文学

スポンサーリンク
文学

ハムスター

今年度末で、就職して丸20年が経過します。 その間ずいぶん色々なことがありましたが、何かもどかしい思いを禁じ得ません。 20年、走ってきたことは間違いないでしょう。 それによって体力がついたか、あるいは消耗したかは不明ですが。 通常、走ればどこかへ行くものです。 しかし私は、ケージの中で回し車を走り続けるハムスターのように、同じところをただぐるぐる回っていただけのような気がしています。 仕事に関する知識や経験、人間関係、そういったものは蓄積されていますが、無駄に蓄積されただけで、一歩も進んでいないような気がします。 ハムスターを主人公にした児童文学に、「フレディ」シリーズという作品があります。 このフレディの思いが、不思議なほど私の心に刺さります。 ケージの中で回し車を回して一生を終えるなんて、ごめんだね。 いつか自由になれるっていう『ハムスター伝説』を信じて待ってたってだめさ。 自由を手に入れる方法は、自分で考えて、自分で探し出すんだ。 まあ児童文学ですから、子供騙しといえば子供騙し。 しかし文学というもの、もともと大人の男の嗜むものではありません。 差別的表現になりますが、あえて言...
文学

雲の墓標

先日NHKの「坂の上の雲」第3部を見てふと思い立ち、久しぶりに阿川弘之の「雲の墓標」を読み返しました。 京都大学で万葉集を学ぶ主人公が、学徒出陣で兵隊となり、特攻隊員として散るまでの心境を、日記形式でつづった名作です。 主人公は当初戦争にも軍隊にも強い嫌悪の念を抱いていますが、時の流れとともに心境は変化し、特攻隊員となる頃には死への恐怖すら薄れていきます。 日露戦争のように辛くも勝利した戦争と違い、必敗の可能性が濃厚になった頃、主人公の魂が救われるという逆説的な物語。 現実の特攻隊員の多くが恐怖におののきながら出陣していったものと思われますが、そう思うことは英霊への冒涜にもなりましょう。 同世代を生きた作者には、そう書かざるを得なかったものと思われます。 そういう意味で、戦後、大日本帝国を全面的に否定する論調が流行したことは、唾棄すべき事態であろうと考えます。 物事の善し悪しはともかく、祖国が存亡を賭けて戦っているとき、国民が勝利を信じて戦うのはむしろ当然のことで、一人日本だけが、近代帝国主義国家にも関わらず、戦っているそのさなかにそれを否定するわけがありません。 後世の異なる常識を以...
文学

戦争の法

現在活躍中の小説家で、最も上質という言葉が似合うのは、佐藤亜紀だと思います。 最近は早稲田大学や明治大学の客員教授として創作の作法を教えているとか。 たいそうなご活躍です。 主にヨーロッパを舞台にした作品が多いですが、「戦争の法」は日本を舞台にしていて、しかもどこかブラック・ユーモアみたいなものが効いている異色の作品です。 平野啓一郎が「日蝕」をひっさげて颯爽とデヴューした時、佐藤亜紀は自身の作品「鏡の影」のパクリだと、小説家にとってはこれ以上ない侮辱を浴びせたことを懐かしく思い出します。 平野啓一郎は佐藤亜紀なる小説家の存在も知らないし、その作品を読んだこともないし、今後も読むことはない、と完全否定しました。 佐藤亜紀はこれに対し、盗作をしたかどうかはともかく、彼が嘘つきだということははっきりした、と言って応戦しました。 「鏡の影」も「日蝕」も新潮社から出版されていたところ、新潮社は「日蝕」の出版に合わせるように「鏡の影」を絶版にしてしまいました。 二人を比べて、平野啓一郎の将来性に賭けたということでしょうか。 しかし、現在の活躍を見る限り、新潮社の判断が正しかったとは言い難い状況で...
文学

師走

今日から師走ですね。 暦どおり、今日の関東地方は真冬の寒さ。 今シーズン一番の冷え込みだそうです。 私は今日、この冬初めてダウンのコートを着て、マフラーを巻いて出勤しました。 今年はウォーム・ビズということで暖房は控えめ。 先日ドンキ・ホーテで購入した膝かけが大活躍しています。 12月には春待月(はるまちづき)という洒落た別称もありますね。 でも実感としては、やっと冬に入ったところで、まだ春を待つという気分にはなりません。  私は30過ぎまで手足の先が氷のように冷たくなる冷え性でしたが、冬は嫌いではありませんでした。 凛とした冷たい空気が、しゃんとする感じがして好ましく思えたのです。 30代半ばくらいから、冷え性は肥満とともに良くなりましたが、逆に冬の寒さを辛く感じるようになりました。 不思議ですね。 冬菊の まとふはおのが ひかりのみ  水原秋桜子 名句ですねぇ。 冷たい冬の空気の中、確かな生命の輝きを感じさせる、力強い句です。 できることなら私も、冬菊のようにおのれの光のみを頼りに、後半生を生きたいものです。新装版 水原秋櫻子 自選自解句集水原 秋櫻子講談社水原秋桜子集 (朝日文庫...
文学

○○の娘

スターリンの一人娘、ラナさんが85歳で亡くなったそうですね。 16歳の時の初恋の相手は10年間も流罪に処せられたとか。 その後旧ソ連で三度結婚、いずれも離婚または死別しました。 三度目の夫の母国であるインドに夫の遺灰を返すため渡ったとき、旧ソ連のパスポートを燃やし、亡命を宣言、米国籍を取得しました。 時に冷戦真っただ中の1967年。 堂々と共産主義を批判し、スターリンやクレムリンの実情を描いた著書はベストセラーになりました。 米国では、ある者からは共産主義の悪魔、スターリンの娘と罵られ、またある者からは共産主義の悪魔から逃げ出した英雄と称えられ、どちらにしてもスターリンの娘という呪縛から逃れることはできませんでした。 晩年のラナさんです。 父、スターリンに抱かれるラナさんです。 ○○の娘というと思いだすのは、「更級日記」の作者、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)ですねぇ。 本名は伝わっていません。 日本では著名な女性でも○○の娘とか、××の母、としか伝わっていない人がけっこういるんですよねぇ。 スターリンの娘とは何の関係もありませんが。 「更級日記」というと、「源氏物語」に夢中に...
スポンサーリンク