文学

スポンサーリンク
文学

金色の獣、彼方に向かう

昨夜は恒川光太郎の短編集、「金色の獣、彼方に向かう」を読みました。金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)恒川 光太郎双葉社 「異神千夜」・「風天孔参り」・「森の神、夢に還る」・「金色の獣、彼方に向かう」の4作品が掲載されています。 それぞれ独立した短編ですが、唯一、イタチに似た妖しい獣が登場するところに共通点があります。 「異界千夜」は元寇の前後を描いた時代作品。 南宋、対馬、博多あたりを舞台にした壮大な作品で、内容的には長編時代ファンタジーのような読後感です。 この作者の作品は、切なく美しい幻想文学がほとんどなのですが、この作品は、元の蛮行を恨む女の怨念や、彼らと行動をともにしながら、ついには裏切らざるを得ない男の苦悩などが怖ろしく、ゾッとさせられました。  「風天孔参り」は、ある山の登山口近くでレストランを営む50代の男が遭遇する不思議な物語。 ある時女子大生が客としてやってきて、従業員として居つき、彼女の口から風天孔参りの話を聞きます。 山中に突如小さな竜巻が起き、そこに飛び込んだ人間は天に消えてしまうとかで、限りなく自殺に近い、風天孔参りをする集団がある、と。 そして女子大生は風...
文学

竜が最後に帰る場所

今日は快晴ながら、北風が強く、ひどく寒い一日でした。 スーパーに買い物に行った以外は、家で大人しく読書などして過ごしました。 恒川光太郎の短編集を読みました。 「竜が最後に帰る場所」です。竜が最後に帰る場所 (講談社文庫)恒川 光太郎講談社 5つの短編が掲載されています。 どれもこの作者らしい、不思議で切ない物語でした。 わけても最後の「ゴロンド」という作品には深い感銘を受けました。 ゴロンド(考える者)という名前の竜の一生を、詩的に描いた作品で、長い年月の流れを感じさせます。 最近、この作者の小説ばかり読んでいます。 ド嵌まりに嵌まった感じです。 50歳近くなって、新たな出会いがあったことを、とても嬉しく思っています。にほんブログ村 本・書籍ランキング
文学

金色機械

昨夜、またもや恒川光太郎の小説を読みました。 今までは、短編か、せいぜい中編程度の分量の作品ばかりで、長い物は書かないのかなと思っていましたが、文庫本で470頁を超える長編、「金色機械」です。金色機械 (文春文庫)恒川 光太郎文藝春秋 江戸時代、極楽園とも鬼御殿とも呼ばれる山中の賊のお屋敷で育ち、門番の小僧から大遊郭を任されるまでになった熊悟朗。 彼は人の殺意を見抜く能力を持っています。 そして人に素手で触れるだけで安楽死させる能力を持つ女、遥香。 さらには謎の存在、金色様。 金色様は金属でできたロボットのような存在ですが、心を持ち、しかも無敵といってよいほど強力です。 章ごとに時代や主人公が異なり、少々戸惑いますが、やがてそれらは繋がり、一つの物語として完結します。 石川淳の「至福千年」を思わせるような、江戸伝奇ロマンといった趣で、読ませます。 抜群に面白い小説で、終わりが近づくと、読むのが惜しいような気分になります。至福千年 (岩波文庫 緑 94-2)石川 淳岩波書店 これは熊悟朗や遥香の成長の物語であるとともに、善も悪も併せ持つ人間というものの業を描き出した作品です。 金色様とい...
文学

わが国とインドの諸行無常

ここ数日、暖かい日が続いています。 おかげで体がずいぶん楽です。 職場の庭の梅も、ずいぶんと咲きました。 季節は着実に移ろっているのですねぇ。 平安末期から中世のわが国の文学では、盛んに諸行無常ということが言われます。 わが世の春を謳歌した平家が滅ぶまでを描いた「平家物語」しかり。 隠遁の文学、「方丈記」しかり。平家物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川書店角川書店 方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)武田 友宏角川学芸出版 権力も生命も、あらゆるものは移り変わり、いつかは儚くなってしまう、という無常感。 そしてそういった考えは、今も日本人の多くに、心中深く、根付いている感覚でもあります。 諸行無常は、もともと仏教用語ですが、わが国においては、仏教本来の意味よりも、ずいぶんと詩的というか、情緒的、感覚的に使われているように感じます。 原始仏教での使われ方を見ると、わが国の文学で使われる諸行無常という語感とは異なっていることが分かります。 諸行は、あらゆる物事、行い、と言う風に思われますが、原始仏教では、もともと存在しないものを作り上げてしまう作...
文学

月夜の島渡り

昨夜は恒川光太郎の短編集「月夜の島渡り」を読みました。月夜の島渡り (角川ホラー文庫)恒川 光太郎KADOKAWA いずれも沖縄の離島が舞台の作品です。 「月夜の島渡り」というタイトルの作品はありません。 あくまで短編集全体のタイトルです。 作者、出身は東京らしいですが、20代後半から沖縄に住んでいるそうです。 東京出身でも、北海道や沖縄に移住する作家や芸術家が多いのはなぜでしょうね。 都会を離れたかった? 異界の空気に触れたかった? 恒川光太郎はおそらくは異界への入り口があちこちに感じられる沖縄が気に入ったのだろうと推測します。 この短編集の物語は、どれも短く、異界へと足を踏み入れるというよりも、沖縄の離島そのものが異界の香りがして、小説というより詩編のような趣を味わうことができます。 その代り、物語としての迫力には欠けるように感じられます。 そこは詩編ですから。 私としては、生まれ変わりを扱って長い時間の流れを感じさせる「私はフーイー」がお気に入りです。 いずれも短いし、不思議過ぎず、この作者特有の抒情というか切なさを感じることが出来るので、入門編に良いかもしれません。 デビュー作...
スポンサーリンク