始めます。 タカシが暮らすことになったのは、トロンバス島という南の島。 トイトイ様という木の精や、ヤニューという魔物、フルーツ頭と呼ばれる頭部が様々な果物で出来た人々が住むフルーツ・タウンなど、不思議で魅力的な夢物語が繰り広げられ、惹きこまれました。 最近この作者の作品ばかり読んでいますが、もっと読みたい、という感じです。
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さみしい、よろしい

その昔、テレビCMで、「亭主元気で留守がいい」というコピーが流行ったことがあります。 また、私の同僚や先輩でも、妻が留守の休日は最高だ、と公言して憚らない人がいます。 そういうの、気持ちは分かりますが、あくまでも、一時的に一人の時間を楽しめるということであって、ずうっと一人でいるわけではない、ということが条件になっています。 ずうっと一人だと、退屈するような気がします。 孤独を感じさせる文学者はたくさんいますが、まず、頭に浮かぶのは、自由律の俳人、種田山頭火と尾崎放哉でしょうねぇ。 山頭火に以下のような句があります。 やっぱり一人はさみしい枯草 やっぱり一人がよろしい雑草 山頭火にとって、一人はよろしくてさみしいものだったようです。山頭火句集 (ちくま文庫)村上 護筑摩書房 山頭火という人、一度は妻子を持ちながら、中年に至って妻子を捨て、無一文の乞食となって、行乞の旅を続けながら句作を続けた人です。 同じ自由律の俳人で、ほぼ同時代に生きた尾崎放哉は、一度は保険会社の重役にまでなりながら、世を捨て、田舎の寺の庵などで静かに暮らしました。 動の山頭火、静の放哉、などと言われます。 共通して...
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金色の獣、彼方に向かう

昨夜は恒川光太郎の短編集、「金色の獣、彼方に向かう」を読みました。金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)恒川 光太郎双葉社 「異神千夜」・「風天孔参り」・「森の神、夢に還る」・「金色の獣、彼方に向かう」の4作品が掲載されています。 それぞれ独立した短編ですが、唯一、イタチに似た妖しい獣が登場するところに共通点があります。 「異界千夜」は元寇の前後を描いた時代作品。 南宋、対馬、博多あたりを舞台にした壮大な作品で、内容的には長編時代ファンタジーのような読後感です。 この作者の作品は、切なく美しい幻想文学がほとんどなのですが、この作品は、元の蛮行を恨む女の怨念や、彼らと行動をともにしながら、ついには裏切らざるを得ない男の苦悩などが怖ろしく、ゾッとさせられました。  「風天孔参り」は、ある山の登山口近くでレストランを営む50代の男が遭遇する不思議な物語。 ある時女子大生が客としてやってきて、従業員として居つき、彼女の口から風天孔参りの話を聞きます。 山中に突如小さな竜巻が起き、そこに飛び込んだ人間は天に消えてしまうとかで、限りなく自殺に近い、風天孔参りをする集団がある、と。 そして女子大生は風...
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