文学 屋上の狂人
今、精神障害者は、グループホームや心理カウンセラーなどの力を借りて、障害を抱えたまま、社会に適応して自立した生活を送ることが求められています。 古くは座敷牢に一生閉じ込められていたことを思えば、隔世の感があります。 しかし私は、自立することが、そのまま精神障害者にとって幸せなのか、疑問に思うことがあります。 菊池寛の小説に、「屋上の狂人」という作品があります。 むやみと高いところに登りたがり、高いところから空を眺めてさえいれば幸せなのです。 ある時父親が、息子に憑いている者を払ってほしい、と巫女を連れてきます 巫女は狐が憑いていると見抜き、木の枝にぶら下げて煙で燻せば狐が出ていく、と言います。 母親は「そんなむごいことはできない」と言い、弟は「医者が治せないものは世界中の神様を連れてきたって治せない」と言います。 母親は情から、弟は合理的精神から、巫女のやり方を批判します。 さらに弟は、「兄さんがこの病気で苦しんどるのなら、どなな事をしても癒して上げないかんけど、屋根へさえ上げといたら朝から晩まで喜びつづけに喜んどるんやもの」、「兄さんのように毎日喜んで居られる人が日本中に一人でもあり...