文学

スポンサーリンク
文学

隣は何を

秋も深まってきたようで、今日は寒いくらいです。 今日から、私は股引と半袖の下着の上に長袖の下着を着用して、Yシャツを着ています。  あったかい。 暖房がまだ入らないのでちょうどよいようです。 しかし驚愕なことに、今日も半袖シャツ1枚で出勤している人を見かけました。 衣装の差が激しい時季なんですねぇ。 秋深き 隣は何を する人ぞ あまりにも有名な、松尾芭蕉の句です。 秋のどこか悲しい感じがよく出ていますね。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 隣が何の仕事をしている人か知っていますが、半袖シャツ1枚で出勤する人を見ると、何をする人ぞ、という気分になるというものです。 私はマンション住まいゆえ、近所づきあいというものは全く無く、入居して15年、隣の人を会えば挨拶くらいはしますが、どんな仕事をして、いかなる家族構成なのかも知りません。 まさしく隣は何をする人ぞ、です。 これから1~2ヶ月、深まる秋に思いを馳せつつ、秋の物悲しさに囚われないよう、鋼の精神を保ちたいものです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
文学

しゃべれども しゃべれども

昨日は静かに読書などして過ごしました。 読んだのは、「しゃべれども しゃべれども」。しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)佐藤 多佳子新潮社しゃべれども しゃべれども Blu-ray スペシャル・エディション国分太一,香里奈,森永悠希,松重豊,八千草薫TCエンタテインメント 20代半ばの、二ツ目の噺家、今昔亭三つ葉と、彼のまわりに集う個性的な人々の物語です。 劇的な展開があるわけはなく、一種の人情喜劇ですが、じつに読ませます。 三つ葉の元に、吃音に悩む青年、うまくしゃべれない野球解説者、口下手なために失恋した女、関西弁のためにいじめられる小学生らが、それぞれの悩みを落語を習うことで解決しようと奮闘します。 しかし、落語の指導をする三つ葉にしてからが、恋に仕事に悩みに悩む、一個の青年に過ぎません。 彼らはときに反目しあい、ときに語り合い、それでも素直になれずに相手を認める一言が出ない、やきもきするような人々です。 そのやきもきは、やがて、私たち誰もが抱えている人間心理の複雑さだと気づきます。 それに気づいたとき、この小説な圧倒的な迫力と、いとおしさをもって読者に迫ってきます。 良い小説で...
文学

酒のむ独り

ずいぶん涼しくなってきました。 朝夕は肌寒いほどです。 季節は確実にめぐっているのですねぇ。 月見酒の旨い季節ですが、私は月がでていようといまいと、独り、毎夜の晩酌を楽しむ愚か者です。 月花も なくて酒のむ 独り哉 俳聖、松尾芭蕉の句です。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 雄大でスケールが大きい俳句を詠むイメージがある俳聖ですが、こんな内省的というか、寂しい句も詠んでいるのですねぇ。 俳聖といえども人であったかと、少し、ほっとします。 なんとなく親近感がわきます。 わが国では、酒と風流を結び付けて考えがちですが、本当のところ、酒呑みというもの、風流を感じようと感じまいと、酒を呑むものです。 呑んでは体に毒だと思いつつ、今宵も独り、呑んでしまうのでしょうね。 月があろうとなかろうと、花があろうとなかろうと。 独り呑む酒は、愉快になることもあれば、果てしも無く内省的になり、私を落ち込ませることもあります。 でもその落ち込みは、なぜだか心地よかったりするのです。 あぁ、酒を控えなければ。にほんブログ村 人気ブログランキングへ
文学

御大、小池真理子先生の平成8年の直木賞受賞作、「恋」を一気に読破しました。 今まであまりにストレートなタイトルに怖れをなして手に取らなかったのが悔やまれる、名作でした。 直木賞のレベルを凌駕している作品です。恋 (新潮文庫)小池 真理子新潮社 時代は1970年代初頭。 学生運動が吹き荒れる政治の季節。 布美子は女子大生で、活動家の男と同棲し、学生運動にも多少の興味を持っています。 しかし、他大学の英文科助教授、信太郎とその妻、雛子に出会い、生活は一変します。 お金持ちで、奔放で、快楽主義的で、遊び好きの夫妻がかもし出す、デカダンスな雰囲気に惹かれていき、学生運動などどうでもよくなります。 当初は信太郎に恋情を覚え、やがては雛子と信太郎という番いに恋していきます。 布美子は夫妻を、両性具有の一個の個体とみなしていくのです。 雛子はセックスフレンドとも言うべき男友達を複数持ち、しかもそれは夫公認で、信太郎は雛子の快楽の相手である男と平気で酒を酌み交わすのです。 そしてまた、信太郎と布美子が情を通じた後、それを知った雛子は祝福すらするのです。 なんという不道徳。 しかしその不道徳は、この小説...
文学

春、バーニーズで

吉田修一の連作短編集、「春、バーニーズで」を読みました。 モノクロの写真が点々と挿入された、フォトブックのような美しい体裁の本でした。春、バーニーズで (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 構成は、先日読んだオカマの閻魔ちゃんと同棲する若者、筒井の生活を描いた「最後の息子」から10年後の筒井の日常を、さまざまな角度から切り取った短編集になっています。最後の息子 (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 人は若者から中年にさしかかれば、当然、成長します。 筒井は幼い子を持つ女性、瞳と結婚し、瞳の実家で義母と同居しています。 平凡な会社員となり、毎日を忙しく暮らしているわけですが、ちょっとした事件は誰にでも、起こるものです。 新宿のバーニーズで偶然、閻魔ちゃんと再会したり、マクドナルドで相席となった女性とアドレスを交換したり。 挙句の果てには、突然会社に行くのが嫌になり、日光まで東北道を飛ばしたり。 筒井という男、いくつになってもどこかモラトリアムというか、学生気分が抜けない男で、私も年相応の貫録がつかないせいか、変に感情移入できるから不思議です。 実際、理由が必要だった。このまま東京に帰るにしても、会社...
スポンサーリンク