文学

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埋火

今日からやっと職場の暖房が入りました。 体が楽ですねぇ。 うづみ火や 我かくれ家も 雪の中 私が敬愛する与謝蕪村の冬の名句です。 私はこの句を、古今東西のあらゆる句の中で、最も偏愛しています。 職場に暖房がついて、この句を思い出しました。 まだ雪は先の話ですが、寒さに弱い私には、すでにしっくりくる感じです。 他に蕪村の句で、 埋火や 終には煮ゆる 鍋のもの という、こちらも冬籠りの心地良さを詠んだものがあります。 こちらもなかなか良い感じ。蕪村俳句集 (岩波文庫)尾形 仂岩波書店 同じ埋火という季語を使っても他の俳人だとこうはいきません。 埋火も 消ゆや涙の 煮ゆる音 こちらは俳聖、松尾芭蕉の句。 なんだか湿っぽくてもう一つです。芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 埋火の 夢やはかなき 事ばかり 正岡子規の句です。 これは近代人らしい懊悩が感じられて、それはそれで良いですが、必ずしもわが国の伝統に合致しているとは言えません。子規句集 (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 冬は日の出が遅くて日の入りは早い、平たく言えばお日様を拝める時間が短いわけで...
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選ばれてあることー孤独な女優ー

堀北真希と言えば、なかなかの人気女優で、20代半ばになりますが、清純派のイメージを保っています。 毒気を放つのが魅力の吉高百合子や沢尻エリカとは大きく異なります。 私は毒気を放っている女優のほうがお好みですが。 しかし、堀北真希、テレビ局員に聞いた苦手な女優ランキングで1位に選ばれてしまいました。 演技でしか彼女を知らない私には、不思議な結果に感じられます。 テレビ局員の話では、堀北真希という女優、とにかく愛想がなくて近寄りがたく、硬い性格なんだとか。 話しかけるなオーラがびんびん出ているそうです。 林真理子との対談で、基本的に外出はしない、というか行く所がなく、そのために服を買っても着る機会がないので買い物もしないとか、酒は好きだが他人と飲むのは嫌なので両親と自宅で飲むだとか、恋愛に関しては、興味はあるが外に出ないから無理、人づきあいが苦手だし1人でも楽しいから無理、と20代半ばの女性、しかも華やかな芸能界で生きてきた人とは思えないネガティブ発言を連発していました。 あるいは芸能界で生きてきたからこそ、なのかもしれませんねぇ。 14歳でスカウトされてすぐにテレビドラマに出演し、数々の...
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憂国忌

今日は憂国忌。 三島由紀夫と森田必勝が市ヶ谷の自衛隊駐屯地で決起すべしと檄を飛ばすも、ほとんどの自衛官から罵倒され、切腹して果てた日です。 同性愛関係にあった三島由紀夫と森田必勝の情死と解説する人もいますね。 芸術家が狂気を孕んでいることは、多くの人が指摘していますが、あれほどシニカルで、冷静な筆致の作品群を生み出した三島由紀夫ですら、幻の美しい日本を求めて、狂気としか思えない自死を遂げるとは、芸術家というものの業を感じずにはいられません。 45歳の若さで亡くなってしまいました。 自決の日の朝書き上げたと伝えられる「豊饒の海」の第4部「天人五衰」も、その後狂気の自殺を遂げる人とは思えない、冷静な筆で、しかも読者をあっと言わせるような装置を仕掛けています。天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)三島 由紀夫新潮社 彼の魂はいかなる変遷を遂げ、幻に殉じる覚悟を決める地平にまで辿り着いたのでしょうね。 三島由紀夫は海外でも高く評価されていたため、切腹という時代錯誤な自殺方法は、わが国の評判を貶しめました。 その後、緒方拳主演で「Mishima」という映画が日米合作で製作されています。Mish...
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永久機械

今朝は変に冷え込みましたねぇ。 道行く人も、多くがコートやダウンを着こんでいました。 季節は確実に冬に向かっているようです。 地球温暖化が嘘のように、今年の冬は寒いとの長期予報も出ています。 北海道や東北では早くも積雪が始まっています。 若い頃は、冬のピリピリした感じの空気が好きでしたが、いつの間にやら大の苦手になってしまいました。 数日前から、股引きを履いています。 いざという時格好悪いですが、私にはもう、いざという時なんて無いだろうと思っています。 わだの原 生れてやがて消えてゆく 浪のあをきに 秋かぜぞ吹く 相むかひ 世に消えがたき かなしみの 秋のゆふべの 海とわれとあり ゆふぐれの 沖には風の 行くあらむ 屍のごとく 松にもたるる いずれも若山牧水の歌集「独り歌へる」に見られる晩秋の和歌です。若山牧水歌集 (岩波文庫)伊藤 一彦岩波書店 いずれも寂しい感じ、メランコリックな感じが出ていて、惹きこまれます。 この人、酒を歌うと急に意地汚くなってしまう悪癖がありますが、季節や景色に仮託しておのれの孤独な心情を歌わせると右に出る者がいません。 石川啄木ほど嫌らしい感じが無く、きれい...
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ベスト・セラー

過去、世界で売れた書籍のベストセラー・ランキングを目にしました。 1位は、言わずと知れた「聖書」。 これは鉄板でしょうねぇ。 で、イスラム教の聖典「コーラン」が2位なのかと思いきや、さにあらず。 「コーラン」は3位だそうです。 となると、2位は何なんだ、と思うのが人情。 2位は、「毛沢東語録」だそうです。 なるほど。 中国は人口が多いですからねぇ。毛沢東語録―付・奪権闘争を論ず (1971年) (角川文庫)竹内 実角川書店 但し、1位と2位では大分差があります。 1位の「聖書」は約50億部。 2位の「毛沢東語録」は約9億部だそうです。 毛主席、著作の売り上げだけで相当稼いだんでしょうねぇ。 かのヒトラー総統も個人資産のほとんどは「わが闘争」の売上だったと言いますし。わが闘争(上)―民族主義的世界観(角川文庫)平野 一郎,将積 茂角川書店わが闘争(下)―国家社会主義運動(角川文庫)平野 一郎,将積 茂角川書店続・わが闘争―生存圏と領土問題 (角川文庫)Adolf Hitler,平野 一郎角川書店 ほとんどキリスト教徒がいないはずのわが国でも、かなり安いビジネス・ホテルに泊まっても「聖書」...
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