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文学

審美

安岡章太郎の小説に、「舌出し天使」というのがあります。 これを読んだのは中学生の頃のことで、もう内容もおぼろなのですが、恥ずかしながら服部達という33歳で自殺した文芸評論家をモデルにした作品だということは、大学を出るまで知りませんでした。 「舌出し天使」は戦地から帰った青年の女難めいた悲喜劇をやや自虐っぽいユーモアのスパイスを効かせた作品で、中学生の私には面白く感じられました。 もっとも、これが安岡章太郎の失敗作として評論家に迎えられているらしいのですが。 先日、服部達の「われらにとって美は存在するか」といういかめしいタイトルの遺稿集を読む機会に恵まれました。 服部達という人、その当時文芸評論家の間で流行していたマルクス主義的アプローチや、思い入れたっぷりの作家べったりな批評を拒絶し、純粋に審美的な方法を目指したとされています。 その当時は知りませんが、そんなことは私が物心ついた頃から当たり前でしたけどねぇ。 文学作品というのは作者と読者の共同作業によって出来上がる神秘体験であると意味付け、サルトルの次のような文章を引用しています。 生産者の側から見るならば、美を支えるものは想像力の働...
社会・政治

伝統

私はわが国のみならず、あらゆる国家・民族の伝統を重んじる者ですが、数年前に韓国の一部学者・ジャーナリストが言い出したことには驚きとともに失笑を禁じ得ませんでした。 すなわち、漢字は朝鮮民族が発明した、孔子は朝鮮民族出身だった、サッカーは朝鮮民族が発明した、などの主張です。 しかも根拠は明確ではありません。 ドイツ人が製品を発明し、日本人が商品化し、中国人が大量生産し、韓国人は起源を主張する、というジョークがありますが、正にジョークを地で行くような主張ですねぇ。  まだ日本人は朝鮮人の子孫とでも言ったほうが、多少真実味があるような気がします。 止せばいいのに中国人がネット上でこれに激しく反発し、もともと関係性の良くない中韓両国の感情的な言い合いに発展しました。 最近では台湾が、漢字を世界遺産に申請すべく、大陸に誘いをかけているそうです。 その理由が、うかうかしていると韓国が世界遺産に申請してしまうから、だそうです。  面白いですねぇ. 中国と朝鮮半島は地続きだからいさかいが起きやすいのは当然ですが、それにしてもねぇ。 中国人のマナーの悪さ、韓国人の自己主張の強さが災いして互いを嫌い合い、...
社会・政治

認知症

フランスのシラク前大統領が認知症にかかり、会話もおぼつかない、というニュースが飛び込んできました。 シラク前大統領といえば、ド・ゴール主義の保守政治家で、そのバイタリティは日本でいえば田中角栄と中曽根康弘を足したような感じ、米国でいえばレーガン元大統領のような感じで、1995年には核実験禁止条約発効直前に核実験を繰り返し、イグ・ノーベル平和賞を受賞するという不名誉を受けたタカ派でした。 また、大の親日家で相撲好きでも知られ、来日回数は50回を超え、パリ市長時代と大統領時代にそれぞれ大相撲パリ場所を主催しましたね。 学生時代に東洋文化専門の博物館に通い詰め、日本への憧れを募らせたそうで、日本に滞在していると、自宅にいるような気分で心からリラックスできる、とまで言ったそうです。 元横綱、貴乃花から綱と軍配を贈られ、子どものように喜んだとか。 場所中の在日フランス大使館員の重要な仕事は、毎日取組結果をエリゼ宮に報告することだったというから驚きです。 特に立会前の仕切りに相撲の神髄があるとし、仕切りの時の力士ほど、眼光鋭い者はない、と言って、単なる格闘技としてではなく、精神文化としても高く評価...
映画

サブリミナル

今日はやや難解なSF映画「サブリミナル」をDVDで鑑賞しました。 結婚寸前に婚約破棄された青年、自殺未遂を繰り返す女子美大生、イラク戦争から帰国後、精神を病んで入院中に失踪した息子を探す父親、ロンドンで暮らす何の関係もない3人の物語と、架空の都市、ミーンワイル・シティで新興宗教の教祖暗殺を企む謎の覆面男の物語が、脈絡もないまま同時並行で進みます。 観る者はわけもわからぬまま、灰色を基調とした暗い映像の中に引き込まれていきます。 やがてミーンワイル・シティの覆面男は、イラク帰りの兵士が深層意識の中で築きあげた架空の世界だということがわかります。 婚約破棄された青年は少年の頃空想の中で作った恋人だった女性と再会、女子美大生は自分の意識を探るために自殺未遂の映像を録画し続けます。 それぞれに心に傷を負った登場人物たち。 彼らが偶然あるレストランで一堂に会するとき、悲劇が起こります。 1981年の大作「愛と悲しみのボレロ」と構成が似ているな、と思いました。 1930年代から60年代までの30年に渡る4つの家族の絵空事めいた悲喜劇を、パリ、ベルリン、モスクワ、ニューヨークを舞台に同時並行で描き、...
映画

バッド・トリップ

「ゾンビ・ランド」や「ソーシャル・ネットワーク」などで売り出し中の若手俳優、ジェシーアイゼンバーグ主演の「バッド・トリップ」を観ました。 タイトルから想像される幻想的で魅惑的な悪の世界を描いたサスペンスを期待すると、見事に裏切られます。 ニュー・ヨークの一角、厳格なユダヤ教徒のコミュニティで育った青年。 彼はユダヤ教の指導者、ラビになることを希望し、日々勉学に励んでいます。 しかしある日、隣家に住む友人にそそのかされて、中身がMDMAだとは知らずに運び屋を勤め、大金を手にします。 やがて裏組織のなかでユダヤ人らしい商魂を発揮し、のし上がっていきます。 黒い服に黒い帽子、不自然に伸ばしたもみ上げ、いかにも厳格なユダヤ教徒然とした外見で税関をだましますが、正統的ユダヤ教徒がどういうものか分からない私には、感情移入できませんでした。 どちらかというと地味な人間ドラマと言う感じで、しかも主人公のバック・グラウンドが物語の重要な要素になっているうえ、そのバック・グラウンドが意味するところを理解できないのでは、楽しめるはずもありません。 私には退屈でした。バッド・トリップ 100万個のエクスタシー...
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