文学

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謎解き

本格推理、SFミステリ、コメディ調のミステリなど、様々なタイプのミステリを集めた短編集を読みました。 小林泰三の「大きな森の小さな密室」です。大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)小林 泰三東京創元社 その多様さゆえに少々戸惑いを覚えましたが、独特の世界に引き込まれました。
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白玉の

私が最も敬愛する歌人、若山牧水はたいへんな大酒飲みでした。 朝2合、昼2合、夜6合の酒を欠かさなかったと伝えられます。 歌人は酒の飲みすぎが祟って43歳の若さではかなくなってしまいました。 病床にあっても酒を欲し、医者ももはや止めなかったそうです。 酒を詠んだ歌は数知れず。 その中でも、 白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしずかに 飲むべかりけり というのは絶唱とも言うべき秀歌でしょうねぇ。 この時季、帰宅して酒を口に含むと、必ず思い出します。若山牧水歌集 (岩波文庫)伊藤 一彦岩波書店 それにしても、40代後半に突入し、日々の楽しみは晩酌ばかりとなるとは、私も衰えたものです。 酒の酔いがもたらす心地よさを求めて研鑽を怠り、精神の怠惰を放置するようになろうとは、若い頃には想像もしなかったことです。 加齢がもたらす衰えは、ひとつ肉体ばかりではなく、精神にも及ぶのですねぇ。 しかし私はもはや、それに抵抗する術を持ちません。 肉体よりも先に朽ちていく精神の、その朽ちいく速さに、ただ、茫然とするばかりです。にほんブログ村 芸術・人文 ブログランキングへ
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神無月

今日から10月。 10月といえば神無月。 この月には日本国中の神々が出雲に出張するので神無月と呼ぶ、という俗説がまかり通っています。 本当のところ、なぜそう呼ぶかは諸説あって、定かではありません。 ちなみに出雲では神在月と呼ぶそうです。 しぐれつつ 留守守る神の 銀杏かな 高浜虚子の句です。虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 時雨という言葉が秋の寂しさを感じさせつつ、神社の大銀杏でしょうか、その大木のたたずまいが荘厳なイメージを喚起させる、スケールの大きな句に仕上がっていますね。 秋思という言葉があります。 秋に感じる寂しい物思いを指しており、春愁と対で用いられます。 春愁がどちらかというとメランコリックな愁いといった感覚的な語感なのに対し、秋思はもう少し詩的な感じを覚えます。 山塊に ゆく雲しろむ 秋思かな 飯田蛇笏の句です。新編飯田蛇笏全句集飯田 蛇笏,飯田蛇笏生誕百年記念実行委員会角川書店 これはとてもきれいにまとまった句ですね。 それが良くもあり、つまらなくもあり。 いずれにしろ秋思を詠んで見事です。 この季節に...
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幸せスイッチ

奇妙で邪悪な感じの短編集を読みました。 小林泰三の「幸せスイッチ」です。幸せスイッチ (光文社文庫)小林 泰三光文社 両親が亡くなり、莫大な遺産で暮らす傷心の女子高生。 悪い男にひっかかり、有り金全部もっていかれ、男にも捨てられ、絶望の淵に沈む彼女を救ったのは、脳から快楽物質を出させるスイッチ。 しかしそのスイッチを付けると、怖ろしい罠が・・・。 表題作の他、異常で奇妙な味わいの短編集で、テンポも良く、私の好みの作品群でした。 この作者の作品をしばらく続けて読んでみようかと思っています。にほんブログ村本・書籍 ブログランキングへ
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真夜中のマーチ

昨夜は奥井英朗の小説、「真夜中のマーチ」を一気に読みました。真夜中のマーチ (集英社文庫)奥田 英朗集英社真夜中のマーチ 窪塚俊介,玉山鉄二,香椎由宇,津川雅彦角川エンタテインメント 大手商社に勤めるダメ社員のミタゾウ、イベント企画をやりながら一攫千金を夢見るチンピラのヨコケン、クールな謎の美女、クロチェ。 何の関係も無かった25歳の3人がふとしたきっかけで出会い、ヤクザや中国マフィアを相手に10億円を横取りしようと八面六臂の大活躍をするエンターテイメントに仕立て、息をもつかせぬテンポの良さで、ぐいぐいと読ませます。 三人の微妙な関係や、一癖も二癖ある多くの登場人物が物語に彩りを添えます。 それにしてもこの作者、器用な人です。 「最悪」などの重厚なミステリーを書いたかと思えば、「空中ブランコ」・「イン・ザ・プール」などのユーモア小説を物し、「真夜中のマーチ」のような、青春小説の要素を盛り込んだ活劇をも書いて見せます。最悪 (講談社文庫)奥田 英朗講談社空中ブランコ (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋イン・ザ・プール (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋イン・ザ・プール 三木聡,奥田英朗ポニーキャ...
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