
生きがい
人間というのは強欲なもので、衣食住に困らない豊かな社会においては、生きがいだとか生きる意味だとかを考えだし、ひどい場合には衣食住に困らない恵まれた境遇にありながら、生きがいや生きる意味が分からない、などと言って自殺する者さえいます。 豊かな社会が必然的に引き受けねばならないリスクであるかのごとくです。 概ね人は、思春期において初めて生きがいとか生きる意味とかを考えます。 しかし就職して忙しく働くうち、そのような問いを忘れてしまうものです。 次に中年にいたり、家庭を持ち、職場でもそこそこ出世し、それなりの収入を得ながら、それでも幸福感が感じられないと、再び生きがいや生きる意味を考えるようになります。 さらに引退し、これが自分の仕事だ、というものを失った老年期にも、そのような疑問を持つようです。 哲学者や文学者、宗教家や精神科医などが、それほど星の数ほど生きがいや生きる意味についての書物を残しています。 しかしおそらく、それらの書物をいくら読破したところで、生きがいや生きる意味を見出すことはできないでしょう。 この問いには普遍的な答えはなく、七転八倒の苦しみの中で、おのれ独りで考え出すしか...