文学

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邪魔

奥田英朗の長編、「邪魔」を読み終わりました。 文庫本で上下巻、合せて800頁に及ぶ大作です。 会社で宿直中、火事にあい、火傷を負った夫。 被害者と思われた夫が、放火犯の疑いをかけられます。 平凡な日常を守ろうとする妻。 しかし、夫への疑いが深まるにつれ、妻は壊れていきます。 平凡な日常などじつに脆いものだと、戦慄を覚えずにはいられませんでした。 この小説には、サイドストーリーがあり、夫を追い詰める刑事の物語がそれです。 数年前に妻を交通事故で失い、それ以来義母を頻繁に訪れては自分を慰めています。 しかし、その義母は生きているのか、それが曖昧になっていき、サスペンスにホラーのスパイスを加味しています。 この刑事もまた、壊れていくのです。 さらにはこの刑事をオヤジ狩りのターゲットにし、逆に怪我を負わされた少年たちの物語も綴られます。 少年たちも、破滅に向かって突き進んでいくのです。 夫が邪魔な主婦、精神的に追い詰められ、生きることそのものが邪魔な刑事、将来を壊していく自分たちの行動が邪魔な少年たち。 様々な邪魔が重層的につづられます。 いやむしろ、「邪魔」というタイトルより、例えば「壊れる...
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春一番

今日の首都圏は気温がぐんぐん上がり、春一番が吹き荒れました。 午前中は雨も降って、台風のようでしたね。 午後からは晴れて、初夏を思わせる陽気でした。 まだ2月なのに。 梅も各地で咲いています。 春もやや けしきととのふ 月と梅   俳聖・松尾芭蕉の句です。 梅が咲けば、いよいよ春の訪れを感じますし、そこに月が登場すれば最強ということでしょうか。 金曜日に休暇を取ったため、今日まで4連休でした。 連休の最後というのはいつもそうですが、憂色濃いものです。 春を寿ぐ余裕もなく、私はまた愚かにも酒につかの間の慰めを求めてしまうのでしょうねぇ。
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春たつ

今日は立春。 まだまだ寒いですが、今日から春だと言われると、なんとなく、日差しが強くなったように感じるから不思議です。 春たつと いふばかりにや み吉野の 山もかすみて 今朝はみゆらむ 壬生忠岑の歌です。 立春と言われると、寒い吉野の山も霞んで、春めいて見える、といったほどの意かと思います。拾遺和歌集 (新 日本古典文学大系)小町谷 照彦岩波書店 今日の私の心境とシンクロしているようで、ふと、思い出しました。  人間の感情なんて千年前も三千年前も、そう変わらないものでしょう。 そうであればこそ、私ははるか時を越えて、歌人や俳人が残した歌や俳句にシンクロすることがよくあるのです。にほんブログ村 人文 ブログランキングへ
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沈黙の町で

結局昨夜は全然雪が降らず、拍子抜けしました。 そんな中、女友達二人と 山王パークタワーの中華料理屋で高級中華に舌鼓を打ち、二次会は隣接するキャピタル東急ホテルのメイン・バーでカクテルなどいただき、古い女友達と旧交を温めました。 女友達のうちの一人は着物姿。 もちろん私も。 奇妙な3人に見えたことでしょう。 夏と冬に開催してきた会を、今後は季節の良い春と秋に変えようと約し、別れました。 この二人と一杯やるのはじつに愉快です。 今日は静かに読書をして過ごしました。 奥田英朗の長編「沈黙の町で」です。 中学2年生のいじめられっ子が、ある時死体で見つかります。 死因は転落死。 自殺なのか、事故なのか、事件なのか。 この件を巡り、いじめられっ子の母親、いじめっ子たち、いじめっ子たちの親、その他の生徒たち、警察、検事、新聞記者など、多くの視点でそれぞれの思いが語られ、少しづつ、真実が明らかになっていきます。 人が一人死んでいるのに、わが子だけが可愛い親たち、責任逃れをする教師たちなど、人間の醜い真実が明らかにされていきます。 この作者はどちらかというとユーモア小説を得意としますが、こんなシリアスな...
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着ぶくれて

昨日は大寒でした。  正月までは変に暖かく、今年は暖冬だと思っていましたが、ここへ来て寒さが急激に厳しくなりました。 辛い季節です。 大寒と 敵(かたき)のごとく 対(むか) ひたり  富安風生富安風生 阿波野青畝集 (朝日文庫―現代俳句の世界)富安 風生,阿波野 青畝朝日新聞社 私は敵とまでは思いませんが、そう思いたくもなる寒さではあります。 むしろ、同じ俳人の、 着ぶくれて 固く己を 守りけり のほうが、今の私の状態を良く表しています。 明日は小雪がちらつくとか。 着ぶくれて、さらには熱燗で、固く己を守り、決して敵に向かうような真似はしないようにしましょう。にほんブログ村人文 ブログランキングへ
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