文学

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首折り男のための協奏曲

昨日は奇妙な短編集を読みました。 「首折り男のための協奏曲」です。首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)伊坂 幸太郎新潮社 一瞬にして狙った相手の首を捻じ曲げ、即死させる殺し屋。 探偵であり空き巣常習犯の男。 この2人を軸に、2人の周囲の人々の姿が描かれます。 それぞれの短編は、繋がっているようで、じつは繋がっていません。 これは殺し屋と探偵兼空き巣を描いた物語ではなく、その周りの普通の人々を描いたものです。 帯の宣伝文句を信じると、騙されます。 まぁ、一気に読んだのだから、そこそこ面白かったのでしょうが、なんとも中途半端な感じがします。
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カズオ・イシグロ先生、ノーベル文学賞受賞

今日は午前中、休暇を取りました。  首が痛むので、整形外科に行ってから出勤しようと思っています。 日系英国人作家、カズオ・イシグロ先生がノーベル文学賞を受賞された、との一報が飛び込んできました。 うれしいですねぇ。 私は先生の著作の熱心な読者ではありませんが、過去に5冊、読んで、それぞれに感銘を受けました。 私が読んだのは、   「わたしたちが孤児だったころ」  「忘れられた巨人」  「浮世の画家」  「日の名残り」  「わたしを離さないで」 です。わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,入江 真佐子早川書房忘れられた巨人Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)飛田 茂雄早川書房日の名残り (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)土屋政雄早川書房 サスペンス調の作品、SF、ファンタジー、失われゆく古い英国を回顧したものなど、内容は多彩です。 そのなかで私が最も深く感動したのは、「わたしを離さないで」でしょうねぇ。 5作品とも、このブロ...
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名月

今宵は中秋の名月。 首都圏では、きれいなお月様が拝めそうです。 ススキや団子を用意する暇はありませんが、自宅のベランダから、月見酒としゃれこみたいと思います。 名月や 池をめぐりて 夜もすがら 松尾芭蕉の句です。 月を見ながら池のほとりを散策していたら、夜が明けてしまった、という意でしょうか。 だとしたら、月の美しさをひたすら称揚する、耽美的かつ、昂揚感が感じられる句ですね。 芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明KADOKAWA / 角川学芸出版 一方、同じ松尾芭蕉に、 俤(おもかげ)や 姥ひとり泣く 月の夜 という句もあります。  一人月を眺めていたら、すぐ近くに、月を眺めながら泣いている老婆がいた、ということで、前の句とはだいぶ趣が異なります。 月の美しさのみならず、月の儚さ、さらには人の生というものが持つ根源的な儚さを感じさせ、胸に迫ります。 私が今宵、月を観てどんな感慨にふけるのかは分かりません。 ただ、来し方を振り返ることはせず、今日のことと明日のことのみ考えたいと思います。 今日と明日のことだけを考えて暮らす生活。 それこそが、精神障害の完全...
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ふたりの季節

昨夜は小池真理子御大の「ふたりの季節」を読みました。 文庫本で130頁ほどの中編。 1時間もあれば読み終わる、気楽な作品です。ふたりの季節 (幻冬舎文庫)小池 真理子幻冬舎 読後感は、なんだかさっぱりしているなぁ、というもの。 この作者には珍しいかもしれません。 ドラマティックな展開のない、小品だからかもしれません。 50代半ばの由香。 忙しい毎日を送っていますが、短い夏休みをとって、カフェでくつろいでいるところ、偶然、35年ほど前に別れたかつての恋人、拓と再会します。 物語は、カフェで2人が数時間語り合いながら、2人が青春時代を過ごした1970年代初頭を回顧するという短いものです。 高校から大学のはじめにかけての2人の恋。 結婚の約束までしながら、これといった理由もなく、2人は別れてしまいます。 その後30数年。 それぞれに結婚し、子供も成人しています。 会話のなかで、由香は離婚し、拓は妻と死別していることが語られます。 私は1969年生まれなので、1970年代はじめの風俗というか、時代感覚がよく分かりません。 物語では当時流行った音楽や映画、小説のことが多く語られますが、私にはもう...
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人魚

もうすっかり秋ですねぇ。 この前の土曜日には、稲毛の浜を散策しました。 秋の海。 なかなか風情があります。 秋の暮 大魚の骨を 海が引く 西東三鬼の句です。西東三鬼全句集三橋 敏雄沖積舎 秋の海で、大きな魚の骨が海を引いていく、ということかと思います。 稲毛の浜は内海ですので、たいした波とてありませんが、まるで私自身が海に引きずり込まれるような錯覚に陥る句です。 もしかしたら、私は何もかも投げ出して海に引きずり込まれ、大海を自由に泳ぐ、男ながらの人魚になりたいのかもしれません。
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