文学

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浮世の画家

雨の土曜日。 昼寝をしたり読書をしたりして、静かに過ごしました。 読んだのは、日系英国人作家、カズオ・イシグロの「浮世の画家」。 1940年代後半の日本を舞台にした物語です。 主人公は、老いた画家。 戦前戦中、この画家は日本精神を鼓舞する画風で、たいへんな名声を得ました。 しかし戦争が終るや、彼のかつての功績は、むしろ軍国主義に迎合したものとみなされるようになるのです。 老いた画家に独り語りの手法で、物語は進みます。 戦後の現在が語られたり、修行時代が語られたり、栄光の時代が語られたり、さかんに話が飛ぶので、少々読むのに難儀します。 老いた画家は、晩年に到ってかつての名声を失いながら、その時々で信念に基づいて行動したことだと、過去を反省する様子は見られません。 ラストに到って、かつての同志が亡くなり、彼は若々しいサラリーマンたちの明るい笑顔を見ながら、新しい時代は祝福されたものになるだろうと、微笑むのです。 この独り語りの技法はかなり曲者です。 事実は事実として描かれず、必ず老画家のフィルターを通して語られるのですから。 読者はそれに戸惑いながらも、時代に翻弄された一個の老人の魂の遍歴...
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暑苦し

あつ苦し 昼寐の夢に 蝉の声 夏目漱石の句です。 今日の首都圏はどうやら猛暑日になる見込み。 事務室のなかは冷房が効いて快適ですが、いったん廊下にでれば、湿気を含んだ暑苦しい空気が澱んでいます。 いよいよ過酷な季節が始まったようです。 蝉ももうじき喧しく鳴き出すでしょう。 夏は苦手です。
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サウス・バウンド

奥田英朗の長編小説、「サウス・バウンド」を読み終わりました。 爽やかな読後感ですが、すぐに内容を忘れてしまいそうな感じもします。 小学六年生の次郎は中野在住。 両親と姉と妹の5人暮らしです。 で、父親の一郎というのがとんでもない男です。 元過激派で、警察でも有名な暴れ者。 逮捕歴もあります。 185センチの大男で、何より国家が大嫌い。 働きもせず、小説なんか書いています。 母親は喫茶店を経営し、一家を支えています。 母親は夫の一郎に心酔しているご様子。 中野では、不良少年と次郎が戦ったり、友人と遊んだり、少年小説の趣を呈しています ところが、父親が突然西表島に移住して自給自足の生活をする、と言い出し、実際に一家は引っ越します。 ここでもリゾート開発をめぐって一郎は大活躍。 ついには騒ぎを起こし、子供たちを置いて夫婦で波照間島に逃げてしまいます。 この小説で印象深いのは、次郎という少年の成長とともに、沖縄の歴史がさりげなく語られることでしょうか。 かつては琉球王国に属していなかった石垣島と周辺の島々が琉球に征服され、その琉球は薩摩藩に侵略され、ついには日本国の一部になってしまう。 いつの...
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ごろごろ

今日は一日ごろごろしていました。 朝は7時半に起きて風呂。 たっぷりとつかり、一週間の疲れを癒しました。 朝飯は納豆とハムエッグで、茶碗に1膳の白飯。 これで腹いっぱいです。 その後リビングでまた小一時間ほど眠り、先週購入し、裾丈の直しが終わった夏物のスラックスを取りに千葉三越へ。 10時半には帰宅して、小説を読んだりして午前中を過ごしました。 昼は近所のイタリアンでパスタセット。 その後またもやリビングで昼寝。 いくらでも眠れる感じです。 今宵は中トロとヒラメの刺身を購入したので、それで一杯やる予定です。 明日はお祝い事で実家に行く予定。 クールビズのこの時季、スーツにネクタイとは冴えませんが、お目出度い席のこととて、少々の窮屈は我慢しましょう。
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日の名残り

英国の老執事を描いたカズオ・イソグロの小説「日の名残り」を読み終わりました。日の名残り (ハヤカワepi文庫)Kazuo Ishiguro,土屋 政雄早川書房 スティーブンスはダーリントン・ホールと呼ばれる大きなお屋敷に仕える執事。 時代は1956年の7月。 何十年もこのお屋敷の主、ダーリントン卿に仕えてきた名執事です。 ダーリントン卿が亡くなり、屋敷は執事込みで売りにだされ、米国の実業家によって買い取られます。 米国人は英国貴族と違って気さくな人柄で、屋敷を留守にする間、スティーブンスに車を貸すから旅行に行って来いと勧めます。 スティーブンスは旅行などしたことがなく、戸惑いますが、新しい主の勧めにしたがって、一週間ほどの自動車旅行へと出かけます。 旅行の様子が描かれるとともに、1920年代から1956年の現在までの様々な思い出が語られます。 第一次大戦、第二次大戦、二つの世界大戦を経て、かつての日の沈まない帝国は、すっかり落ちぶれてしまいます。 女中頭がスティーブンスに寄せる密かな思い、若い女中と召使の駆け落ち、ナチ高官と英国政府高官の深夜の密談など、お屋敷では様々なことが起こり、そ...
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