文学

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青春小説

今日はじつに久しぶりに晴れ間に恵まれました。 朝は7時に起きて朝湯につかり、めかぶ飯とソーセージの朝飯を食い、溜まった洗濯物を洗濯機に放り込み、洗濯。 昔は一枚一枚洗濯板で洗っていたのでしょうから、ずいぶん楽になったものです。 洗濯をすませ、ベランダに干してから千葉スバルへと向かいました。 自動車保険の更新のためです。 スバルの営業所までは車で15分ほど。 帰りにイタリアンに寄り、イカ墨スパゲティで昼食。 午後は消防設備の点検のため、自宅に足止めをくらいました。 そこで、読書を楽しみました。 吉田修一最初期の短編集、「最後の息子」を読みました。最後の息子 (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 いずれも雑誌「文學界」に掲載された、「最後の息子」と「破片」と「Water」が収録されています。 いずれも10代後半から20代前半の青少年を主人公にした作品で、青春小説の部類に入ると思われます。 しかし、宣伝文句にあるような、爽快感200%、とってもキュートな青春小説!、というようなものではありません。 いずれの作品も、どこか暗い影を残します。 それもそのはず、本来的に青春とは暗さを伴うものだからです。...
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夏の災厄

篠田節子の感染症パニック小説、「夏の災厄」を読みました。 文庫本で590ページの長編ですが、一気に読ませる力はたいしたものです。夏の災厄 (角川文庫)篠田 節子KADOKAWA/角川書店 撲滅したかに見えた日本脳炎が、埼玉のベッドタウンで流行。 やがてそれは、従来型の日本脳炎よりもはるかに致死率の高い、新型日本脳炎とでも呼ぶべきものであることが判明します。 この小説には、天才的な科学者や医者は登場しません。 診療所の医師やその診療所に勤める地方公務員、看護師らが中心となって、この病気の真相に迫るのです。 大学病院が恐るべき実験を行っていたり、聞いたこともない貝が媒介していたり、霞ヶ関の役人が悠長なことを言ったり、あり得そうな話で展開して、読ませます。 そしてラスト、この病気を克服したかに見えますが、来年の夏、首都での流行を予感させて終わります。 難を言えば、あらすじを追うような大雑把な文章が続くことでしょうか。 人間を描く小説ではないように思います。 それはこの手の物語につきものの宿命なのかもしれません。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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柩の中の猫

今日は病気休暇を取りました。 背中の脂肪腫の手術で縫った糸を抜くためです。 午前10時には抜糸は終り、小説を読みました。 御大、小池真理子先生が作風を変えようと書いた、と自らおっしゃる「柩の中の猫」を読みました。柩の中の猫 (集英社文庫)小池 真理子集英社 不思議な読後感の作品です。 1955年、絵を学ぶために大学の美術教師の家に小学生の娘の家庭教師という名目で同居することになった20歳の雅代。 美術教師の妻は亡くなっており、3人の生活が始まります。 明るく、社交的でパーティー好きの美術教師。 ララという真っ白な猫を溺愛する小学生の娘。 順調に見えた生活が、美術教師の婚約者の出現によって暗転し、物語は加速度をつけて展開します。 広い意味ではサスペンス仕立ての小説ですが、この作家は何よりも心理描写が見事です。 雅代や小学生の娘の心理が卓越した筆で描かれます。 よく人が死ぬのはご愛嬌。 一匹の白い猫をめぐる愛憎劇が、これほど優れた心理劇を生むとは、さすがに御大です。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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冬の光

1日、読書をして過ごしました。 篠田節子の「冬の光」を読みました。冬の光篠田 節子文藝春秋 企業戦士として働き続けながら道ならぬ恋に身をやつした男の骨太な物語。 康宏は一流大学を出てサラリーマンとなり、結婚して二人の娘にも恵まれ、孫も生まれて幸せな老後を過ごすはずでした。 しかし、彼は学生時代の恋人で後に大学教授となる紘子と、20年の長きに渡って、不倫関係にありました。 そのことが妻子に発覚し、家庭は破綻。 一度は前非を悔いて家庭での生活を取り戻しますが、紘子との関係は、不思議な縁でなかなか切れません。 康宏と紘子は学生運動をともに戦った同志でもあります。 康宏は大学を出て企業戦士になりますが、紘子はアカデミズムの世界に残り、学生運動当時の精神性を保ったまま、永遠の若者として生きていきます。 そんな二人の関係性は、不倫、という単純な言葉で片付けられるものではありません。 定年後、紘子と会わなくなってずいぶん経ったころ、東日本大震災が発生。 康宏は自発的にミニバンで物資を被災地に届け、そのままボランティアとしてかの地にとどまります。 そこで見た凄惨な光景。 ボランティア先で、仙台の大学で...
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静かな爆弾

昨日、病院から帰って、吉田修一の中篇を読みました。 「静かな爆弾」です。静かな爆弾 (中公文庫)吉田 修一中央公論新社 テレビ局でドキュメンタリー製作の仕事をしている早川。 彼は神宮外苑の1LDKのアパートで一人暮らし。 神宮外苑に散歩に出かけ、響子という耳の不自由な女性と知り合いになります。 このあたり、作者の芥川賞受賞作「パーク・ライフ」を彷彿とさせます。 かの作品は日比谷公園で出会った男女の恋模様を描いたものでした。パーク・ライフ (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 早川はバーミャンの大仏遺跡が爆破された真相を追って、中東と日本を行き来する忙しい日常を送っています。 そんな中、早川は響子との付き合いを始めます。 神宮外苑や青山、千駄ヶ谷あたりを舞台にして、二人の、静かな恋が進行します。 響子は耳が不自由であるがゆえ、通常の言葉によるコミュニケーションが取れません。 簡単な言葉なら、口の動きで読み取ることができますが、ちょっと複雑になると筆談に頼らざるを得ません。 最小限の言葉で、効果的にコミュニケーションを続けるうちに、言葉に出さず、紙に書くことによって、そこには妙に冷静な雰囲気が漂...
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