文学

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セーラー服歌人

最近、セーラー服歌人として話題の鳥居の歌集「キリンの子」を読みました。 鳥居と言う人、2歳のときに両親が離婚。 小学5年生の時には目の前で母親が自殺。 養護施設での虐待、ホームレス生活などを経験したという凄絶な過去をお持ちです。 中学生の頃には友人が電車にはねられて自殺する現場にも居合わせたそうです。 自身、自殺未遂やリストカットを繰り返したとか。 義務教育をまともに受けられなかったことを表現するためにセーラー服を着ているそうです。 年齢は不詳。 あおぞらが、妙に、乾いて、紫陽花が、路に、あざやか なんで死んだの いかにも稚拙な歌ですが、不思議と胸に迫ってきます。 冷房を いちばん強くかけ 母の体はすでに 死体へ移る これもうまいとは言えませんが、その情景を思い浮かべると、迫力があります。 それを、冷静に詠ってみせるところに、歌人の真骨頂があるのでしょう。 自身の自殺未遂を詠んだ歌では、 靴底に 砂や海藻沈めたまま 入水後の冬 迎えたブーツ というのが印象的です。 虐待を詠んだ歌として、 理由なく 殴られている 理由なく トイレの床は 硬く冷たい などがあり、慄然とさせられます。 しゃ...
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わたしたちが孤児だったころ

昨夜、カズオ・イシグロの「わたしたちが孤児だったころ」を一気に読了しました。わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,入江 真佐子早川書房 この作者に特有の、どこか切ない感じや、時の流れとともに必然的に訪れる喪失感のようなものを強く感じました。 第一次大戦後。 クリストファー・バンクスは上海の租界で生まれ育ちます。 前半はわりとゆっくりした感じで、隣に住む日本人少年との友情などが描かれます。 ただし、それはクリストファーの追憶という形を通して。 したがって、記憶の錯誤などがあり、必ずしも真実ではありません。 クリストファーが10歳の頃、両親が相次いで謎の失踪を遂げ、彼は孤児になってしまいます。 やむを得ず、英国の伯母のもとに引き取られます。 長じて、彼は探偵になります。 それは、やがて失踪した両親を探すためでもあったのでしょうか。 彼はいくつもの難事件を解決して名声を得、ロンドンの社交界で知られた存在になります。 そしてついに、日中戦争まっただ中の上海に戻り、両親を取り戻すべく、無謀ともいえる捜査に乗り出すのです。 クリストファーの印象はどこかおぼ...
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あじさい

今日で5月も終わり。 そろそろ梅雨でしょうか。 梅雨の後には、過酷な夏がやってきます。  紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘 正岡子規の句です。   日々色を変える紫陽花を擬人化したものかと思います。 人というもの、昨日には誠実であり、またAという相手には真面目に接していても、明日には嘘をつき、Bという人を裏切ったりします。 人と人との付き合いというのは難しいものです。 そうはいっても、概して誠実で真面目、という人もいれば、100人中99人から不誠実で信用できないと思われる人もいます。  概ね日本人は親切で誠実だということになっていますが、それも心々。 受け取る人によって異なるでしょう。 日々乱高下する私の狂った精神が、紫陽花のようではなく、穏やかであり続けることを望みます。にほんブログ村人文ランキング
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新世界より

ドボルザークの交響曲のことではありません。ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界よりチェコ・フィルハーモニー管弦楽団,ノイマン(ヴァーツラフ),ドヴォルザーク日本コロムビア 貴志祐介のSF長編のことです。 文庫本で上中下の3巻、計1,500頁を超す大作をやっと読み終わりました。新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)貴志 祐介講談社 SFの宿命というか、無理目なストーリーではありましたが、興味深く読みました。  この作者はホラー作家というイメージが強いですが、SFも書くのですね。 千年後の日本。 大人になると呪力と呼ばれる超能力を発動することができるようになった社会を描いています。 一見すると平和で豊かな社会ですが、業魔だの悪鬼だのと呼ばれる突然変異が生まれ、町の平和を脅かします。 また、高度な知能を持つバケネズミのコロニーを人間が支配しています。 好奇心に駆られ、タブーを犯し、ゆえにひどい目に会う少年少女たちの友情や成長を描いて、冒険譚でありながら、どこかノスタルジックな味を醸し出しています。 まずは突飛な物語の世界に入り込めるかどうかが、この小説を面白く読めるかどうかのカギ...
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噴水の

今日はぐんぐん気温が上がって、千葉でも25度を超えたようです。 高崎では驚異の30度超えとか。 桜もすっかり散ってしまい、早くも初夏を思わせる陽気です。 噴水の しぶけり四面(よも)に 風の街 石田波郷の句です。石田波郷集 (朝日文庫―現代俳句の世界)石田 波郷朝日新聞社 初夏を詠んで瑞々しいですね。 普段、平日は仕事が嫌で憂鬱な気分でいることが多いですが、柄にもなく、夏の匂いを感じて気分が良いようです。 ずうっとこんな感じで過ごせれば良いのですが。にほんブログ村 人気ブログランキング
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