文学

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月見草

今朝の千葉市は雨が降り、ずいぶん涼しかったですねぇ。 すぐに晴れて暑くなりましたが。 夕方からまた雨の予報が出ています。 なんだか夏と秋がせめぎ合っているようです。 そこで、若山牧水のこんな歌を。 青草の なかにまじりて 月見草 ひともと咲くを あはれみて摘む若山牧水歌集 (岩波文庫)伊藤 一彦岩波書店 月見草と言えば俳句では晩夏の季語とされいます。 ストレートに月見草を詠んだ句というと、高浜虚子の、 開くとき 蕋(シベ)の 淋しき 月見草   虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 蕋とは雄蕊、雌蕊の蕋です。 どちらも晩夏の寂しさを詠んでいるように感じられます。 それはおそらく、春愁秋思の、秋思の前触れともいうべき現象で、元々は白楽天の漢詩に見られる言葉ですが、大陸の人々は文化大革命などで、古い価値観や美意識を捨ててしまったようで、むしろ現代ではわが国に見られる独特の感覚になってしまったようですね。白楽天詩選 (上) (岩波文庫)川合 康三岩波書店白楽天詩選(下) (岩波文庫)川合 康三岩波書店 世の移ろいは不思議なもので...
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夏の物語

夏というと、わが国では怪談ということになっていますね。 エアコンも扇風機も無い時代、怖い話を聞けば寒気がして涼しくなるだろうとは、優雅と言うかまどろっこしいと言うか、今では考えられないことです。 冷房が普及した現代日本においても、夏になると歌舞伎や寄席などでは競って怪談をかけ、テレビでも怪談めいたドラマが放送されます。 昔のわが国の怪談は、「東海道四谷怪談」にしても「番長皿屋敷」にしても、恨みつらみというはっきりした動機がありました。東海道四谷怪談 (岩波文庫 黄 213-1)鶴屋 南北,河竹 繁俊岩波書店四谷怪談 長谷川一夫,中田康子,鶴見丈二,近藤美恵子角川エンタテインメント番町皿屋敷岡本 綺堂メーカー情報なし 近頃のホラーはもっと複雑多岐になり、ホラーの中でもゾンビ物、スプラッター、サイコサスペンス、怪物物、シチュエーションスリラー、POVなどなど、多くのジャンルに分かれるようになりました。 一方、夏の終わりを描いた小説には、どこかセンチメンタルと言うか、メランコリックと言うか、感傷的な雰囲気が漂うようです。 晩夏の物寂しい雰囲気と、夏休みが終わってしまうという子供時代の記憶があ...
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諦める

昨夜、世界陸上400メートルハードルの銅メダリスト、為末大の「諦める力」という書物を読みました。諦める力~勝てないのは努力が足りないからじゃない為末 大プレジデント社 私はタレント本の類を読むことはないのですが、今回、タイトルに惹かれて読んでみました。 しかし中身は、諦めるということとはほど遠いように感じました。 要するに、本当は100メートル走でメダルを取りたかったが、100メートルは選手層が極めて厚く、しかも人種間の身体能力の差もあり、とてもメダリストにはなれないと考え、陸上競技のなかではマイナーで、選手層が薄い400メートルハードルに切り替えた経験をもとに、諦めるというのは成功または勝利をつかむための戦略だ、というのが主たる趣旨でした。 この本の冒頭でも少し触れられていましたが、諦めると言う言葉の語源は、明らめる、つまり物事の本質を調べて明らかにする、ということです。 さらに進んで、仏教では様々な物事の本質を明らかにすることによって得られる悟りの境地を指すこともあります。 それがどうして、夢や希望を追うことを中止する、という意味になったのかは、よく分かりません。 為末という人はま...
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立秋?

今日の首都圏は軒並み最高気温が35度前後の猛暑に見舞われています。 職場はエアコンが効いて快適ですし、通勤も車なのでエアコンにより涼しく、家に帰ってもエアコンを付けるので、夏の暑さを感じなくなっているようです。 そんな猛暑の今日、立秋なんだそうですね。 暦の上では秋。 石原慎太郎がたびたび主張しているように、旧暦の二十四節季を、そのまま西洋暦に移したのは失敗で、日本人が大切にしてきた季節感を二十四節季と合わせるためには、西洋暦に合わせて日を変えたほうが良いでしょうね。 ざっくり一ヶ月半ずれるので、今の9月下旬が立秋になり、それは季節感と一致するものと思われます。 公的な手紙を書く際、時候の挨拶が実際の体感と異なり、奇妙な感じがするのは私だけではありますまい。 秋風の うち吹きそむる 夕暮は そらに心ぞ わびしかりける                                                  (後撰和歌集)  秋風が吹きはじめる夕暮は、空を眺めてもぼんやり切なくなってくる、といったほどの意でしょうか。 初秋の風情を歌っていますが、今日のこの天気では、そんな気分には...
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はらわたのなき涼しさよ

今日は朝から馬鹿に涼しかったですねぇ。 不安定な天気が続き、梅雨が戻ったかのごとくです。 勤め人たる私には、涼しいほうが楽でよろしいですが。 夏休みを満喫したい少年少女には不満かもしれませんねぇ。 涼しさや 闇のかたなる 瀧の音  正岡子規 夏と言っても涼しい日があり、また涼しい場所があります。 闇のかたに瀧の音とは、涼しいというよりも寒そうな感じがします。 涼しさに 海へなげこむ 扇かな   正岡子規 扇を海へ投げ込むほどの涼しさとはいかなるものでしょうねぇ。 夏の盛りを過ぎた物寂しさが感じられますねぇ。 大仏に はらわたのなき 涼しさよ   正岡子規 これはまた、なんとも不気味な味わいの句ですねぇ。 バイオレンス映画で、悪漢が、ある男の肩を撃ち、「腹が暑苦しいな」とか言いながら腹を撃ち抜くシーンがありました。 怖ろしいことです。 この句の大仏は鎌倉の大仏を指していると伝えられますが、なるほど、鎌倉の大仏は野外に鎮座し、夏の日差しでは暑そうに、雪景色の中では寒そうに見えます。 しかし暑そうに見えても、はらわたが無いとは涼しかろうというわけで、無機物が根源的に持つ冷たさを感じさせます。...
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