文学

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沈黙の町で

結局昨夜は全然雪が降らず、拍子抜けしました。 そんな中、女友達二人と 山王パークタワーの中華料理屋で高級中華に舌鼓を打ち、二次会は隣接するキャピタル東急ホテルのメイン・バーでカクテルなどいただき、古い女友達と旧交を温めました。 女友達のうちの一人は着物姿。 もちろん私も。 奇妙な3人に見えたことでしょう。 夏と冬に開催してきた会を、今後は季節の良い春と秋に変えようと約し、別れました。 この二人と一杯やるのはじつに愉快です。 今日は静かに読書をして過ごしました。 奥田英朗の長編「沈黙の町で」です。 中学2年生のいじめられっ子が、ある時死体で見つかります。 死因は転落死。 自殺なのか、事故なのか、事件なのか。 この件を巡り、いじめられっ子の母親、いじめっ子たち、いじめっ子たちの親、その他の生徒たち、警察、検事、新聞記者など、多くの視点でそれぞれの思いが語られ、少しづつ、真実が明らかになっていきます。 人が一人死んでいるのに、わが子だけが可愛い親たち、責任逃れをする教師たちなど、人間の醜い真実が明らかにされていきます。 この作者はどちらかというとユーモア小説を得意としますが、こんなシリアスな...
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着ぶくれて

昨日は大寒でした。  正月までは変に暖かく、今年は暖冬だと思っていましたが、ここへ来て寒さが急激に厳しくなりました。 辛い季節です。 大寒と 敵(かたき)のごとく 対(むか) ひたり  富安風生富安風生 阿波野青畝集 (朝日文庫―現代俳句の世界)富安 風生,阿波野 青畝朝日新聞社 私は敵とまでは思いませんが、そう思いたくもなる寒さではあります。 むしろ、同じ俳人の、 着ぶくれて 固く己を 守りけり のほうが、今の私の状態を良く表しています。 明日は小雪がちらつくとか。 着ぶくれて、さらには熱燗で、固く己を守り、決して敵に向かうような真似はしないようにしましょう。にほんブログ村人文 ブログランキングへ
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初雪

今朝、首都圏では小雪がちらつきました。 初雪です。 おかげでひどく寒い日となりました。 限りなく 降る雪何を もたらすや 西東三鬼の句です。 もちろん、限りなく降るような雪ではなく、ほんのわずかばかりの雪です。 それでも、なんとなく、上の句が頭に浮かびました。 雪は何をもたらすのでしょうね。 私にとってはもっぱら雪見酒ですが、雪は平凡な町を幻想的なものに変貌させる力を持っているようです。 この雪が私の精神に何をもたらすのか、見極めたいものです。 にほんブログ村人文 ブログランキングへ
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東京物語

小津の映画とは関係ありません。 奥田英朗の連作短編集のタイトルです。 1978年4月4日、著者がモデルだと思われる主人公、田村久雄は、18歳でふるさと、名古屋を後にして東京に出てきます。 この日一日を描いた短編から、1989年11月10日、ベルリンの壁崩壊の日、30歳を目前にした一日を切り取って見せた短編まで、主に1980年代の青春物語が、連作短編の形で紡ぎだされていきます。 ユーモア小説というジャンルに入るのでしょうが、失われた時を追慕する郷愁が感じられ、人情小説の趣きを呈しています。 11月10日、男ばかりで集まり、翌日結婚する仲間の前祝いを開いている中、青春が終り、人生が始まる、などと小癪なことをつぶやきつつ、青春の終わりを迎えた男たちがテレビでベルリンの歓喜の様子を見守るラストシーンは極めて暗示的です。 私は1969年生まれ。 1970年代の終りから80年代の終わりにかけて、時代を奮闘する若者の物語に、深い感銘を受けました。東京物語 (集英社文庫)奥田 英朗集英社にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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モナドの領域

今日から年末年始の6連休。 今日はのんびり読書などして過ごしました。 御大、筒井康隆先生の新作「モナドの領域」を読みました。 メタフィクションもしくはパラフィクションの要素を取り込んだ哲学的で難解な小説でした。 GODと呼ばれる神以上の存在を自称する者が登場し、この世界と隣接する他の世界との綻びを論理学的に修繕するさまを、ミステリー仕立てで描いた作品です。 そこそこ読めますが、御大の作品を30年以上にわたって読み続けた私からすると、もはや筆の衰えは隠しようがありません。 痛々しくすら感じます。 引退の潮時ではないでしょうか。モナドの領域筒井 康隆新潮社
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