文学

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35年目のラブレター

昨夜は珍しくノンフィクションを読みました。 読んだのは「35年目のラブレター」です。35年目のラブレター小倉孝保講談社 山間部に建つ小さな小屋で炭焼きを営む西畑家。 そこの長男、西畑保の生涯に取材したもので、小説のような体裁を取っています。 小学校までは獣道みたいな未舗装の細い道を3時間も歩かなくてはなりません。 それでも同学年の友達が出来ることを楽しみに通い始めます。 しかし、草鞋履きで継接ぎだらけのボロを着た見るからに貧しい彼は、その貧しさゆえにイジメにあってしまいます。 しかも教師までが、彼を疎んじ、イジメを止めさせようとしません。 西畑少年は登校拒否になり、山間部にぽつんと建つ自宅で父親の仕事を手伝ったり、同じ山間部に住む年上の少年と唯一の友達になり、遊びまわったりします。 家庭では白飯を食うことなど出来ず、薄い粥ばかりで、いつもお腹を空かせています。 小学校もろくに通っていないのだから、当たり前ですが読み書きが出来ません。 それが西畑保を苦しめ続けることになります。 長じて町に出、食堂で下働きのようなことを始めますが、メモが取れないので注文を受けることが非常に困難です。。 出...
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吸血鬼

今日は読書をして過ごしました。 読んだのは佐藤亜紀の「吸血鬼」です。 吸血鬼とはいっても、ヴァンパイアが出てきて活躍するわけではありません。吸血鬼 (角川文庫)佐藤 亜紀KADOKAWA 1845年のポーランド。 その当時、ポーランドはオーストリア帝国の支配下にあります。 ポーランドの片田舎の村にオーストラリアの行政官が赴任します。 因習的で気味の悪い村です。 ここで続いて3件、不審死が起こります。 村民は動揺します。 村民の不安を鎮めるため、行政官は村に伝わる因習的な方法を採ることを決意。 それは棺を掘り起こし、遺体の首を切断するというもの。 行政官は当然そんな迷信を信じているわけではありません。 あくまで民心を安んじるための方便です。 時を同じくして、ポーランド全土でオーストリア帝国打倒のための反乱計画が密かに進められます。 この村の地主もこれに呼応するため、大量のライフルを調達して納屋の地下に隠します。 反乱と因習が結びついて、大きな事件を予感させます。  私はかつて、佐藤亜紀の小説を2冊だけ読んでいます。 日本の内乱を描いた「戦争の法」という作品がとにかく面白くて、続けて「バル...
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寛解

昨日は月に一度の精神科受診日でした。 もう寛解にいたって15年以上経ちます。 日常の苦しみはもはや生きるうえで避けられないと分かっています。 単に予防的に飲む薬が欲しくて通っているだけのような状態が続いています。
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その世とこの世

昨夜は京懐石の店(なぜか千葉にある)で結婚26周年のお祝いをしました。 京都で長年修行したという板前が10年前に開いた店で、まぁまぁ満足できました。 良い夜だったと思います。 今日は「その世とこの世」という、大詩人の谷川俊太郎とライターのブレイディみかこの往復書簡集を読みました。 150ページ程度ですので、すぐに読み終わりました。その世とこの世谷川 俊太郎岩波書店 タイトルのその世とこの世は、あの世とは別にその世があり、世界はこの世とその世とあの世で成り立っている、という示唆に富んだ書簡から取ったものです。 詩人とライターという関係性ですが、幽霊とお化けの話から、ウクライナ戦争やコロナ禍の話、果てはトランスヒューマニズムという一種の未来の人間の在り方を規定しようとする思想の話まで出てきて、スリリングな内容になっています。 少々昨日の酒が残っている身には、読みやすくて興味深い書簡集だったと思います。
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永遠と横道世之介

横道世之介3部作の最後、「永遠と横道世之介」を読み終わりました。 上下2巻。 合わせて700頁に及ぶ長編です。 第1作では大学1年生の一年間を、第2作では就職に失敗してバイトで過ごす24歳の1年間を、今作ではまがりなりにもプロのカメラマンとなった39歳の世之介が描かれています。 お調子者で誰からも好かれる世之介。 唯一、女性からはもてません。 今作では、30歳でお付き合いした薄幸の女性との思い出が頻繁に語られます。 世之介が彼女に出会った時、すでに彼女は余命2年の宣告を受けていました。 しかし世之介は、彼女に「早く出会えて良かった」と言います。 2年遅かったら彼女は亡くなっていたと思うと、2年といえど長い年月なのかもしれません。 短い夏の思い出も、クリスマスの思い出も、2回だけ。 それでも世之介にとっては最高の彼女なのです。 彼女と死に別れて後、新しい彼女と付き合うことになりますが、あろうことか最初の告白の時に、「2番目に好き」と言ってしまいます。 死に別れた彼女が永遠に一番ということでしょうか。 世之介にとって最高の人生はリラックスして生きること。 世之介は実際にそうやって生きていま...
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