文学

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贖い

昨日から体がだるく、咳やくしゃみ、鼻づまりの症状があります。 ただ、熱は平熱なので、それほど辛くはありません。 なんとなく違和感がある感じ。 市販の風邪薬を飲んだせいか、寝ても寝ても眠いのです。 晴れた土曜日にはお出かけすることを常としていますが、今日ばかりは自宅でのんびり過ごしました。 リビングのソファでうとうとしたり、小説を読んだり。 小説は、五十嵐貴久の警察推理小説、「贖い」を一気に読みました。贖い五十嵐 貴久双葉社 最近にしては珍しい、上下2段組の単行本でした。 7月1日、2日、3日と、連続して子供を殺害する事件が発生します。 しかし、場所が杉並・埼玉・愛知と離れているうえ、被害者が小学生の男の子、中学生の女の子、1歳の男児と、関連性を指摘する者もなく、それぞれ警視庁、埼玉県警、愛知県警が独自に捜査します。 粘り強い捜査の末、59歳になる大手商社マンが浮かび上がります。 変質者や異常性欲者の若い男に捜査対象を絞っていた上層部はこの見立てになかなか首を縦に振りません。 それもそのはず、商社マンは誰に聞いても、真面目すぎるほど真面目で、部下や同僚、上司からの信頼も厚い、常識を備えた...
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埃の如く

今日は大寒。 そのとおり、雨に小雪が混じる、凍えるような寒さです。 もちろん、事務室は暖房が効いていますが、一歩廊下に出れば、寒くてたまりません。 大寒の 埃の如く 人死ぬる 高浜虚子の句です。虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 俳人の死生観がよく表れています。 人の死など、この世のおおきな流れのなかでは、埃のようなもの。 それを大寒という寒々しい言葉とからめ、一種神々しいような、厳粛な雰囲気を感じます。 この清浄な寒さのなか、死んで行ければどんなに良いか、という、昏い退行の欲求を覚えずにはいられません。 ここ数年、フルタイムで働いてはいるものの、気力体力の衰え激しく、このままでは職場のお荷物になってしまいかねない、という危惧も手伝って。 それでも私は、生きなければならないのでしょうか。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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怪談

朝、起きたら腰が痛く、ひどく体が重かったので、熱を測ったら37度2分ありました。 ほんの微熱ですが、私は極端に熱に弱く、これでは使い物にならんと思い、急遽休暇を取りました。 8時30分に職場に連絡し、風邪薬を飲んで、午後3時まで眠り続け、寝汗をびっしょりかいたら、変に気分が良くなっています。 熱を測ったら36度8分まで下がっていました。 風呂で寝汗でべとべとした体をきれいに洗い、小池真理子御大の短編集、「怪談」を読みました。怪談小池 真理子集英社 7つの短編が収録された、260ページほどの短い小説集です。 タイトルから思い浮かべるような、ホラー小説集とは趣を異にしています。 これと言ってストーリーらしいストーリーが無い、ちょっとだけ不思議な物語がつむがれます。 そしていずれの短編も、怖くありません。 どちらかというと、ほのぼのするような怪異譚です。 御大はかつて、「墓地を見おろす家」のような、本格的なホラー小説を物していますが、今回の短編集はその系譜に連なるものではありません。墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)小池 真理子角川書店 一歩間違えるとエッセイのような軽いタッチで、しかも耽...
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物語の勝利

今日はあの阪神淡路大震災から22年の節目。 かかる大災害は人智を超えたものであり、私たちはただ現実の巨大さに、瞑目する他ありません。 事実は小説より奇なり、と申します。 まこと、この世に起こることは、フィクションを超える驚嘆すべきことばかりです。  例えば9.11のテロ。 あんなことは、どんな物語作者でも思いつかない奇想天外な事件でしょう。 さらにはオウム事件。 古くは浅間山荘事件。 現代社会において、小説よりも奇妙な事件がいくつも起きています。 小説をはじめとする物語は、あくまでも虚構であって、現実を模したものであっても、現実を超えるような、一種の怪異譚であることが、その本質であろうと思います。 例え恋愛小説や、サラリーマンの哀歓を描いた小説であっても、そこには必ず、現実を超えるような奇妙な味がなければ、凡庸な作品になってしまうでしょう。 現実を超えること、言わば超現実こそが、小説の真骨頂であろうと、私は確信しています。 で、事実は小説より奇なり、という言説。 これは、小説は本質的に現実を超えることができない、ということを端的に表したものかと思います。 絶望的な言葉と言ってもよいでし...
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誘拐

昨夜は五十嵐貴久のミステリー「誘拐」を一気に読みました。誘拐 (双葉文庫)五十嵐 貴久双葉社 示唆に富んだ、上質の娯楽小説です。 会社の人事担当課長として、苦しみながらリストラを進める秋月。 ある時リストラを苦に、元社員が一家心中。 元社員の娘が秋月の娘の親友であったことから、秋月の娘も自殺してしまいます。 秋月自身も退職し、綿密な誘拐計画を立てます。 歴史的な条約を結ぶため韓国大統領が来日するため、警察はその警備に全力を挙げるため、極端に警察力が手薄になるのを見計らって、なんと総理大臣の孫娘を誘拐するのです。 格差社会への憤り、それを許す政府への怒りが、秋月を突き動かします。 息をもつかせぬ疾走感をもって、秋月の犯罪と、翻弄される警察の姿が描き出されます。 引き込まれました。 結末はあっと驚くもの。 基本的に邪悪な人間が出てこない、爽やかなミステリに仕上がっています。 それが物足りない部分もありますが、読後感は清涼です。 まずまず、楽しめました。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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