文学

スポンサーリンク
文学

ちょっと今から仕事やめてくる

昨夜、「ちょっと今から仕事やめてくる」という小説を読みました。 軽い読み物といった趣で、すらすら読めました。 電撃小説大賞メディアワークス文庫賞というのを受賞したそうです。 印刷会社に勤め、営業に精を出す新入社員の苦しみを描いた作品で、なんとなく、身につまされました。 働く意味を考えつつも日々の激務に追われ、駅のホームから転落しそうになった主人公を助けたヤマモト。 ヤマモトは主人公の小学生時代の同級生を名乗りますが、主人公にはヤマモトの記憶がありません。 しかしヤマモトと酒を飲んだり休日を一緒に過ごしたりするうち、少しづつ元気を取りもどしていきます。 ミステリアスながら底抜けに明るいヤマモト。 それでも日々の激務や、営業同士の足の引っ張り合い、上司からのきつい叱責にしだいにおいこまれていきます。 サラリーマンならだれもが一度は通るしんどい道。 涙なしには読めません。 月曜日の朝は、死にたくなる。 火曜日の朝は、何も考えたくない。 水曜日の朝は、一番しんどい。 木曜日の朝は、少し楽になる。 金曜日の朝は、少し嬉しい。 土曜日の朝は、一番幸せ。 日曜日の朝は、少し幸せ。でも、明日を思うと一...
文学

美と恐怖

美と恐怖が分かちがたく結びついていることは、美の本質を探ってみれば、自明の理であろうと思います。 だからこそ、恐怖映画とか怪奇映画は、ロマンチックで美しいものとされてきました。 近年にいたり、即物的とも言うべき、血がドバドバ出たり、むやみに残虐シーンが多いホラー映画が生まれてから、美と恐怖の間に乖離がうまれたように誤解されるようになったように思います。 私はそうは思いません。 下品なホラー映画には、恐怖を感じません。 しかし上質なホラー映画は、恐怖とともに、うっとりするような映像美を描き出します。 つまり下品なホラー映画は美しも無ければ怖くも無いので、美と恐怖の融合など望むべくもないということです。 「シャイニング」しかり。シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン ジャック・ニコルソン,シェリー・デュバル,ダニー・ロイドワーナー・ホーム・ビデオ 「リング」しかり。リング 鈴木光司,高橋洋角川映画 「箪笥」しかり。箪笥 イム・スジョン,ムン・グニョン,ヨム・ジョンア,キム・ガプスアミューズソフトエンタテインメント 「ノスフェラトゥ」しかり。ノスフェラトゥ クラウス・キンスキー,イ...
文学

永遠

今日は梅雨寒。 最高気温は20度程度と、ずいぶん涼しく感じられます。 考えてみると、梅雨を詠んだ俳句というのは、あまり思いつきません。 俳句というと自然美に人情などをからめて詠む短い定型詩という印象が強いのではないでしょうか。 しかしあえて、この中途半端な梅雨の時季に、哲学的とも言うべき、永遠を感じさせる句を鑑賞してみたいと思います。 生きかはり 死にかはりして 打つ田かな 村上鬼城村上鬼城の世界松本 旭角川書店 この句は極めて分かりやすいながら、どこか不気味な感じが漂って、この俳人の持ち味がよく出ていると思います。 生きかはり死にかはりという句に、人間の営みの、命のサイクルとでも言うべき永遠性が感じられます。 じつにスケールの大きな句で、俳句というもののイメージをぶち壊すような破壊力を感じます。 百年後の 見知らぬ男 わが田打つ 齊藤美規白壽―齊藤美規句集 (今日の俳句叢書)斉藤美規角川書店 この句も、100年後という遠い未来に思いを馳せて、SF的な趣を醸し出しています。 100年後、私の職場が存続しているのかどうかさえ分かりませんが、まだ存在していたら、相も変わらずつまらぬ事務仕事...
文学

謎解き+心理描写

午前中は散髪に行ってさっぱりし、午後は読書などして過ごしました。 読んだのは「後悔と真実の色」という思わせぶりなタイトルのミステリーです。 都内で、若い女を狙った連続殺人事件が発生。 人差し指が切り取られ、持ち去られるという猟奇的な特徴を持っています。 犯人に迫るのが警視庁捜査一課の切れ者刑事です。 この小説がユニークなのは、犯人捜査の途中で切れ者刑事が不祥事を起こし、退職させられてしまうこと。 切れ者刑事は妻から逃げるように家出し、ホームレスにまで落ち込んでしまいます。 指蒐集家を自称する犯人や多くの刑事の心理描写が巧みに描かれます。 謎解きと心理的葛藤を両方追って、まずまず成功しています。 特に切れ者刑事が退職に追い込まれた終盤以降、物語は加速していき、息をもつかせぬ迫力です。 文庫本で650ページを超す大作ながら、一気に読ませる力技は見事です。 警視庁と所轄署の暗闘、また、捜査一課とそれ以外の部署との対立が描かれ、これが実際に近いとすると、組織の不備なのではないかと思わせるほどです。 まぁ、私の職場でもセクショナリズムに凝り固まったような愚かな人がいるくらいですから、立場の違いに...
文学

遍在

世に不思議の事象あまたありと雖も、我が身に降りかかることありとは思はざりき。 我、宵、寝ころびて書読みつつうたた寝すれば、我が身を薄き膜覆いたり。 はて、なんぞと思ゆれども、膜の中、涼しく快きゆえ、我、そを楽しみたり。 うつらうつらせしうちに、目覚めれば、膜厚くなりて、もはや防弾ガラスの如くなり。 我、そを驚かず。 むしろ望むところと、喜ばざる能はず。 陶然としてガラスの膜眺むれば、膜、僅かに振動起こしたり。 されど我が寝ころびおる畳、微動だにせず。 我、ただ酔いたる心地して、成り行きを楽しみたり。 膜の動きいよいよ激しく、つひには浮かばむとす。 我、そを見ても、動じることなし。 すべては予め定められしことと思ゆ。 ついに膜、勢い増して跳ね上がり、天井を突き破る。 天空目指し一直線に飛ぶ。 気づけば眼下に列島の形をなしたる光を見ゆ。 光、点在し、光多きは都会なりしと悟る。 我、天高く浮遊する化け物となりしか、はたまた天上界に至りて天使に化けたるか。 膜、堅固にして我を守ること万全たり。 しばし浮遊せし後、膜、再び振動す。 さらなる高みに向かひ、上昇すること宇宙ロケットの如し。 我、初め...
スポンサーリンク