文学

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ノーベル文学賞作家の少女小説

昨夜、川端康成先生の少女小説、「親友」を読みました。 なにしろ子供向きに書かれた小説ですから、たいへん読みやすいものでした。 それでいて、川端康成先生らしい、文学的香気にあふれた佳作だったと思います。親友 (小学館文庫)川端 康成小学館 川端康成先生の、いわゆる純文学作品は、今も文庫本などで容易に手に入りますが、結構書かれていたという少女小説は、あまり見当たりません。 そういう意味では、貴重な復刻です。 私はかつて、戦前の少女たちに人気を博したという雑誌、「少女の友」復刻版で「乙女の港」という少女小説を読んで、感銘を受けたことがあります。完本 乙女の港 (少女の友コレクション)中原 淳一実業之日本社 これは、戦前の女学生たちの間で流行したという、S(sisterの略)という、少女同士の疑似恋愛を描いたものです。 昨夜読んだ「親友」は、もう少し幼い、中学1年生の少女たちの物語で、時代もややくだって、戦後、昭和25年頃を舞台にしています。 中学の同級生で、顔も背丈もそっくり、誕生日まで一緒だった2人の少女と、家族や先生との間の短い物語です。 夏休み、鵠沼の海岸近くの親戚の家で2人で滞在して...
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銀婚式

昨夜は篠田節子の「銀婚式」という小説を読みました。 文庫本で380ページほどですが、一気に読みました。 タイトルからいって、夫婦の25年間の物語を想像すると、肩透かしをくいます。銀婚式 (新潮文庫)篠田 節子新潮社 これは、地味な男の、普通の物語だといえるでしょう。 一流大学を出て、証券会社に勤め、ニューヨーク支社で働く高澤。 しかし、妻は米国生活に慣れず、気鬱に沈み、幼い息子を連れて帰国してしまいます。 やがて、離婚。 ほどなくして、証券会社が倒産。 その後中堅の古い保険会社に再就職しますが、古臭い社風にあわず、リストラされてしまいます。 つてを頼って仙台のおバカ私立大学で経済学を教える教員になります。 ここで、おそろしく勉強の出来ない学生たちの指導に悪戦苦闘したり、事務職の若い女との恋愛沙汰があったりします。 また、大学受験を控えた息子の相談に乗ったり、別れた妻が親の介護に疲れているのを助けたり。 大学に合格した息子がデキ婚したり。 何気ないようで、じつは結構たくさんの問題が発生する、普通の人生が、淡々と綴られていきます。 圧倒的多数の人々は、普通の人生を生きているわけで、そこに、...
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「月光」あるいは悪と赦し

昨日、ひどく後味の悪い小説を読みました。 「月光」という作品です。月光 (中公文庫)誉田 哲也中央公論新社 R18学園ミステリーという触れ込み。 R18というとおり、性描写、残酷描写がけっこうひどいです。 受け付けない人は、これだけでダメでしょうね。 しかし、私には、非常に印象の残る作品でした。 後味が悪いだけではない、力のある作品で、その力が、今日の私を落ち込ませて、仕事も手につきませんでした。 ある作品に接して、その後何日も落ち込むことがたまにあります。 それは小説でも、映画でも。 過去に一番ひどかったのは、高校三年生の時に見た、ベトナム戦争を描いた「プラトーン」。 それを見た翌日、学校で、「どうしたの?」と心配されるほど落ち込みました。 その時は翌日もう一回見るという荒療治に出たのを覚えています。プラトーン トム・ベレンジャー,ウィレム・デフォー,チャーリー・シーン,ケビン・ディロン,フォレスト・ウィテカー20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 「月光」は、美しい女子高生の死をめぐる物語です。 同級生男子にバイクではねられて事故死してしまった女子高生。 その妹が...
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アクセス

昨日、ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞したという小説を読みました。 「アクセス」です。アクセス (新潮文庫)誉田 哲也新潮社 うーん、微妙。 インターネットが登場してから、この手の作品はやたらと増えましたが、なかなか上質のものは生まれません。 少年少女たちの冒険譚として読めば、恋あり、女同士の友情あり、援助交際にいそしむ美少女ありで、そこそこ楽しめますが、あくまで子供向きのような気がします。
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プラージュ

今日は職場が電気設備点検のため、臨時のお休み。 3連休になりましたが、体調が悪く、ほぼ引きこもりです。 で、小説を読みました。 「プラージュ」という作品です。プラージュ (幻冬舎文庫)誉田 哲也幻冬舎 一階が昼は定食屋、夜が飲み屋になる飲食店で、その名前がプラージュ。 二階は7部屋あるシェアハウスになっています。 このシェアハウス、ちょっと変わっています。 住民は全員前科者。 そして、部屋にドアはなく、カーテンがあるだけです。 ここでの様々な出来事を描いた、一種の人情喜劇のような印象ですが、ラストは衝撃的です。 前科者がなかなか社会に受け入れられずに苦しむ姿が、乾いた印象で語られます。 犯罪を犯した過去はかえられないとしても、罪を償い、再スタートをきろうとしている人々への差別は許されるのか、と鋭く問いかけます。 ちなみにプラージュとはフランス語で海辺のこと。 海と陸地の狭間に、犯罪者との社会との断絶を象徴させているようです。 本来重くなるテーマを、読みやすくて面白いエンターテイメントに仕上げた技量はたいしたものだと思います。
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