文学

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はらわたのなき涼しさよ

今日は朝から馬鹿に涼しかったですねぇ。 不安定な天気が続き、梅雨が戻ったかのごとくです。 勤め人たる私には、涼しいほうが楽でよろしいですが。 夏休みを満喫したい少年少女には不満かもしれませんねぇ。 涼しさや 闇のかたなる 瀧の音  正岡子規 夏と言っても涼しい日があり、また涼しい場所があります。 闇のかたに瀧の音とは、涼しいというよりも寒そうな感じがします。 涼しさに 海へなげこむ 扇かな   正岡子規 扇を海へ投げ込むほどの涼しさとはいかなるものでしょうねぇ。 夏の盛りを過ぎた物寂しさが感じられますねぇ。 大仏に はらわたのなき 涼しさよ   正岡子規 これはまた、なんとも不気味な味わいの句ですねぇ。 バイオレンス映画で、悪漢が、ある男の肩を撃ち、「腹が暑苦しいな」とか言いながら腹を撃ち抜くシーンがありました。 怖ろしいことです。 この句の大仏は鎌倉の大仏を指していると伝えられますが、なるほど、鎌倉の大仏は野外に鎮座し、夏の日差しでは暑そうに、雪景色の中では寒そうに見えます。 しかし暑そうに見えても、はらわたが無いとは涼しかろうというわけで、無機物が根源的に持つ冷たさを感じさせます。...
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深酒

昨夜はいつもより早く飲み始めました。 それはいいのですが、その場合、いつもより早く寝ないと、結果的に適量を超える酒を飲む羽目になってしまいます。 昨夜、そろそろ飲むのをやめようかと思っていた19時半頃同居人が帰宅し、私が飲んでいるのを見て飲みたくなったらしく、私も付き合って飲み続け、結局17時30分頃から23時頃まで飲んでしまい、家飲みとしては何年振りかで深酒し、今朝は軽い二日酔いでした。 それでも明日から月曜日まで高知出張のため、休むことが出来ず、しんどい一日となりました。 我ながら懲りない愚か者です。 でもそのせいか、今日は気持ち悪くて明日以降のことを不安がる余裕とてなく、精神的には落ち着いていたように思います。 このまま飲み続けたら命を縮めるでしょうねぇ。 酒豪、若山牧水は、朝2合、昼2合、晩6合の酒を欠かさず、たまに友人と飲むとそれ以上に飲んだとかで、いつか酒を止めなければ、と言い続け、結局やめることができず、43歳で亡くなってしまいました。 今の私と同じ年ですね。 飲むなと叱り 叱りながら母がつぐ うす暗き部屋の 夜の酒のいろ 飲むなと叱りながら、飲みたがる倅のために酒をつぐ...
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読了

村上春樹の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読了しました。 このところ、あまりにも長大な大ドラマを紡いできた作者が、久しぶりに、それほど長くない、物語というより詩のような作品を残したという意味で、作者は静かに、衰えの道を歩んでいるのかもしれません。 おそらく、多くの評論家は、これを失敗作と貶すでしょう。 物語としては破綻が目立つし、ラストも中途半端なものです。 しかし私は、失敗作が好きです。 なんとなれば、失敗作にこそ、物語作者の本質が炙り出されると思うからです。 多崎つくるは、高校時代、完璧な男女5人のグループの一員で、それは36歳になった今も、彼を郷愁と苦痛にいざないます。 その5人は、多崎つくる以外、全員、色が入った名前を持っていました。 例えば赤松だったり、青海だったり、そういうことです。 四人はすべて簡便に、アカとかアオとかいうあだ名で呼ばれます。 しかし多崎つくるだけは、つくる、と呼ばれるのです。 5人は名古屋で高校時代を過ごし、それはこの上もなく幸福な短い時期でした。 大学進学にあたって、多崎つくるだけが東京に出、ほかの4人は名古屋に留まります。 そして大...
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春樹節

今日はマンションから出ず、エアコンの効いたリビングでごろごろしていました。 こう暑いと外出する気が起きません。 ただ、体重が24キロも落ちたせいか、暑さを感じにくくなってしまったようで、まだ長袖で過ごしています。 職場で長袖で出勤しているのは、もう私1人なんじゃないかと思います。 かねてアマゾンで購入してあった村上春樹の新作を半分くらい読みました。 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」です。色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年村上 春樹文藝春秋 まだ読了していないので、コメントは差し控えたいと思いますが、久々の春樹節、良いですねぇ。 そう言えば誰かが、村上龍なら、「おれはおまえが好きだ」と書くところ、村上春樹は「もしかしたら僕は君のことが好きなのかもしれない」と書くのがかったるい、と言っていましたが、言い得て妙ですねぇ。 新作にもそういうまどろっこしい表現が多々見られます。 そういう表現が鼻につくことはありますが、総じて優れたストーリー・テラーであることは間違いありません。 高校生の頃、初めて「風の歌を聴け」を読んで以来、彼の書くものは全て読んでいます。風の歌を聴け (講談...
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意識の変容

明日は青山の某ホテルで会議。 直行直帰のため、余裕があります。 昨日は振替休日だったため、今週は職場に普通に出勤するのは三日だけです。 昨夜、振替休日ということで、早い時間から飲み始め、早い時間に終えるつもりが、結局終わりの時間はいつも通りで、飲んだ量が増えただけでした。 そのため、今日はなんとなくだるい一日で、私は誠に愚かな酒飲みであることを痛感させられた次第です。 それでもどうにか一日をやり過ごし、今日は飲むまいと思いながら、やっぱり一杯やってしまったことは、痛恨の極みです。 もっとも、さすがに今日はいつもより少ない酒量で止めましたが。 きっと私は、酒の飲み過ぎで命を縮めるのでしょうね。 分かっちゃいるけど止められないというのが、正直な気持ちです。 わが国において、合法ドラッグは酒だけです。 習慣性や依存性の高さ、体に与える悪影響などを総合的に勘案すると、酒以上に安全で習慣性が少ない違法ドラッグはあまた存在します。 例えばマリファナ、それにエクスタシー。 1960年代に流行したLSDはバッドトリップと呼ばれる辛い幻覚を見る機会が多いことで、一部からは忌避されつつ、良いトリップも多か...
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節電要請なし

ここ数日、暑い日が続いています。 今はエアコンがあるから事務室内は快適ですが、その昔のサラリーマンはどうやって夏の執務をしのいでいたのでしょうね。 不思議です。 まぁ、それが当たり前だと思えば、ただ耐えるしかなかったのでしょうけれど。 節電で 早く帰ると なげく妻 去年も一昨年も節電要請で、なかなかエアコンをつけることができず、難儀しました。 環境省は基本冷房をしないという噂を聞いたことがありますが、本当でしょうか? エコ製品 節電するのに 高くつき  エコ製品が高いのはやれませんねぇ。サラリーマン川柳というのは、現代の水呑み百姓とでもいうべき最下層の安サラリーマンに悲哀に満ちており、我が意を得たりと思うことが少なくありません。 今年は節電要請が無くて本当に良かったと思います。サラリーマン川柳 いちおし傑作選やく みつる,島田 駱舟,第一生命NHK出版サラリーマン川柳 にんまり傑作選やく みつる,島田 駱舟,第一生命NHK出版にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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梅雨明け

なんだか知らないうちに首都圏は梅雨明けを迎えたようですね。 昨日、今日と猛暑でした。 もっとも、今年は節電の要請もなく、エアコンを効かせた部屋で執務しているのでほとんど暑さに苦しめられることはありませんが。 かりにくと 恨みし人の 絶えにしを 草葉につけて しのぶ頃かな うとましく思われた人間関係も、なくなるとなるとさすがにさみしく思われる、そんな微妙な心を歌っています。 しかしそれがなぜ夏であるのかはよく分かりません。  花散りし 庭の木の間も しげりあひて あまてる月の 影ぞ稀なる これはうまいですねぇ。 夏への季節の推移を木立の繁茂する点でとらえ、さらにそこからもれてくる月の光を焦点としたものでしょうか。 いずれも新古今和歌集にみられる曽弥好忠の和歌です。 わがくにびとは古来、どの民族よりも季節感を大切にし、春には花を、夏にはホトトギスを、秋には月を、冬には雪を風流なものとして愛でてきました。 それは今もなお連綿とわが国民に受け継がれ、花見や月見、雪見の酒を楽しむことを良しとしていますね。 私は過酷な夏は苦手ではありますが、日本古来の美意識に従って、ホトトギスでも詠んでみましょう...
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半夏生(はんげしょう)

今日から7月。 まだ本格的な暑さは先のようで、私は長袖で出勤しています。 職場で長袖着用の男は、ごく少数派になってしまいました。 でもまだ半袖では心細いような気がします。 明日は半夏生(はんげしょう)。 半夏という薬草が生えるころ。カタシログサという草の葉が名前の通り半分白くなって化粧しているようになるころとも言われています。 この日までに農作業は一段落し、しばし、農家のみなさんはお休みを楽しめるのだとか。 また、この日は天から毒気を含んだ雨が降るとかで、井戸などに蓋をしたそうです。 さらに、熊野などではハンゲと呼ばれる魑魅魍魎が跋扈する日ともされ、必ずしもおめでたい日ではないようですね。 汲まぬ井を 娘のぞくな 半夏生 江戸期の俳人、池西言水の俳句です。 なんとなく禍々しいというか、不気味な趣の句ですね。 この時期、湿気が高く、食い物は腐りやすいし、洗濯物は乾かないし、なんとなく不快だし、それらの要素が、半夏生を好ましからざる時季と捉えたものと思われます。 しかしそんな不快な季節をも、不気味とはいえ趣があると感じてきたわがくにびとの心性に、深く心を打たれます。池西言水の研究 (研究叢...
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月下独酌

今宵もウィスキーをやってしまいました。 医者からは節酒しろと言われているんですがねぇ。 今生を生きるのに、素面で毎日を過ごすことなど、私には正気の沙汰とは思えません。 一応、勤務時間中は素面で我慢していますが、私の精神は常に酔いを求めているかのごとくです。 私は真面目なサラリーマンですが、できればジャンキーのように、始終酒や麻薬に酔っていたいたいという欲求を捨てることができません。    花間 一壷の酒    独酌 相親しむ無し    杯を挙げて 明月を邀むかえ    影に対して 三人を成す    月既に 飲を解せず     影徒に 我が身に随う    暫く月と影を伴うて    行楽 須すべからく春に及ぶべし    我歌えば 月 徘徊し    我舞えば 影 零乱    醒時 同じく交歓し    酔後 各 分散す    永く無情の遊を結び    相期して 雲漢はるかなり 李白の「月下独酌」です。 薬のない時代においては、ただ酒だけが、意識の変容をもたらしてくれる、強烈なドラッグだったのでしょうねぇ。 私もまた、わが国における唯一の合法ドラッグである、酒をやめることができません。 精神障害...
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しずかちゃんの入浴

ここ10年ばかり、児童ポルノに対する規制は厳しくなるばかり。 ロリコンの皆さまには、さぞかし肩身の狭い思いをしておられるでしょう。 SMにしろ同性愛にしろ、大人同士が合意の基に行うプレイであれば、大抵のことは許されます。 しかし年端のゆかぬ幼女を食い物にするのは許されないことですから、規制強化は当然でしょう。 私が疑問に思っていることは、18歳未満が児童ポルノの対象とされていること。 16歳になれば民法上女性は結婚できるはずだったと記憶しています。 16歳の少女が合意の基に20歳の男と関係を持ったら、20歳の男は逮捕されてしまうというのはなんとなく解せません。 線引きが難しいところですねぇ。 最近、漫画家などが、表現の自由の観点から、児童ポルノの過度な規制に異を唱えているようです。 そこで話題になるのが、「ドラえもん」のしずかちゃんが入浴しているシーンは規制の対象になるのか、ということ。 漫画やアニメなど、実際の幼女や少女が被害にあっているわけではない場合、大目に見るのが大岡裁きというものではないでしょうか。 現実には幼女や少女を快楽のために殺害してしまう残忍な事件が起きており、それに...
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物語作者

おっさんになると、誰もが夢や希望を失い、日々の生活に追われるようになります。 私もまた、若い頃抱いていた夢や希望や野望を忘れ、日々の雑事にかまけて時を過ごしています。 これが年をとるということなんでしょうね。 私は若い頃、物語作者でありたいと願っていました。 それは小説でも漫画でも映画でもなんでも構わなかったのですが、1人で、簡単に出来る物語制作は、小説しかあるまいと思い、徒然なるままに、下らぬ駄文を書き連ね、出版社に送ったところ、出版してみましょうということで、わずか2冊の短編集を世に問うことになりました。 中身がまずかったのか、世間が私に追いついていなかったのか、自信をもって送り出した短編集は、いずれも世間から支持されることはありませんでした。 それは別に構わないのです。 私が求めていたのは、私の美学に従った、嘘くさくて美しい、ハリボテの城を作ること。 私が無念に思うのは、私が切望したハリボテの城を作ることに成功したことが無いことです。 いかにも嘘くさい物語を紡いできたのは確かですが、それらはいずれも志の低い、小さな物語に過ぎませんでした。 今さら物語作者として世に出ようとは思いま...
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今から思えば

今から思えば、あなたがワーグナーの、シンフォニーを聴きはじめたのが、二人の別れていく、印になった。 さだまさしの「シンフォニー」に見られるフレーズです。 それこそ、今から思えば腹に落ちる歌詞であると言わざるを得ません。 男がシンフォニー、わけてもワーグナーのシンフォニーを愛好し始めたなら、もはや男女の関係は切れる他ないでしょう。 ワーグナーの音楽がどれほど男を魅了し、この世ならぬ世界に導くかは、あまりにも明白です。 ナチがワーグナーの音楽を常に宣伝に使ったことは歴史的事実で、第二次世界大戦の敵であった米軍でさえ、ベトナム戦争の際には、兵士の士気高揚にワーグナーの音楽を多用しました。 映画史上最高の戦争映画である「プラトーン」においては、歴戦の勇士である兵士が、基地で、一夜、酒とマリファナに溺れる場面があります。 明日をも知れぬ身であればこそ、酒やマリファナに溺れる気持ちも分かりますが、それを国家が出来ようはずもないので、せめてワーグナーの音楽で兵士の気分を盛り上げたというわけでしょうか。 はるか昔、23年も前のことで、もはや時効でしょうから、あえて告白しますと、私は一度だけ、酒とマリフ...
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謎のカスパール・ハウザー

70年代から80年代にかけて、渋澤龍彦とともにアンダーグランドの文化人として名を馳せた人に、種村季弘という独文学者がいます。 渋澤龍彦はSMのSのほうの創始者、サド侯爵の「悪徳の栄え」などを翻訳紹介したことで有名であり、また、正体不明の作家、沼正三の問題作「家畜人ヤプー」の作者ではないかという疑惑を持たれました。 この人は生涯在野のフランス文学者兼小説家として過ごし、大学などに宮仕えすることはありませんでした。悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)渋澤 龍彦河出書房新社悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)渋澤 龍彦河出書房新社家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)沼 正三幻冬舎家畜人ヤプー〈第2巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)沼 正三幻冬舎家畜人ヤプー〈第3巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)沼 正三幻冬舎家畜人ヤプー〈第4巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)沼 正三幻冬舎家畜人ヤプー〈第5巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)沼 正三幻冬舎家畜人ヤプー 1 (バーズコミックス)沼 正三,江川 達也幻冬舎家畜人ヤプー 2 (バーズコミックス)沼 正三,江川 達也幻冬舎家畜人ヤプー(3) (バーズコミックス)沼 ...
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暗い日曜日

北原白秋は短い間でしたが、私のふるさと、江戸川区に住んでいたことがあります。 23区とはいえ東のはずれで、当時はずいぶん鄙びた感じだったようです。 夏浅み 朝草刈りの童らが 素足にからむ 犬胡麻の花 北原白秋が江戸川区在住の頃詠んだと伝えられる和歌です。 歌の内容からも、当時の江戸川区が牧歌的な雰囲気を持った田舎であったことが知れます。 西欧の文学にかぶれていたこともある北原白秋ですが、こんな牧歌的な、ノスタルジックな和歌を詠んでいたのですねぇ。 ちょっとびっくり。 江戸川区では、都内で唯一の手作りの風鈴を作っていたり、金魚が盛んだったり、奇妙なものが有名ですね。 しかし私は江戸川区に住んで都心の学校に通っている頃、江戸川区はとてつもなく都心から遠いド田舎で、なんでこんなところに住まなければいけないのだと嘆いていました。 で、周辺区から都心に通うしんどさに嫌気がさして、千葉に就職して東京から遁走しいたというわけです。 千葉市中心部から電車で二駅目に住んでいるせいか、住まい周辺は今の所のほうが都会的で利便性も高く、しかも人は少ないという、私にとって理想的な環境です。 しかし私にとって最も...
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そのこと

昨夜、ウィスキーのロックをちびちびやりながら、かつて傾倒した三島由紀夫の「鏡子の家」をぱらぱらと眺めました。 昭和30年代の東京を舞台にした青春群像劇で、夫と別居して信濃町で娘と暮らす鏡子の家に入り浸る4人の若者の成功と挫折を描いた作品です。 すでに「金閣寺」などで名声をおさめていた三島由紀夫が、いわゆるメリー・ゴーラウンド方式と言われる、複数の主人公が互いにあまり関わることなく物語が進んでいくという手法を採った意欲作ですが、当時の文芸評論家からは酷評されたようです。 読み手が三島由紀夫に追いついていなかったものと思われます。 メリー・ゴーラウンド方式と呼ばれる手法は映画でも使われ、名作「愛と哀しみのボレロ」などが製作され、私はこの手法の物語をわりと好んでいます。 野心あふれる若いサラリーマン、プロを夢見るアマチュアボクサー、売れない画家、売れない俳優の4人の青年が同格の主人公であり、戦後の高度成長を冷ややかに見ながら4人の希望あふれる若者に自宅をサロンとして提供する鏡子が狂言回しのような役割を担っています。 彼らはそれぞれに成功し、鏡子の家から離れていき、結局挫折するのです。 最後に...
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