文学

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顔のない裸体たち

今日は晴れていましたが、北風が強かったため、終日自宅にこもり、小説を読んで過ごしました。 読んだのは、平野啓一郎の「顔のない裸体たち」です。顔のない裸体たち (新潮文庫)平野 啓一郎新潮社 小説には、一人称、三人称の文体が多く、二人称もごくまれにあります。 三人称の場合、作者が全体を俯瞰する、神の目線で描かれることが多いですが、この作品は、一種のフェイク・ドキュメンタリーの形を取っており、ジャーナリストが語る、ということになっていたため、神の目線は取られていません。 それが小説に真実味を与えているかは、ちょっと判断しかねるところです。 小学校から高校までイジメにあっていた市役所職員の片原と、中学教師で平凡な思春期を送った希美子が出会い系サイトで出会い、激しい性交を重ね、ついには野外露出、さらに動画をインターネットの動画サイトに投稿するなど、性的逸脱とも言うべき行為に走り、ある小学校でこっそり野外露出の動画を撮影中に教師らにみつかり、片原は持っていたジャックナイフで教師らを刺し、怪我を負わせるまでの経過が、淡々とつづられます。 これはおそらく、性を描いた文学ではなく、世間が認知する自分と...
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「追憶のかけら」あるいは悪意

昨夜、貫井徳郎の「追憶のかけら」を読了しました。追憶のかけら (文春文庫)貫井 徳郎文藝春秋 不思議な小説です。 最愛の妻を事故で亡くした国文学者の大学講師が、ふとしことから、短編をわずか5作残しただけの、忘れられた作家の手記を手に入れます。 この作家が死を前にして、自殺にいたる経緯をつづったものです。 この作中作品、たいへん読み応えがあります。 これだけで、十分一個の作品と言ってよいでしょう。 この手記では、友人の瀕死の復員兵から、かつての愛人に会い、自分の代わりに詫びを入れてほしいと作家が頼まれます。 作家は善意で元愛人を探すのですが、その過程で様々な悪意に出会い、ついには自殺に追い込まれます。 で、その手記を手に入れた大学講師。 彼はなかなか業績が上げられず、このままでは研究者としてやっていけないと感じていますが、手記を手に入れたことで、金鉱を見つけた気分になります。 未発表の手記をもとに論文を書けば、十分な評価が得られるはずだ、と。 しかし、大学講師にも、悪意が忍び寄ります。 大学講師の研究者生命を断とうとまでする悪意。 大学講師の運命は二転三転し、というお話。 貫井徳郎の作品...
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贖い

昨日から体がだるく、咳やくしゃみ、鼻づまりの症状があります。 ただ、熱は平熱なので、それほど辛くはありません。 なんとなく違和感がある感じ。 市販の風邪薬を飲んだせいか、寝ても寝ても眠いのです。 晴れた土曜日にはお出かけすることを常としていますが、今日ばかりは自宅でのんびり過ごしました。 リビングのソファでうとうとしたり、小説を読んだり。 小説は、五十嵐貴久の警察推理小説、「贖い」を一気に読みました。贖い五十嵐 貴久双葉社 最近にしては珍しい、上下2段組の単行本でした。 7月1日、2日、3日と、連続して子供を殺害する事件が発生します。 しかし、場所が杉並・埼玉・愛知と離れているうえ、被害者が小学生の男の子、中学生の女の子、1歳の男児と、関連性を指摘する者もなく、それぞれ警視庁、埼玉県警、愛知県警が独自に捜査します。 粘り強い捜査の末、59歳になる大手商社マンが浮かび上がります。 変質者や異常性欲者の若い男に捜査対象を絞っていた上層部はこの見立てになかなか首を縦に振りません。 それもそのはず、商社マンは誰に聞いても、真面目すぎるほど真面目で、部下や同僚、上司からの信頼も厚い、常識を備えた...
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埃の如く

今日は大寒。 そのとおり、雨に小雪が混じる、凍えるような寒さです。 もちろん、事務室は暖房が効いていますが、一歩廊下に出れば、寒くてたまりません。 大寒の 埃の如く 人死ぬる 高浜虚子の句です。虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 俳人の死生観がよく表れています。 人の死など、この世のおおきな流れのなかでは、埃のようなもの。 それを大寒という寒々しい言葉とからめ、一種神々しいような、厳粛な雰囲気を感じます。 この清浄な寒さのなか、死んで行ければどんなに良いか、という、昏い退行の欲求を覚えずにはいられません。 ここ数年、フルタイムで働いてはいるものの、気力体力の衰え激しく、このままでは職場のお荷物になってしまいかねない、という危惧も手伝って。 それでも私は、生きなければならないのでしょうか。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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怪談

朝、起きたら腰が痛く、ひどく体が重かったので、熱を測ったら37度2分ありました。 ほんの微熱ですが、私は極端に熱に弱く、これでは使い物にならんと思い、急遽休暇を取りました。 8時30分に職場に連絡し、風邪薬を飲んで、午後3時まで眠り続け、寝汗をびっしょりかいたら、変に気分が良くなっています。 熱を測ったら36度8分まで下がっていました。 風呂で寝汗でべとべとした体をきれいに洗い、小池真理子御大の短編集、「怪談」を読みました。怪談小池 真理子集英社 7つの短編が収録された、260ページほどの短い小説集です。 タイトルから思い浮かべるような、ホラー小説集とは趣を異にしています。 これと言ってストーリーらしいストーリーが無い、ちょっとだけ不思議な物語がつむがれます。 そしていずれの短編も、怖くありません。 どちらかというと、ほのぼのするような怪異譚です。 御大はかつて、「墓地を見おろす家」のような、本格的なホラー小説を物していますが、今回の短編集はその系譜に連なるものではありません。墓地を見おろす家 (角川ホラー文庫)小池 真理子角川書店 一歩間違えるとエッセイのような軽いタッチで、しかも耽...
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