文学

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蕎麦

今年は猛暑と言われましたが、8月の終わりから涼しくなり、その後長雨が続き、すっかり秋の気配です。 今日もひどい雨。 シルバー・ウィークは晴れる予報ですが、この調子では分りません。 涼しくなると、酒の味が一段と上がり、つまみの味も良いようで、酒が進んで困ります。 飯も麺類も旨く感じられます。 秋雨や 蕎麦をゆでたる 湯の匂 夏目漱石の句です。漱石俳句集 (岩波文庫)坪内 稔典岩波書店 昼餉でしょうか、あるいは晩、酒の上りでしょうか、秋雨の中、蕎麦をゆでる香りが食欲をそそられるようで、つい、蕎麦が食いたくなります。 現代ではラーメンの旨い店を特集するメディアが多いようですが、江戸時代にはもっぱら蕎麦番付が流行ったようです。 江戸っ子は江戸前鮨と並んで、蕎麦を愛したのですねぇ。 今宵、晩酌の上りには蕎麦を茹でましょうか。 あるいは、蕎麦屋で一杯やった後、ざるでも食いましょうか。 にほんブログ村 人気ブログランキングへ
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沈黙のひと

昨夜、小池真理子の長編「沈黙のひと」を読了しました。沈黙のひと (文春文庫)小池 真理子文藝春秋 小池真理子というと、わりと色っぽい小説が多いイメージですが、今作は老いさらばえて死んでいった父親を恋う娘の物語でした。 50代、独身、バツ1、編集者の娘。 この娘が幼い頃、父親はよそに女を作り、妻子を捨てたのでした。 そうでありながら、定期的に棄てたはずの妻と娘に会いに来る不思議な男。 元妻も、当たり前のように受け入れるのです。 父親は新しい妻との間に二人の娘をつくり、そのうえ浮気もする、女にだらしない男です。 物語は父親が亡くなって後、異母妹らと遺品整理をするところから始まります。 そこで、娘は古くなって動かない父親愛用のワープロを持ち帰ります。 パーキンソン病を患い、言葉を発することが出来なくなった父は、ワープロを駆使して手紙を書いたり日記のようなメモを残したりします。 娘はワープロに残されたデータを復原し、在りし日の父の思いを知ろうとするのです。 やがて父親の病状は進み、キイ・ボードを叩く力すら失い、文字盤の文字を示すことすら手が震えて不可能になり、沈黙のなか、最後の日々を過ごすので...
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刑死の明日に、迫る夜温(ぬく)し

私が一貫して死刑制度廃止を願っていることは、このブログに何度も書きました。 なんとなれば、この世に生きとし生ける者は、死から逃れる術を持たず、すべての生き物が死刑囚とも言え、いずれ来る死を早めることが刑罰になるとは思えないからです。 まして宅間守のように早期の死刑執行を望んでいる者を殺してしまうのは、本人の希望を叶えてやることになります。 それよりは、終身獄中に置いて、反省と贖罪を促すことが、刑罰として相応しいと思えてなりません。 死刑囚の中には、永山則夫のように、獄中で小説を書いて豊かな文学的才能を発揮した者もいます。無知の涙 (河出文庫)永山則夫河出書房新社 彼が日本ペンクラブに入会したいと言い出した時、ペンクラブは喧々諤々の騒ぎになり、結局入会を認めませんでしたね。 文学者の集まりと雖も社会を構成する団体である以上、犯罪者を入れることは出来ない、という意見と、文学は人間の恥部や悪をも描くものであり、犯罪者だからと言って入会を認めなければ、文学の死を意味するという意見が激しく対立したことを覚えています。 それはさておき。 死刑囚の歌人に、島秋人と言う人がいます。 強盗殺人の罪により...
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怠け者

昨日久しぶりに晴れたかと思えば、今日は早くも雨降り。 秋の長雨とは言いますが、いい加減にしてほしいものです。 今日は朝湯につかって朝飯を食った後は、テレビを観たり小説を読んだりしてのんびりと過ごしています。 昼は近所の蕎麦屋でとろろそばを食しました。 その後しばし昼寝して、少しだけ、明日のプレゼンの資料を読み返したりしました。 怠け者の私が日曜日にわずかとは言え仕事の資料に目を通すとは。 明日は西からお日様が昇るかもしれません。 なまけもの なまけてあれば こおひいの ゆるきゆげさへも たへがたきかな 北原白秋の短歌です。 全編平仮名、珈琲さえも平仮名。 読みにくいったら無いですが、いかにも怠け者な感じは漂います。北原白秋歌集 (岩波文庫)高野 公彦岩波書店 私の夢は専業主夫になって、家事さえも手を抜いて怠け者の暮らしをおくることですが、私と同居人と共働きだからこそ、どうにか経済的にやっていけているのも事実で、同居人1人の稼ぎでは、あっという間に貧窮することは目に見えています。 まぁ、夢なんて、叶えるものではなく、ただひたすら憧れているから楽しいのかもしれませんねぇ。
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路(ルウ)

今日は午後から目白で競争的資金獲得のための勉強会。 直行直帰を許されているので、朝はのんびりです。 昨夜、吉田修一の「路(ルウ)」という小説を読了しました。路 (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 吉田修一といえば、芥川賞受賞作の「パーク・ライフ」など、巧みな心理描写で人生を描き出す作家というイメージを持っていました。パーク・ライフ (文春文庫)吉田 修一文藝春秋 「路(ルウ)」は台湾新幹線の受注から完成までの10年近い日々を描いた長編で、読み始めた当初、奮闘するサラリーマンの物語なのかなと思い、やや退屈な感を覚えました。 しかし読み進むうち、そこはさすがに吉田修一と思い知らされました。 新幹線を売り込む商社に勤める若い女性と、台湾人で日本の建築会社に勤める男との淡い恋、女性の日本人の恋人の鬱病発症、台湾で生まれ育ち、戦後日本に引き上げた老人の鬱屈、台湾人同士の恋物語などが重層的に綴られ、大団円に向かってそれぞれの人生が交差していく、感動的で切ない叙事詩に仕上がっており、非常な感銘を受けました。 変形的なメリー・ゴーラウンド方式の手法を採った作品で、私は圧倒されました。 私は優れた小説を読む...
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