文学

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ふたりぐらし

今朝目覚めたら喉がひどく痛み、咳が止まりません。 体の節々が痛み、微熱がありました。 出勤できないことも無いかなと思いましたが、こじらせる前に治したいと思い、仕事を休んで内科に行きました。 つい一週間ほど前に同じ部屋で執務する後輩がコロナに罹ったことも心配でしたし。 内科でコロナの検査を行った結果、幸い大丈夫でした。 抗生物質やら咳を止める薬やら色々薬が出て、朝と昼に飲んだら大分楽になりました。 ただし、喉の痛みは相変わらずです。 多少体調が良くなったので、「ふたりぐらし」という小説を読みました。ふたりぐらし (新潮文庫)桜木 紫乃新潮社 今では職業として成り立たなくなった映写技師で脚本家になる夢を捨てきれない40歳の男と看護師で36歳の妻との生活がそれぞれの目線で交互に語られる連作短編集の体裁を取っています。 看護師の妻が夫を養っており、世間から見れば夫はヒモです。 しかし二人は仲睦まじく、生活を楽しんでいます。 家族の始まりとでも言いましょうか。 そしてそれぞれの親との関係性も描かれます。 母親はどちらもいわゆる毒母に近い人です。 その母親との関係の難しさは、私の義母と同居人を見て...
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夜のピクニック

昨日は一昨日と打って変わって静かに読書をして過ごしました。 恩田陸の「夜のピクニック」です。 この人はミステリーやホラーの作家というイメージを漠然と持っていましたが、「夜のピクニック」はいわゆる青春小説と呼ばれる分野かと思います。夜のピクニック(新潮文庫)恩田 陸新潮社 田舎町の進学校、北高。 ここでは1年生から3年生、全員が参加する奇祭、歩行祭が毎年行われています。 朝8時に学校を出発し、途中で休憩や2時間の仮眠を挟んで80キロの道のりを翌朝8時までに歩き通すという過酷なものです。 しかし、ヘトヘトになりながらも達成感があるらしく、多くの生徒は歩行祭の実施を支持しています。 ただ歩くだけで何の事件も起こらないのですが、歩行中に生徒達の間で交わされる会話が面白く、文庫本で447ぺージの作品を一気に読んでしまいました。 最後の学校行事である受験を控えた高校3年生の数人を主人公にした物語です。 私はもちろん夜通し歩くなんて体験はありませんが、この小説を読んで、何となく懐かしいような、ノスタルジックな気分に浸りました。 近くにいなければ忘れられる。忘れられればいないのと同じ。 こんなフレーズ...
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地球星人

かねて読み進めていた村田沙耶香の「地球星人」を読み終わりました。 この人の小説を読むのは「コンビニ人間」、「消滅世界」に続いて3冊目です。 「コンビニ人間」や「消滅世界」はジェンダーレスの世界を描いていて、それだけでも世の中の常識から反する、いわば反社会的な作品でした。 しかるに「地球星人」はそんな生半可な小説ではありません。 人間社会の全てを否定しているかのごとくなのです。地球星人(新潮文庫)村田沙耶香新潮社コンビニ人間 (文春文庫)村田 沙耶香文藝春秋消滅世界 (河出文庫)村田沙耶香河出書房新社 最初は世の中というものに違和感を持つ少年少女の淡い恋物語の様相で始まります。 その違和感はますます大きくなり、長じて、人間社会を工場と呼ぶにいたります。 勉強を頑張り労働する、女の子を頑張り生殖する、この二つが地球星の成り立ちであり、それは社会というより工場だというわけです。 それに順応して何の違和感もなく生きるのが地球星人であり、違和感を持つ者は異星人ととらえます。 そこでは価値観が錯綜し、逆転し、また反転します。  さらには殺人、人肉食までもが正当化されます。 それは彼らの合言葉、異星...
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おじさんはどう生きるか

今朝は6時半に起きて生卵と納豆で白飯を食いました。 その後日曜日の朝恒例の洗濯。 朝が弱い同居人は夢の中です。 午前中はテレビなど観てだらだら過ごし、昼は近所の蕎麦屋で鴨せいろを食しました。  その後床屋で散髪しました。 午後は読書。 軽い物が読みたいと、かねて購入してあった松任谷正隆の「おじさんはどう生きるか」というエッセイ集を読みました。おじさんはどう生きるか (中公文庫)松任谷正隆中央公論新社 私はこの人、松任谷由美の旦那で音楽関係の仕事をしているとしか予備知識はありませんでした。 しかしこのエッセイを読むと、文章を書いたり、音楽劇の演出をしたり、バンドをやったりと多彩な活動をしていることを知りました。 内容は偏屈なおっさんの繰り言という感じで、我が意を得たり、と思うことが多くありました。 そのなかに、寂しがり屋の一人好き、という言葉がありました。 こういう感覚、誰にでもあると思います。 それをこういう言葉で表すところに、この人のエッセイの神髄があるように思います。 また、人間ドックをやった。どうやら小さな動脈硬化があるらしい。おいしいものを食べて早く死ぬか、まずいもので長生きす...
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アーモンド

昨日は珍しく、韓国の小説を読みました。 翻訳部門で本屋大賞を受賞した「アーモンド」です。アーモンドソン・ウォンピョン祥伝社 生まれつき偏桃体(アーモンド)が極端に小さく、そのためにほとんど感情を持たず、他人に共感することもできない怪物と呼ばれる少年と、逆に感情の塊のような粗野で乱暴な不良少年との不思議な交流を描き、それぞれの少年が少しづつ成長していく過程を描いています。 私は「箪笥」や「半地下の家族」などの名作映画を作り出した韓国のエンターテイメント作りの巧妙さに惹かれますが、小説は読んだことがありませんでした。 韓国には著名な古典文学も無く、文学不毛の地だと思っていたのです。箪笥<たんす>(字幕版)イム・スジョンパラサイト 半地下の家族 (字幕版)ポン・ジュノ しかしこの小説を読んで、それは私の誤解であったことに気付きました。 「アーモンド」では、恐怖や怒り、愛や喜びといった感情とは何なのか、心と脳の関係は、といった問題が感情の無い少年の目線で語られます。 16歳の少年が少しづつ感情の芽生えを見せるのですが、20歳になった時、30歳になった時どのように変化しているのか切実に知りたいと...
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