文学 時の力
わが国の精神文化には無常観が深く刻まれ、時とともに万物は流転していくという感覚を、この国に生まれ育った人々は自然に身につけていくようです。 過去を懐かしむのも過ぎ去った時の力によるものであり、未来に希望を抱くのも時が輝かしい時代をはこんでくれるという、時の力を信頼したものでしょう。 私はうつ病発症時、時の力によってしか、この苦しみから解放されることはないのだと知りつつ、しかし病を克服したからと言って輝かしい時を迎えるわけでもないことをも知っていました。 今、精神症状はほぼ治まって、ずいぶん楽になりましたが、平凡に過ぎいく時に感謝するほど老成してはいません。 私ははるか遠く感じられる定年の時を迎えるまで、健康で生き延びたいと願うばかりです。 亡父の蔵書から「花のもの言う 四季のうた」という本を引っ張り出しました。 文字通り四季の名歌を取り上げたものですが、巻末に、時間という章立てがなされていました。 自然を歌った悠久の時間を取り上げた歌もあれば、時間に対する個人的な感想のような歌もありました。 私は時間に対する個人的な思いを詠んだ歌に心惹かれました。 まずは三条院の、 こころにも あらで...