文学

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憂国忌

今日は三島由紀夫の命日、憂国忌です。 森田必勝と市ヶ谷の自衛隊に乗り込み、檄を飛ばした後、自衛官のうち誰一人として呼応することがないことを知って、割腹自殺して果てました。 それから45年。 生きていれば90歳です。 あの事件が、偉大な文学者であった三島由紀夫を、スキャンダルに満ちた国粋主義者に変えてしまいました。 極めてシニカルな小説を書いた彼が、あのような激情に狂ったとしか思えない事件を起こすとは驚きです。 あの事件は、当時の左翼過激派にも衝撃を与え、新左翼から新右翼に転向する者を生み出しました。 憂国忌の語源となった「憂国」は、2.26事件の後、割腹して果てる青年将校と妻の後追い自殺、それにいたる長い情交が描かれ、それは魔的な美しさを誇ってはいても、右翼的でも国粋主義的でも、さらには憂国の情を感じさせるものでもありません。花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社 自衛隊に乗り込む直前に書きあげた「天人五衰」にしても、極めて冷静な筆致で、これから腹を切りに行く人が書いたとは思えません。天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社 一体作家の精神に何...
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ズル休み

3連休明けのせいでしょうか、朝起きたら猛烈に出勤したくない、という思いが強くなり、ズル休みしてしまいました。 午前中はぼんやり過ごし、午後は読書をしました。 篠田節子の短編集「家鳴り」です。家鳴り (集英社文庫)篠田 節子集英社 ホラー風味の短編集という触れ込みでしたが、どちらかというと人間精神の暗部を端的に切り取った感じでしょうか。 おいしそうに食事をする妻の顔を見るのが唯一の楽しみになった専業主夫の男が、妻にどんどん飯を食わせ、ついには起き上がることも出来なくなった妻が発作を起こして亡くなるのと同時に丹精こめた家が音を建てて崩れていく、一種の心中物の表題作。 中学生の少女に魅入られて破滅していくサラリーマン。 奇妙なようでいて、誰に起こってもおかしくない物語が、静かに、かつ不気味に綴られます。 なんとなく気分が沈むお休みの日には、ぴったりの内容かもしれません。
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アリス殺し

昨夜は小林泰三のダーク・ファンタジー仕立てのミステリーを堪能しました。 「アリス殺し」です。アリス殺し (創元クライム・クラブ)小林 泰三東京創元社 「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」は、誰もが知っている不思議なお話。 大学院生の亜理は、毎夜、その不思議の国で冒険する夢を見ます。 それも鮮明な夢。 しだいに不思議の国と現実との境界が曖昧になっていきます。不思議の国のアリス (角川文庫)河合 祥一郎角川書店(角川グループパブリッシング)鏡の国のアリス (角川文庫)河合 祥一郎角川書店(角川グループパブリッシング) 物語は、不思議の国を舞台にしたものと現実を舞台にしたものが交互に描かれながら進みます。 やがて、亜理以外にも、不思議の国の夢を見続けている人がいることを知ることになります。 共同してこの奇妙な事態を推理し、ついには不思議の国での存在と夢を見続けている人間がリンクしていることに気付きます。 彼らはこれを、アーヴァタールと呼びます。 要するに、アバターですね。 そして怖ろしいことに、アーヴァタールが不思議の国で殺されると、現実を生きる本体であるはずの人間も死んでしまうのです...
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中年サラリーマンの物語

午前中、軽作業をしたらひどく疲れてしまい、お昼で早退しました。 普段あまり自覚していませんが、加齢と運動不足により、だいぶ体力が落ちているようです。 帰宅途中、蕎麦屋によって鴨せいろを食い、帰るなり風呂に入って少し横になりました。 元気になって、最近お気に入りの作家、奥田英朗の短編集「マドンナ」を一気に読みました。マドンナ (講談社文庫)酒井 順子講談社 どれも40代の中間管理職を主人公にしたサラリーマン小説で、ちょうど私と同年代だけに面白く読みました。 表題作は、40代半ばの主人公が、新しく配属された25歳のOLに淡い恋心をいだき、一人相撲を取るというほろ苦いお話。 その他にも、何事もドライな年下の女部長の部下になった中年課長が、日本的慣習に染まらない外資系から転職してきたその部長の意外な一面を見つけて納得するお話など、サラリーマンにありがちな、小さな物語が巧みに紡ぎだされています。 私は精神障害で複数回にわたって半年以上の病気休暇を取ってしまったことから、出世しないことははっきりしています。 この短編集には、出世意欲ばりばりの中年から、事なかれ主義で出世を諦めた人まで、様々な中年男...
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ガール

30代未婚で働く女性たちの悲喜こもごもを活写した奥田英朗のユーモア短編集を読みました。 「ガール」です。ガール (講談社文庫)奥田 英朗講談社 晩婚化が進み、日本社会に30代未婚の女性なんて珍しくなくなりました。 で、いわゆる娘時代が長引いて、娘気分時代も含めると、40代でもガールだと思っている女性たちが溢れかえっています。 元気に人生を謳歌しているかに見える彼女たちも、時には将来を考えてブルーになったり、そうかと思うと一回りも下の若いイケメンに時めいて自己嫌悪に陥ったりと、胸中はなかなか複雑なご様子。 男の私は、そうなのかぁと感心させられることしきり。 でも、作者は男性なのですよね。 よくも揺れる微妙な女性たちの心理を描ききったものです。 昔太宰治の「女生徒」という小説を読んで、よく女の気持ちがかけるなぁと、驚いたことがあります。 それ以来の驚きです。美しい表紙で読みたい 女生徒太宰治ゴマブックス株式会社 自称ガールのみなさんが読めば身につまされ、私のようなおじさんが読めば感心する、快作でしたねぇ。にほんブログ村 本・書籍 ブログランキングへ
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