文学

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父からの手紙

昨日に続いて、今日もとても涼しい日です。 でもどんよりと曇って、今にも降りそうな外を見ていると出かける気にならず、午前中は読書をして過ごしました。 読んだのは、「父からの手紙」というミステリーです。父からの手紙 (光文社文庫)小杉 健治光文社 妻子を捨てて別の女性の元に走った中年男。 中年男から、長女とその弟の二人の誕生日に、必ず手紙が届きます。  曰く、遠くから君たちの幸せを願っている、といったようなもの。 長女が父の親友が経営する町工場が経営難に落ち込んでいることを知り、お金持ちの経営コンサルタントとの望まない結婚に踏み切ろうとしたり。 弟がそれに激しく反発したり。 もうひとつの物語として、警官を殺害した男の物語が語られます。 この二つの物語が、後半に至って接点を持ち、同時に進行していくという構成になっています。 ラストはあっと驚くもので、そこはミステリーとして優れていますが、かなり設定に無理があります。 親子の愛、男女の愛、家族愛、そういった様々な愛情が、ゆがんだ行動を起こさせる、切ない物語に仕上がっています。 小説だから仕方ないとはいうものの、様々な愛情を紡ぎだすには、ここまで...
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忘れられた巨人

今日も暑くて出かける気にならず、読書をして過ごしました。 読んだのは日系英国人作家、カズオ・イシグロの最新作、「忘れられた巨人」です。忘れられた巨人Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房 舞台はアーサー王没後間もないブリテン島。 ある集落に住む老夫婦は、昔出て行った息子に会うため、旅に出ることを決意します。 旅といっても、当然徒歩で、しかも当時のブリテン島での旅は大変危険なもの。 強盗や追いはぎ、鬼や妖精が出没するのです。 当時、ブリテン島は霧=雌竜の息が充満し、人々はそのせいで様々なことを忘れてしまいます。 島には、言葉も神も習慣も違うブリトン人とサクソン人が住んでおり、過去、激しい戦いを繰り広げてきましたが、今はつかの間の平和が訪れています。 旅の途中、老いたアーサー王の騎士や、戦闘能力抜群の、ブりトン人に育てられたサクソン人の戦士、サクソン人の少年、キリスト教の僧など、多くの人々に出会い、助けられたり窮地に追い込まれたりします。 要するにファンタジー仕立てですね。 ただし、この作者らしい静かな筆致で、ファンタジーらしい活劇とは一線を画しています。 民族の対立と和解、そし...
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6月31日の同窓会

昨日は読書などしてゆっくりと過ごしました。 読んだのは、「6月31日の同窓会」です。6月31日の同窓会真梨 幸子実業之日本社 もちろん、暦上、6月31日という日は存在しません。 神奈川県の某市にある私立の名門女子校。 この学校には、6月31日の同窓会の通知が来ると、お仕置きされる、という噂があります。 89期生で28歳になるOGたちに、次々とその通知が届き、実際に死んでしまう者が多数出ます。 じつによく人が死にます。 怯えるOGたち。 高校時代の思い出と、28歳の現在を交差しながら描き、そこそこ読ませます。 しかし残念ながら、印象は安っぽいホラー仕立ての少女小説の域を出ていません。 お気楽に楽しめましたが、もう少し重たい物を読んでみたくなりました。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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悪母

昨夜は焼酎のロックをちびちびやりながら、サスペンス小説を読みました。 帯には、最恐サスペンスと謳っていましたが、それほど恐くはなかったですね。 春口裕子の「悪母」です。悪母春口 裕子実業之日本社 平たく言えば、ママ友同士の人間関係のゆがみを描いたものですが、LINEやらフェイスブックやらツイッターやらのSNSを駆使して嫌いなママ友を攻撃したり、一人だけLINEから外したり、なんだか陰湿なんですなぁ。 ママどころかパパですらない私には感情移入しにくいストーリーでしたが、一気に読んだということは、それなりに面白かったんでしょうね。 古今東西、女同士というのは問題が絶えないようです。 私も就職して25年、女性同士の関係性には苦労しています。 対立するグループの双方から悪口を吹き込まれたり。 幸い私は男なので、そういうのからは常に中立でいられはしますが。
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純平、考え直せ

昨日は雨に閉じ込められましたが、今日は暑さに閉じ込められました。 私は夏が一番嫌いです。 不快な季節がやってきましたねぇ。 今日も読書をしてすごしました。 奥田英朗の「純平、考え直せ」を一気に読みました。純平、考え直せ (光文社文庫)奥田 英朗光文社 文庫本で300ページほどですが、ページをめくる手が止められないほど、抜群に面白いエンターテイメントでした。 坂本純平は21歳、歌舞伎町を闊歩する下っ端ヤクザ。 歌舞伎町では、水商売のおねぃさんやオカマ、ホストにいたるまで、気の良い若者ということでマスコットのように扱われる人気者でもあります。 格好良い兄貴分に心酔して、何かと兄貴分の真似をしたがります。 ある時、親分から鉄砲玉を頼まれ、純平は躊躇することなくそれを引き受けます。 娑婆で3日間、豪遊しろと、親分と兄貴分から数十万円をもらいます。 三日後の明け方、敵対する組の幹部を撃ち殺す予定です。 純平は新宿プリンスホテルのスウィートルームに宿泊し、焼肉を食ったり鮨を食ったり。 で、三日間の間に不思議な出会いをいくつも経験します。 インチキ通販でオペレーターをする同い年のアバズレや、売り専門...
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