文学

スポンサーリンク
文学

冬の光

1日、読書をして過ごしました。 篠田節子の「冬の光」を読みました。冬の光篠田 節子文藝春秋 企業戦士として働き続けながら道ならぬ恋に身をやつした男の骨太な物語。 康宏は一流大学を出てサラリーマンとなり、結婚して二人の娘にも恵まれ、孫も生まれて幸せな老後を過ごすはずでした。 しかし、彼は学生時代の恋人で後に大学教授となる紘子と、20年の長きに渡って、不倫関係にありました。 そのことが妻子に発覚し、家庭は破綻。 一度は前非を悔いて家庭での生活を取り戻しますが、紘子との関係は、不思議な縁でなかなか切れません。 康宏と紘子は学生運動をともに戦った同志でもあります。 康宏は大学を出て企業戦士になりますが、紘子はアカデミズムの世界に残り、学生運動当時の精神性を保ったまま、永遠の若者として生きていきます。 そんな二人の関係性は、不倫、という単純な言葉で片付けられるものではありません。 定年後、紘子と会わなくなってずいぶん経ったころ、東日本大震災が発生。 康宏は自発的にミニバンで物資を被災地に届け、そのままボランティアとしてかの地にとどまります。 そこで見た凄惨な光景。 ボランティア先で、仙台の大学で...
文学

静かな爆弾

昨日、病院から帰って、吉田修一の中篇を読みました。 「静かな爆弾」です。静かな爆弾 (中公文庫)吉田 修一中央公論新社 テレビ局でドキュメンタリー製作の仕事をしている早川。 彼は神宮外苑の1LDKのアパートで一人暮らし。 神宮外苑に散歩に出かけ、響子という耳の不自由な女性と知り合いになります。 このあたり、作者の芥川賞受賞作「パーク・ライフ」を彷彿とさせます。 かの作品は日比谷公園で出会った男女の恋模様を描いたものでした。パーク・ライフ (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 早川はバーミャンの大仏遺跡が爆破された真相を追って、中東と日本を行き来する忙しい日常を送っています。 そんな中、早川は響子との付き合いを始めます。 神宮外苑や青山、千駄ヶ谷あたりを舞台にして、二人の、静かな恋が進行します。 響子は耳が不自由であるがゆえ、通常の言葉によるコミュニケーションが取れません。 簡単な言葉なら、口の動きで読み取ることができますが、ちょっと複雑になると筆談に頼らざるを得ません。 最小限の言葉で、効果的にコミュニケーションを続けるうちに、言葉に出さず、紙に書くことによって、そこには妙に冷静な雰囲気が漂...
文学

父からの手紙

昨日に続いて、今日もとても涼しい日です。 でもどんよりと曇って、今にも降りそうな外を見ていると出かける気にならず、午前中は読書をして過ごしました。 読んだのは、「父からの手紙」というミステリーです。父からの手紙 (光文社文庫)小杉 健治光文社 妻子を捨てて別の女性の元に走った中年男。 中年男から、長女とその弟の二人の誕生日に、必ず手紙が届きます。  曰く、遠くから君たちの幸せを願っている、といったようなもの。 長女が父の親友が経営する町工場が経営難に落ち込んでいることを知り、お金持ちの経営コンサルタントとの望まない結婚に踏み切ろうとしたり。 弟がそれに激しく反発したり。 もうひとつの物語として、警官を殺害した男の物語が語られます。 この二つの物語が、後半に至って接点を持ち、同時に進行していくという構成になっています。 ラストはあっと驚くもので、そこはミステリーとして優れていますが、かなり設定に無理があります。 親子の愛、男女の愛、家族愛、そういった様々な愛情が、ゆがんだ行動を起こさせる、切ない物語に仕上がっています。 小説だから仕方ないとはいうものの、様々な愛情を紡ぎだすには、ここまで...
文学

忘れられた巨人

今日も暑くて出かける気にならず、読書をして過ごしました。 読んだのは日系英国人作家、カズオ・イシグロの最新作、「忘れられた巨人」です。忘れられた巨人Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房 舞台はアーサー王没後間もないブリテン島。 ある集落に住む老夫婦は、昔出て行った息子に会うため、旅に出ることを決意します。 旅といっても、当然徒歩で、しかも当時のブリテン島での旅は大変危険なもの。 強盗や追いはぎ、鬼や妖精が出没するのです。 当時、ブリテン島は霧=雌竜の息が充満し、人々はそのせいで様々なことを忘れてしまいます。 島には、言葉も神も習慣も違うブリトン人とサクソン人が住んでおり、過去、激しい戦いを繰り広げてきましたが、今はつかの間の平和が訪れています。 旅の途中、老いたアーサー王の騎士や、戦闘能力抜群の、ブりトン人に育てられたサクソン人の戦士、サクソン人の少年、キリスト教の僧など、多くの人々に出会い、助けられたり窮地に追い込まれたりします。 要するにファンタジー仕立てですね。 ただし、この作者らしい静かな筆致で、ファンタジーらしい活劇とは一線を画しています。 民族の対立と和解、そし...
文学

6月31日の同窓会

昨日は読書などしてゆっくりと過ごしました。 読んだのは、「6月31日の同窓会」です。6月31日の同窓会真梨 幸子実業之日本社 もちろん、暦上、6月31日という日は存在しません。 神奈川県の某市にある私立の名門女子校。 この学校には、6月31日の同窓会の通知が来ると、お仕置きされる、という噂があります。 89期生で28歳になるOGたちに、次々とその通知が届き、実際に死んでしまう者が多数出ます。 じつによく人が死にます。 怯えるOGたち。 高校時代の思い出と、28歳の現在を交差しながら描き、そこそこ読ませます。 しかし残念ながら、印象は安っぽいホラー仕立ての少女小説の域を出ていません。 お気楽に楽しめましたが、もう少し重たい物を読んでみたくなりました。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
スポンサーリンク