文学

スポンサーリンク
文学

欲望

小池真理子先生の「欲望」を読み終わりました。欲望 (新潮文庫)小池 真理子新潮社 中学生時代の同級生、類子と阿佐緒、それに正巳という3人をめぐる長い物語です。 阿佐緒は中学生時代から、男なら誰もが欲望を抱くような肉感的な美少女でしたが、彼女の精神は極めて幼稚です。 類子は読書が好きな文学少女で、容姿は十人並み。 正巳は逞しくも美しい少年で、文学少年です。 類子を語り手に、この3人の愛と欲望の物語が綴られます。 ポイントは、正巳が逞しい美青年に成長したにも関わらず、高校時代の事故により、性的不能に陥ってしまうこと。 類子は司書教諭として働きながら、同僚の妻子ある男性教師と肉体だけの関係を断ち切れずにいます。 しかし類子が恋焦がれてやまないのは、不能の正巳。 正巳は肉感的な阿佐緒に惹かれながら、どこか神々し過ぎて、類子に現実的な恋を求めます。 阿佐緒は30歳も年上の、耽美主義的傾向を持った精神科医と結婚し、セレブ生活を送りますが、夫が自分の体を求めないことから、住み込みの家政婦と出来ているのではないかと疑い、勝手に妄想を膨らませ、根拠の無い嫉妬に苦しみます。 類子は肉欲を不倫で解消し、正巳...
文学

贖罪

昨日は湊かなえの「贖罪」を読みました。贖罪 (双葉文庫)湊 かなえ双葉社 田舎の小学校で、東京から転校してきた女児が強姦されたうえ、殺されてしまいます。 一緒に遊んでいた4人の女児は犯人を目撃しただけでなく、短い会話を交わしています。 しかし、4人はどうしても犯人の顔を思い出すことができません。 それに怒った被害者の母親は、4人にひどい言葉を投げつけます。 あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。 この言葉に激しい衝撃を受ける女児たち。 15年後、4人それぞれの独白、さらには被害者の母親の独白という形で物語は進みます。 そして、4人ともが、怖ろしい事件を引き起こすのです。 このスタイル、映画化された名作「告白」によく似ています。告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)湊 かなえ双葉社告白 【DVD特別価格版】 松たか子,岡田将生,木村佳乃東宝 そして、最後に明らかになるあまりにも過酷な犯人の真実。 衝撃的なラストです なんとも後味の悪い作品です。 もっとも、この作者の作品は大抵後味が悪く、それこそが真骨頂だと...
文学

入らずの森

昨夜、「入らずの森」というホラー小説を読みました。入らずの森 (祥伝社文庫)宇佐美 まこと祥伝社 帯の、夜、一人で読んではいけない、という宣伝文句に興味を持ち、購入したものです。 愛媛の山中の過疎の村。 足を怪我してオリンピックへの出場を断念して中学教師になり、あえて田舎の学校を希望して赴任した青年の鬱屈。 サラリーマン生活に嫌気がさし、有機農業へ憧れを抱いてIターンでやってきた初老の夫婦の葛藤。 両親の離婚をきっかけに、東京から祖母の家に身を寄せた不良少女。 そしてなぜか、埼玉県の病院で死の床に着く老婆と介護する娘。 愛媛の寒村をめぐる様々な人々の物語が重層的に語られ、最後にはその関係性が判明する、という構成。 横溝正史を思わせるような因習的な田舎に、わが国らしい、湿った感じが雰囲気を盛り上げます。 森に住む邪悪な生き物。 平家の落人伝説。 この数十年、時折起こる残忍な事件。 和製ホラーらしい道具立てが整っていて、きれいにまとまった小説です。 ただし、決定的な欠陥があります。 怖くないのです。 ホラー小説としては完璧と言えるほどの道具立てと、かちっとまとまった物語が、かえって不気味さ...
文学

秋の長雨

今日も冷たい雨。 今年は夏からずうっと雨が多いように感じます。  週末も雨の予報。 しかも今週末は台風の予報で、珍しく、2週連続して週末、台風となりそうです。 クサクサします。 秋萩を 散らす長雨(ながめ)の 降るころは ひとり起き居て 恋ふる夜ぞ多き 「万葉集」に見られる短歌です。 秋の長雨の晩、一人起きだして、人恋しく思う、といったほどの意でしょうか。万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川書店角川書店 さすが、万葉歌人が歌うと、私のように「クサクサします」とはならず、なぜか風情を感じさせるのですねぇ。にほんブログ村 人文ランキング
文学

花の鎖

台風が近づいているとかで、朝から本降りです。 どこへも出かける気にならず、無聊をかこって、小説を読むことでおのれを慰めて過ごしました。 当代随一のストーリー・テラー、湊かなえの「花の鎖」を読みました。 文庫本で350ページほどですが、面白くて、一気に読みきってしまいました。花の鎖 (文春文庫)湊 かなえ文藝春秋 梨花・美雪・紗月という、3人の女性の物語が並行して描かれます。 それぞれに興味深いものですが、3人のつながりがよくわかりません。 それぞれの名前から、雪月花、にちなんでいることが覗えるだけです。 そしてそれぞれ、雪・月・花という章に分かれて進んでいきます。 しかし物語の後半にいたって、時系列が分かってきます。 つまり、紗月が娘、梨花が母親、美雪が祖母、と言う具合。 それが同時並行で描かれるので、最初は同時代を生きる3人の若い女性の話なのかと勘違いさせられます。 そして、梨花に毎年送られる豪勢な花と、その送り主、K。 Kとは何者なのか、美雪に起こった因縁が娘の梨花、孫の紗月にまで及ぼすことになった元とは何なのか。 謎解きのような面白さと、号泣必至の結末。 あまり多くは語りますまい...
スポンサーリンク