文学

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物語の勝利

今日はあの阪神淡路大震災から22年の節目。 かかる大災害は人智を超えたものであり、私たちはただ現実の巨大さに、瞑目する他ありません。 事実は小説より奇なり、と申します。 まこと、この世に起こることは、フィクションを超える驚嘆すべきことばかりです。  例えば9.11のテロ。 あんなことは、どんな物語作者でも思いつかない奇想天外な事件でしょう。 さらにはオウム事件。 古くは浅間山荘事件。 現代社会において、小説よりも奇妙な事件がいくつも起きています。 小説をはじめとする物語は、あくまでも虚構であって、現実を模したものであっても、現実を超えるような、一種の怪異譚であることが、その本質であろうと思います。 例え恋愛小説や、サラリーマンの哀歓を描いた小説であっても、そこには必ず、現実を超えるような奇妙な味がなければ、凡庸な作品になってしまうでしょう。 現実を超えること、言わば超現実こそが、小説の真骨頂であろうと、私は確信しています。 で、事実は小説より奇なり、という言説。 これは、小説は本質的に現実を超えることができない、ということを端的に表したものかと思います。 絶望的な言葉と言ってもよいでし...
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誘拐

昨夜は五十嵐貴久のミステリー「誘拐」を一気に読みました。誘拐 (双葉文庫)五十嵐 貴久双葉社 示唆に富んだ、上質の娯楽小説です。 会社の人事担当課長として、苦しみながらリストラを進める秋月。 ある時リストラを苦に、元社員が一家心中。 元社員の娘が秋月の娘の親友であったことから、秋月の娘も自殺してしまいます。 秋月自身も退職し、綿密な誘拐計画を立てます。 歴史的な条約を結ぶため韓国大統領が来日するため、警察はその警備に全力を挙げるため、極端に警察力が手薄になるのを見計らって、なんと総理大臣の孫娘を誘拐するのです。 格差社会への憤り、それを許す政府への怒りが、秋月を突き動かします。 息をもつかせぬ疾走感をもって、秋月の犯罪と、翻弄される警察の姿が描き出されます。 引き込まれました。 結末はあっと驚くもの。 基本的に邪悪な人間が出てこない、爽やかなミステリに仕上がっています。 それが物足りない部分もありますが、読後感は清涼です。 まずまず、楽しめました。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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おもへば一夜

門松や おもへば一夜 三十年 松尾芭蕉の句です。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 お正月を迎えて、来し方を振り返ってみれば、一夜の夢のごとくであった、というほどの意かと思います。 この時、松尾芭蕉は30代前半。 ようよう、俳諧師として身を立てることになった時期で、青年らしい気概と、過去を一夜の夢に例えるような老成した感じの、双方が感じられます。 私は今年48歳になりますので、おもへば一夜五十年といったところでしょうか。 何者でもない私ですが、半世紀ちかくを生きてしまいました。 ここまで生きてきちゃったという感慨と、人生うまくいかないものだという思いが交錯します。 しかし今は、人生80年の時代。 まだまだ人生は続くのでしょう。 どんな辛いことがあっても、死なないかぎり人生は続きます。 これからは衰えていくばかりでしょうが、平穏な後半生であることを願うばかりです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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リカ

昨夜はホラーサスペンス、「リカ」を一気に読破しました。リカ (幻冬舎文庫)五十嵐 貴久幻冬舎 リカというストーカーに追われる中年男の話なのですが、文章のテンポがよく、ぐいぐいと引き込まれました。 本間という男が出会い系サイトで出会ったリカ。 最初、本間はリカとのメールのやり取りで彼女に好印象を持ちますが、少しづつ、リカの異常さに気づいていきます。 長身で顔色が悪く、目に光が無く、体臭がひどく臭い女として描かれます。 前半から中盤にかけて、ひたすら怖いのですが、終盤、リカと直接対決するにあたり、リカの人物造型に無理があることに違和感を感じました。 ひたすら気持ち悪くて怖いただの女なのか、ジェイソンのような化け物なのか、そこらへんが曖昧です。 リカをひたすら怖ろしいただの人間として描けば、名作、「オーディション」のような作品に仕上がったであろうに、そこが残念です。オーディション 村上龍パイオニアLDCオーディション (幻冬舎文庫)村上 龍幻冬舎 「リカ」より後に書かれた、恐るべきストーカー、リカ誕生の秘密に迫った「リバース」のほうが完成度は高かったように思います。リバース (幻冬舎文庫)五...
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師走

師走ですねぇ。 しかももう師走も19日。 年末年始の休みも近づいて、なんだか追われるような気分です。 うしろから 追はるゝやうな 師走哉 正岡子規が師走のせわしなさを詠んだ句です。 師走の気分が正直に表現されていますね。子規句集 (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 私は21日(水)に休暇を取っていますので、もう今年の出勤日は5日しかありません。 今年も愚かな1年を送ってしまいました。 何をやっているんだか分からないうちに、ただ目の前の仕事を片付けるのみの1年。 こんな風にして、もうじき就職してから丸25年が経とうとしています。 一年一年を思い起こしてみれば、とてつもなく長い歳月ではありますが、ざっくり振り返ると、まさに光陰矢の如し。 ここまで経っちゃったかという感慨にふける間もなく、今年が終わろうとしています。 明晩は職場の忘年会。 少し、己を振り返ってみる必要性を感じます。 もとより、反省などする気はありませんが。にほんブログ村人気ブログランキングへ
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