文学

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独り酒

ようやっと、今日の業を成し終えました。 なんだか疲れました。 この疲れを癒すのは何かと問われれば、そんなことは知れたこと。 わずかな酒であるに違いありません。 秋の夜、独り飲む酒は格別です。 白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒は静かに 飲むべかりけり   私が最も愛する大酒のみの歌人、若山牧水の歌です。 このブログで何度も紹介しました。 月花も なくて酒のむ 独り哉 花にうき世 我が酒白く 飯黒し いずれも松尾芭蕉の句です。 松尾芭蕉というと、求道的なイメージが強いですが、酒もやったんですねぇ。 酒が白いというのはどぶろくで、飯が黒いというのは玄米ということでしょうか?芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)雲英 末雄,佐藤 勝明角川学芸出版 川風や よい茶よい酒 よい月夜 単純な作りですが、明るい感じが悪くありません。 情趣には欠けますが。 芭蕉の弟子、室井其角の句です。其角俳句と江戸の春半藤 一利平凡社 酒と言うのは不思議なもので、全く受け付けない人もいれば、大酒を連日喰らってアルコール依存症になったり、肝臓を患ったりする人もいます。 私は医者から、今の酒量を続けていれば、...
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西洋風の詩的意匠

私はかねてより近代詩や現代詩が苦手で、敬して遠ざけてきました。 なんとなれば、近現代詩の多くは、西洋の手法を真似ながら、彼我の言語の成り立ちの違いゆえ、違和感を感じるからです。 一般に、わが国の詩がまがりなりにも日本語として定着したのは萩原朔太郎以降だと言われています。萩原朔太郎詩集 (新潮文庫)河上 徹太郎新潮社 しかし私の印象では、萩原朔太郎の詩群ですら、和歌や俳句に比べ、日本語として無理があるように感じられるのです。 そんな中、比較的好んでいるのは日夏耿之介の詩群でしょうか。日夏耿之介詩集 (1953年) (新潮文庫〈第557〉)日夏 耿之介新潮社 日夏耿之介は、西洋風の詩的意匠と、日本語、とりわけ雅語及び漢語による文語調との接木細工による奇怪な詩的世界を追求したという意味で、類まれな言語感覚を有していたと言って良いでしょう。 それはおそらく、上田敏の「海潮音」に連なる、象徴派の系譜に連なるのでしょうが、ことはそう簡単ではありません。海潮音―上田敏訳詩集 (新潮文庫)上田 敏新潮社 上田敏が日本語として小慣れた、七五調で西洋の詩を翻訳によって導入し、しかも日本人の感性に合うような...
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演説歌

わが国には、演歌と総称される歌謡曲の一分野が存在します。 しかしこの演歌というものほど、その定義が曖昧なものもありますまい。 元々は、明治時代、自由民権運動に励む人々が、一般庶民に分かりやすいように節をつけて歌った演説歌が始まりとされているようです。 その後、民謡などわが国古来の歌謡に合わせ、西洋音楽の7音階から第4音と第7音を外し、第5音と第6音をそれぞれ第4音と第5音にする五音音階を使用することから、ヨナ抜き音階と呼ばれる音階法を用いた歌謡曲が多く製作され、歌詞においては、悲恋や不倫を含めた男女の情愛、家族愛、職場での結びつきなど、広く人間の情愛を主にしたものが製作され、多くの日本人の心を捕らえました。 一方、淡谷のり子などは演歌を毛嫌いし、演歌撲滅運動などを繰り広げました。 演歌なるものが、古来からの日本人の歌謡の美意識から遠く離れていることは、少しでもわが国の古典文学を学んだ者には自明の理です。 したがって、アナウンサーなどが、「演歌は日本の心です」などと明らかに歴史的に誤った発言をすると、虫唾が走ります。 それは間違いです。 演歌なるものがなぜ現在の60代以上の人々の心をとら...
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月見草

今朝の千葉市は雨が降り、ずいぶん涼しかったですねぇ。 すぐに晴れて暑くなりましたが。 夕方からまた雨の予報が出ています。 なんだか夏と秋がせめぎ合っているようです。 そこで、若山牧水のこんな歌を。 青草の なかにまじりて 月見草 ひともと咲くを あはれみて摘む若山牧水歌集 (岩波文庫)伊藤 一彦岩波書店 月見草と言えば俳句では晩夏の季語とされいます。 ストレートに月見草を詠んだ句というと、高浜虚子の、 開くとき 蕋(シベ)の 淋しき 月見草   虚子五句集 (上) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店虚子五句集 (下) (岩波文庫)高浜 虚子岩波書店 蕋とは雄蕊、雌蕊の蕋です。 どちらも晩夏の寂しさを詠んでいるように感じられます。 それはおそらく、春愁秋思の、秋思の前触れともいうべき現象で、元々は白楽天の漢詩に見られる言葉ですが、大陸の人々は文化大革命などで、古い価値観や美意識を捨ててしまったようで、むしろ現代ではわが国に見られる独特の感覚になってしまったようですね。白楽天詩選 (上) (岩波文庫)川合 康三岩波書店白楽天詩選(下) (岩波文庫)川合 康三岩波書店 世の移ろいは不思議なもので...
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夏の物語

夏というと、わが国では怪談ということになっていますね。 エアコンも扇風機も無い時代、怖い話を聞けば寒気がして涼しくなるだろうとは、優雅と言うかまどろっこしいと言うか、今では考えられないことです。 冷房が普及した現代日本においても、夏になると歌舞伎や寄席などでは競って怪談をかけ、テレビでも怪談めいたドラマが放送されます。 昔のわが国の怪談は、「東海道四谷怪談」にしても「番長皿屋敷」にしても、恨みつらみというはっきりした動機がありました。東海道四谷怪談 (岩波文庫 黄 213-1)鶴屋 南北,河竹 繁俊岩波書店四谷怪談 長谷川一夫,中田康子,鶴見丈二,近藤美恵子角川エンタテインメント番町皿屋敷岡本 綺堂メーカー情報なし 近頃のホラーはもっと複雑多岐になり、ホラーの中でもゾンビ物、スプラッター、サイコサスペンス、怪物物、シチュエーションスリラー、POVなどなど、多くのジャンルに分かれるようになりました。 一方、夏の終わりを描いた小説には、どこかセンチメンタルと言うか、メランコリックと言うか、感傷的な雰囲気が漂うようです。 晩夏の物寂しい雰囲気と、夏休みが終わってしまうという子供時代の記憶があ...
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