文学

スポンサーリンク
文学

神無月

今日から10月。 10月といえば神無月。 この月には日本国中の神々が出雲に出張するので神無月と呼ぶ、という俗説がまかり通っています。 本当のところ、なぜそう呼ぶかは諸説あって、定かではありません。 ちなみに出雲では神在月と呼ぶそうです。 しぐれつつ 留守守る神の 銀杏かな 高浜虚子の句です。虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 時雨という言葉が秋の寂しさを感じさせつつ、神社の大銀杏でしょうか、その大木のたたずまいが荘厳なイメージを喚起させる、スケールの大きな句に仕上がっていますね。 秋思という言葉があります。 秋に感じる寂しい物思いを指しており、春愁と対で用いられます。 春愁がどちらかというとメランコリックな愁いといった感覚的な語感なのに対し、秋思はもう少し詩的な感じを覚えます。 山塊に ゆく雲しろむ 秋思かな 飯田蛇笏の句です。新編飯田蛇笏全句集飯田 蛇笏,飯田蛇笏生誕百年記念実行委員会角川書店 これはとてもきれいにまとまった句ですね。 それが良くもあり、つまらなくもあり。 いずれにしろ秋思を詠んで見事です。 この季節に...
文学

幸せスイッチ

奇妙で邪悪な感じの短編集を読みました。 小林泰三の「幸せスイッチ」です。幸せスイッチ (光文社文庫)小林 泰三光文社 両親が亡くなり、莫大な遺産で暮らす傷心の女子高生。 悪い男にひっかかり、有り金全部もっていかれ、男にも捨てられ、絶望の淵に沈む彼女を救ったのは、脳から快楽物質を出させるスイッチ。 しかしそのスイッチを付けると、怖ろしい罠が・・・。 表題作の他、異常で奇妙な味わいの短編集で、テンポも良く、私の好みの作品群でした。 この作者の作品をしばらく続けて読んでみようかと思っています。にほんブログ村本・書籍 ブログランキングへ
文学

真夜中のマーチ

昨夜は奥井英朗の小説、「真夜中のマーチ」を一気に読みました。真夜中のマーチ (集英社文庫)奥田 英朗集英社真夜中のマーチ 窪塚俊介,玉山鉄二,香椎由宇,津川雅彦角川エンタテインメント 大手商社に勤めるダメ社員のミタゾウ、イベント企画をやりながら一攫千金を夢見るチンピラのヨコケン、クールな謎の美女、クロチェ。 何の関係も無かった25歳の3人がふとしたきっかけで出会い、ヤクザや中国マフィアを相手に10億円を横取りしようと八面六臂の大活躍をするエンターテイメントに仕立て、息をもつかせぬテンポの良さで、ぐいぐいと読ませます。 三人の微妙な関係や、一癖も二癖ある多くの登場人物が物語に彩りを添えます。 それにしてもこの作者、器用な人です。 「最悪」などの重厚なミステリーを書いたかと思えば、「空中ブランコ」・「イン・ザ・プール」などのユーモア小説を物し、「真夜中のマーチ」のような、青春小説の要素を盛り込んだ活劇をも書いて見せます。最悪 (講談社文庫)奥田 英朗講談社空中ブランコ (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋イン・ザ・プール (文春文庫)奥田 英朗文藝春秋イン・ザ・プール 三木聡,奥田英朗ポニーキャ...
文学

蕎麦

今年は猛暑と言われましたが、8月の終わりから涼しくなり、その後長雨が続き、すっかり秋の気配です。 今日もひどい雨。 シルバー・ウィークは晴れる予報ですが、この調子では分りません。 涼しくなると、酒の味が一段と上がり、つまみの味も良いようで、酒が進んで困ります。 飯も麺類も旨く感じられます。 秋雨や 蕎麦をゆでたる 湯の匂 夏目漱石の句です。漱石俳句集 (岩波文庫)坪内 稔典岩波書店 昼餉でしょうか、あるいは晩、酒の上りでしょうか、秋雨の中、蕎麦をゆでる香りが食欲をそそられるようで、つい、蕎麦が食いたくなります。 現代ではラーメンの旨い店を特集するメディアが多いようですが、江戸時代にはもっぱら蕎麦番付が流行ったようです。 江戸っ子は江戸前鮨と並んで、蕎麦を愛したのですねぇ。 今宵、晩酌の上りには蕎麦を茹でましょうか。 あるいは、蕎麦屋で一杯やった後、ざるでも食いましょうか。 にほんブログ村 人気ブログランキングへ
文学

沈黙のひと

昨夜、小池真理子の長編「沈黙のひと」を読了しました。沈黙のひと (文春文庫)小池 真理子文藝春秋 小池真理子というと、わりと色っぽい小説が多いイメージですが、今作は老いさらばえて死んでいった父親を恋う娘の物語でした。 50代、独身、バツ1、編集者の娘。 この娘が幼い頃、父親はよそに女を作り、妻子を捨てたのでした。 そうでありながら、定期的に棄てたはずの妻と娘に会いに来る不思議な男。 元妻も、当たり前のように受け入れるのです。 父親は新しい妻との間に二人の娘をつくり、そのうえ浮気もする、女にだらしない男です。 物語は父親が亡くなって後、異母妹らと遺品整理をするところから始まります。 そこで、娘は古くなって動かない父親愛用のワープロを持ち帰ります。 パーキンソン病を患い、言葉を発することが出来なくなった父は、ワープロを駆使して手紙を書いたり日記のようなメモを残したりします。 娘はワープロに残されたデータを復原し、在りし日の父の思いを知ろうとするのです。 やがて父親の病状は進み、キイ・ボードを叩く力すら失い、文字盤の文字を示すことすら手が震えて不可能になり、沈黙のなか、最後の日々を過ごすので...
スポンサーリンク