文学

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おもへば一夜

門松や おもへば一夜 三十年 松尾芭蕉の句です。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 お正月を迎えて、来し方を振り返ってみれば、一夜の夢のごとくであった、というほどの意かと思います。 この時、松尾芭蕉は30代前半。 ようよう、俳諧師として身を立てることになった時期で、青年らしい気概と、過去を一夜の夢に例えるような老成した感じの、双方が感じられます。 私は今年48歳になりますので、おもへば一夜五十年といったところでしょうか。 何者でもない私ですが、半世紀ちかくを生きてしまいました。 ここまで生きてきちゃったという感慨と、人生うまくいかないものだという思いが交錯します。 しかし今は、人生80年の時代。 まだまだ人生は続くのでしょう。 どんな辛いことがあっても、死なないかぎり人生は続きます。 これからは衰えていくばかりでしょうが、平穏な後半生であることを願うばかりです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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リカ

昨夜はホラーサスペンス、「リカ」を一気に読破しました。リカ (幻冬舎文庫)五十嵐 貴久幻冬舎 リカというストーカーに追われる中年男の話なのですが、文章のテンポがよく、ぐいぐいと引き込まれました。 本間という男が出会い系サイトで出会ったリカ。 最初、本間はリカとのメールのやり取りで彼女に好印象を持ちますが、少しづつ、リカの異常さに気づいていきます。 長身で顔色が悪く、目に光が無く、体臭がひどく臭い女として描かれます。 前半から中盤にかけて、ひたすら怖いのですが、終盤、リカと直接対決するにあたり、リカの人物造型に無理があることに違和感を感じました。 ひたすら気持ち悪くて怖いただの女なのか、ジェイソンのような化け物なのか、そこらへんが曖昧です。 リカをひたすら怖ろしいただの人間として描けば、名作、「オーディション」のような作品に仕上がったであろうに、そこが残念です。オーディション 村上龍パイオニアLDCオーディション (幻冬舎文庫)村上 龍幻冬舎 「リカ」より後に書かれた、恐るべきストーカー、リカ誕生の秘密に迫った「リバース」のほうが完成度は高かったように思います。リバース (幻冬舎文庫)五...
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師走

師走ですねぇ。 しかももう師走も19日。 年末年始の休みも近づいて、なんだか追われるような気分です。 うしろから 追はるゝやうな 師走哉 正岡子規が師走のせわしなさを詠んだ句です。 師走の気分が正直に表現されていますね。子規句集 (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 私は21日(水)に休暇を取っていますので、もう今年の出勤日は5日しかありません。 今年も愚かな1年を送ってしまいました。 何をやっているんだか分からないうちに、ただ目の前の仕事を片付けるのみの1年。 こんな風にして、もうじき就職してから丸25年が経とうとしています。 一年一年を思い起こしてみれば、とてつもなく長い歳月ではありますが、ざっくり振り返ると、まさに光陰矢の如し。 ここまで経っちゃったかという感慨にふける間もなく、今年が終わろうとしています。 明晩は職場の忘年会。 少し、己を振り返ってみる必要性を感じます。 もとより、反省などする気はありませんが。にほんブログ村人気ブログランキングへ
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ドーン

平野啓一郎の長編、「ドーン」を読み終わりました。 重い小説でした。ドーン (講談社文庫)平野 啓一郎講談社 この人が「日蝕」でデビューし、同作で芥川賞を受賞したときは、大変な才能が出てきたものだと思うと同時に、猛烈な嫉妬を感じました。日蝕・一月物語 (新潮文庫)平野 啓一郎新潮社 まだ20代だった私は、いつかは小説で食っていきたいと思っていたので、当時、優れた小説を読むと必ず嫉妬を感じたものです。 それは精神障害を発症した35歳の頃まで続きましたね。 「ドーン」の舞台は近未来の2030年代半ば。 NASAは人類史上初めて、有人火星探査を成功させます。 しかし、火星探査の様子はほとんど描かれません。 日本人クルーの明日人を主人公に、恋愛、不義密通、大統領選をめぐる陰謀、社会的悪、宇宙飛行士の精神といった問題が重層的に描かれます。 ほとんど詰め込みすぎ、くらいに。 この小説でもっとも重要なテーマになっているのは、分人(ディヴィジュアル)という概念。 人間は、妻との関係、職場での関係、親子兄弟や友人との関係など、様々な関係のなかで、核となる人格=インディヴィジュアルの他に、様々な分人=ディヴ...
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日短(ひみじか)

ずいぶん日が短くなりました。 定時で帰っても、職場を出る頃は真っ暗です。 私の職場は郊外にあるので、都会のネオンが恨めしくもあります。 そういえば、なぜ夜長(よなが)は秋の季語で、日短(ひみじか)は冬の季語なのでしょうね。 両方冬の季語でも良さそうね気がします。 浅学非才の身であれば、その理由は分かりません。 日短や かせぐに追ひつく 貧乏神 小林一茶の句です。 この人らしい、生活感を感じさせますね。 一茶句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)小林 一茶角川学芸出版 今週末には冬のボーナスが支給される予定ですが、私にも貧乏神が取りついているようで、なかなかお金は貯まりません。 せっせと働いて、定年後は再雇用など希望せずに遊んで暮らしたいものです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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