文学

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瑠璃の海

昨夜、小池真理子先生の「瑠璃の海」を読了しました。 文庫本で500頁ちょっとの長編でしたが、わりあいすんなり読めました。 相変わらず平易で読みやすい文章です。瑠璃の海 (集英社文庫)小池 真理子集英社 で、読後感。 これは好悪が分かれる小説だろうな、と思いました。 高速バスの事故で夫を失った30代後半の萌。 同じ事故で小学生の娘を失った40代前半の売れない小説家。 小説家は、とうの昔に離婚していて、娘を一人で育てていました。 萌と小説家は、遺族の会で知り合います。 そして、急速に魅かれあっていきます。 耐えがたい喪失感を抱えた二人は、その喪失感を共通項にして、結びつきを強くしていったのでしょうか。   売れないとはいえ一応小説だったため、事故後1年も経たないうちに付き合い始めた二人を週刊誌が面白おかしく取り上げたり。 すでに事故死した夫が、生前浮気していたのではないかと萌が疑ったり。 さらには、結婚前に少し付き合っていただけの男に、萌が体の関係を迫ったり。 小説家との情交に溺れて会社をさぼったり。 小説家はふらっといなくなって、酔っぱらって喧嘩したあげく、怪我を負ったり。  およそ道徳...
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楽園は兄妹を地獄に落とすか

昨夜、ずいぶん昔に読んだ夢野久作の「瓶詰の地獄」を読み直しました。瓶詰の地獄 (角川文庫)夢野 久作角川グループパブリッシング ごく短いながら、強烈な印象を、少年の頃の私に残したことを覚えています。 なぜか昨夜、急に読み返したくなって、パソコンを開き、青空文庫を検索したところ、アップされていたのを確認した時は、嬉しくなりました。 内容はいたってシンプル。 ある島の村に、ビール瓶が3本、流れ着いているのが発見されます。 中にはそれぞれ鉛筆で書かれた手紙らしきものが入れられています。 そのことを海洋研究所に報告し、提出する旨の村役場による候文が最初に置かれます。 その後、難破してその島に流れ着いたと思しき兄と妹の2人の手紙が、それぞれに入っています。  その島に流れ着いた時、兄は11歳、妹は7歳。 島にはパイナップルやバナナ、鳥の卵などが豊富にあり、食うに困りません。 難破した時に避難に使ったボートを建材にして、小屋を作り、2人は幸せに暮らします。 そこはまさしく、二人だけの楽園でした。 二人は聖書を大事にしていることから、クリスチャンであることが示されます。 数年経つうちに、2人はたくま...
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首折り男のための協奏曲

昨日は奇妙な短編集を読みました。 「首折り男のための協奏曲」です。首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)伊坂 幸太郎新潮社 一瞬にして狙った相手の首を捻じ曲げ、即死させる殺し屋。 探偵であり空き巣常習犯の男。 この2人を軸に、2人の周囲の人々の姿が描かれます。 それぞれの短編は、繋がっているようで、じつは繋がっていません。 これは殺し屋と探偵兼空き巣を描いた物語ではなく、その周りの普通の人々を描いたものです。 帯の宣伝文句を信じると、騙されます。 まぁ、一気に読んだのだから、そこそこ面白かったのでしょうが、なんとも中途半端な感じがします。
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カズオ・イシグロ先生、ノーベル文学賞受賞

今日は午前中、休暇を取りました。  首が痛むので、整形外科に行ってから出勤しようと思っています。 日系英国人作家、カズオ・イシグロ先生がノーベル文学賞を受賞された、との一報が飛び込んできました。 うれしいですねぇ。 私は先生の著作の熱心な読者ではありませんが、過去に5冊、読んで、それぞれに感銘を受けました。 私が読んだのは、   「わたしたちが孤児だったころ」  「忘れられた巨人」  「浮世の画家」  「日の名残り」  「わたしを離さないで」 です。わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,入江 真佐子早川書房忘れられた巨人Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)飛田 茂雄早川書房日の名残り (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)土屋政雄早川書房 サスペンス調の作品、SF、ファンタジー、失われゆく古い英国を回顧したものなど、内容は多彩です。 そのなかで私が最も深く感動したのは、「わたしを離さないで」でしょうねぇ。 5作品とも、このブロ...
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名月

今宵は中秋の名月。 首都圏では、きれいなお月様が拝めそうです。 ススキや団子を用意する暇はありませんが、自宅のベランダから、月見酒としゃれこみたいと思います。 名月や 池をめぐりて 夜もすがら 松尾芭蕉の句です。 月を見ながら池のほとりを散策していたら、夜が明けてしまった、という意でしょうか。 だとしたら、月の美しさをひたすら称揚する、耽美的かつ、昂揚感が感じられる句ですね。 芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明KADOKAWA / 角川学芸出版 一方、同じ松尾芭蕉に、 俤(おもかげ)や 姥ひとり泣く 月の夜 という句もあります。  一人月を眺めていたら、すぐ近くに、月を眺めながら泣いている老婆がいた、ということで、前の句とはだいぶ趣が異なります。 月の美しさのみならず、月の儚さ、さらには人の生というものが持つ根源的な儚さを感じさせ、胸に迫ります。 私が今宵、月を観てどんな感慨にふけるのかは分かりません。 ただ、来し方を振り返ることはせず、今日のことと明日のことのみ考えたいと思います。 今日と明日のことだけを考えて暮らす生活。 それこそが、精神障害の完全...
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