思想・学問

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学徒出陣かー人文系の死ー

今朝の新聞で、文部科学省が国立大学に対し、人文社会学及び教育学系の学部・大学院を統廃合により縮小し、代わりに理系に重点を置くよう通知を出す予定だ、との報に接しました。 文部科学省所管の国立研究機関で働く者としては、来るべきものが来た、という感じです。 平成16年の国立大学等の法人化により、我が業界では手っ取り早く成果が上げられ、産学連携などで外部資金を引っ張ってこられる工学や医学・薬学などが重視されるようになり、人文系の部署は目に見えて金が減らされ、冷遇されるようになりました。 それがついに、あまりにも露骨な形で表れてしまったわけです。 私たち行政職にある者はそうでもありませんが、人文系の研究者にとっては恐怖の通知ですねぇ。 18歳人口の激減に対応するものだとかなんだとか屁理屈をつけていますが、要するに金にならない研究はいらないということでしょう。 しかし、文学や哲学などはもともと学問の祖ともいうべきもので、これを疎かにしては国民が教養を失い、人心は荒廃し、拝金主義の世の中が現出するのではないでしょうか。 本来、文部科学省は財務省などに対し、金にならない文学や哲学、理系でも基礎研究など...
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死の魔法

なんだかこのところ残業続きで疲労がたまっているようです。 ストレスからか、日々の晩酌もつい過ぎるようで、これでは体を壊してしまいそうです。 今の私には、若い頃のような、連日の残業に耐える体力はありませんから。 日々の仕事に追われ、それは第一に生活の糧を得るためであり、広い意味での社会参加でもありますが、それがため、重要な問題が置き去りにされているような気がしてなりません。 それは生老病死ということ。 お釈迦様が深く悩んで出家に至ったのは、生まれながらの苦しみ、老いる苦しみ、病気の苦しみ、死の苦しみについて考えるためです。 それはすべての人々が考えるべき重要問題です。 特に、死ぬということ。 私たちはおぎゃあと生まれた瞬間から、死の魔法にかけられています。 まっすぐに、いつか分からない死の瞬間に向かって突き進んでいるわけです。 今、この瞬間も。 普段あまり気にもかけませんが、考えてみると恐ろしい話です。 要するに私たちは全員死刑囚のようなもの。 私が死刑制度に強く反対なのは、誰だって必ず死ぬのに、それを早めることが刑罰になるとは思えないからです。 死の魔法から逃れようと、不老長寿の妙薬を...
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焦土作戦もしくはネロ指令

わが国ではあまり知られていませんが、今日は恐るべき命令が発出された日です。 1945年の今日、第三帝国総統の名で発出されたその命令は、ネロ指令とも、焦土作戦とも呼ばれます。 すなわち、東部からはソ連軍が、西部からは米英を中心とした部隊がついにドイツ本国に侵入し、敵に国内の基地や道路、工場などのインフラを利用されることを怖れ、敵の手に落ちる前にそれらインフラを破壊しろ、という命令です。 これをわが国に置き換えてみれば、その異様さが分るでしょう。 例えば本土決戦に突入し、米英ソ等の軍隊が破竹の進撃を行ったとして、わが国自らが、戦後のことなど考えず、わが国の建物や通信施設、軍事基地などを次々に破壊するということです。 ヒトラーは第三帝国が敗れればドイツはソ連に支配されると考えていたようで、しかも敗れるということは、アーリア人は、自らが差別していた東方の民族に劣ることが証明されるという意味であり、アーリア人の国家が存在する意味はなく、したがって戦後復興のことなど考える必要がないとまで考えていたようです。 なんという極端な考え方でしょうね。 勝負は時の運。 敗れたなら捲土重来を期して再び国力を蓄...
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啓蟄と死後

今日は啓蟄ですね。 その由来を、暦便覧では、陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり、と説明します。 昨日は父の命日でした。 まさに地中の虫たちが地上に出ようとする頃、父は亡くなったのですね。 まるで新しい命に道を譲るかのように。 よく、早春や初秋に亡くなる人が多い、という話を耳にします。 そういえば、父は早春でしたし、祖母は初秋でした。 夏や冬などの過酷な季節を乗り切り、寒暖の差が激しくなった頃に、人は亡くなることが多いのかもしれません。 西行法師が春、花の下での死を切望したことは有名ですね。 願わくば 花の下にて 春死なむ その望月の 如月の頃と。 そしてそれは、ほぼ叶えられました。 幸せな人だと思います。西行全歌集 (岩波文庫)久保田 淳,吉野 朋美岩波書店 お盆の時期は極端に死者が減り、お盆の送りの後、人の死が激増すると、葬儀屋から聞いたことがありますが、本当でしょうか。 送られる死者が、生者を引っ張っていくんでしょうか。 不思議なことです。 父がこの時期に亡くなったせいか、私にとって啓蟄は、人さらに生物の死を考える季節になりました。 死ぬということは生きている者にと...
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奇妙

ドイツでは長いこと、ヒトラーの著書、「わが闘争」は発禁でした。 あの暗い過去の記憶が、表現の自由よりも、禁書扱いにしたほうが楽だと思わせたのでしょう。 しかし、わが国においても、他の自由民主主義国家においても、「わが闘争」は容易に手に入れられる書物であり続けています。わが闘争(上)―民族主義的世界観(角川文庫)平野 一郎,将積 茂角川書店わが闘争(下)―国家社会主義運動(角川文庫)平野 一郎,将積 茂角川書店 私も学生の頃読んだ記憶があります。 これはミュンヘン一揆に失敗して監獄に入れらていた数年の間に獄中で書かれたもので、ナチズムの怖ろしさはまだそれほど伝わってきません。 この本はドイツでベストセラーになり、ヒトラーの個人資産は、ほとんどがこの本の印税であったと伝えられます。 このいわくつきの書物が、近々ドイツで再版されることになったそうです。 私は結構なことだと思います。 ナチズムの中核となる思想を一般のドイツ人が読めないのでは、ナチ統治下の反省をするにも、その理由が分らないでしょうから。  なぜナチズムはあれほどドイツ民族を熱狂させたのか、また、今なおナチズムに傾倒する者が存在す...
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