文学

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中年サラリーマンの物語

午前中、軽作業をしたらひどく疲れてしまい、お昼で早退しました。 普段あまり自覚していませんが、加齢と運動不足により、だいぶ体力が落ちているようです。 帰宅途中、蕎麦屋によって鴨せいろを食い、帰るなり風呂に入って少し横になりました。 元気になって、最近お気に入りの作家、奥田英朗の短編集「マドンナ」を一気に読みました。マドンナ (講談社文庫)酒井 順子講談社 どれも40代の中間管理職を主人公にしたサラリーマン小説で、ちょうど私と同年代だけに面白く読みました。 表題作は、40代半ばの主人公が、新しく配属された25歳のOLに淡い恋心をいだき、一人相撲を取るというほろ苦いお話。 その他にも、何事もドライな年下の女部長の部下になった中年課長が、日本的慣習に染まらない外資系から転職してきたその部長の意外な一面を見つけて納得するお話など、サラリーマンにありがちな、小さな物語が巧みに紡ぎだされています。 私は精神障害で複数回にわたって半年以上の病気休暇を取ってしまったことから、出世しないことははっきりしています。 この短編集には、出世意欲ばりばりの中年から、事なかれ主義で出世を諦めた人まで、様々な中年男...
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ガール

30代未婚で働く女性たちの悲喜こもごもを活写した奥田英朗のユーモア短編集を読みました。 「ガール」です。ガール (講談社文庫)奥田 英朗講談社 晩婚化が進み、日本社会に30代未婚の女性なんて珍しくなくなりました。 で、いわゆる娘時代が長引いて、娘気分時代も含めると、40代でもガールだと思っている女性たちが溢れかえっています。 元気に人生を謳歌しているかに見える彼女たちも、時には将来を考えてブルーになったり、そうかと思うと一回りも下の若いイケメンに時めいて自己嫌悪に陥ったりと、胸中はなかなか複雑なご様子。 男の私は、そうなのかぁと感心させられることしきり。 でも、作者は男性なのですよね。 よくも揺れる微妙な女性たちの心理を描ききったものです。 昔太宰治の「女生徒」という小説を読んで、よく女の気持ちがかけるなぁと、驚いたことがあります。 それ以来の驚きです。美しい表紙で読みたい 女生徒太宰治ゴマブックス株式会社 自称ガールのみなさんが読めば身につまされ、私のようなおじさんが読めば感心する、快作でしたねぇ。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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昭和は遠く

今日は文化の日。 もともとは明治大帝の誕生日であることを知る人も少ないでしょう。 降る雪や 明治は遠く なりにけり と中村草田男が詠んだのは、昭和六年のこと。 明治が終ってやく20年後のことです。中村草田男集 (朝日文庫―現代俳句の世界)中村 草田男朝日新聞社 今、平成の御世も27年。 昭和は遠くなりにけり、というのが実感です。 激動の明治時代を生き抜いた明治大帝のご遺徳を偲びつつ、戦争に明け暮れた近代の反省に立って文化的な事柄に精を出そうというのが文化の日の主旨なんでしょうかね。 しかし生まれついての怠け者である私は、貴重な文化の日を、ただだらだらと過ごしています。
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家日和

昨夜は奥田英朗のユーモア小説集を読みました。 「家日和」です。家日和 (集英社文庫)奥田 英朗集英社 まったくこの作家のユーモアのセンスには笑わされ、感心させられます。 喜劇を生み出すというのは極めて知的な作業で、冷静さを必要としますね。 それでいて、ミステリや悲劇ほど売れないし評価されないというのは悲しいことですね。 この短編集は、ネット・オークションにはまる主婦や、妻と別居中に自宅マンションを自分好みの男の城に変身させてしまう中年サラリーマンなどなど、様々な滑稽な家族が提示され、面白くもあり、身につまされもしといった、読み応えのあるものに仕上がっています。 文学の世界において、シリアスなものがもてはやされがちですが、これからは喜劇をこそ、称揚せしめねばなりません。
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記憶破断者

今日は「記憶破断者」というSFミステリを一気に読みました。 記憶が1時間くらいしかもたないという奇病、前向性健忘症を患う男と、他人の記憶を書き換えることができる超能力者との対決の物語。 他人の記憶を書き換えられることを悪用し、悪事のかぎりを尽くすダーク・ヒーロー。 1時間前のことも覚えていられない男はノートを持ち歩き、こと細かくメモし続けることで、相手に対峙しようとします。 ラスト近く、超能力者にノートを読まれることを想定し、あえて嘘を書いたり、重要なことを書かないでおいたりといった工夫をこらしていることが判明します。 しかも当の本人はそれすら忘れてしまうので、ノートに書かれたことが本当だと信じ、だからこそ相手を欺くことが出来るという仕掛け。 巧妙に仕組まれた物語で、堪能しました。記憶破断者 (幻冬舎単行本)小林泰三幻冬舎
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