鴨長明の「方丈記」を読みました。
なぜか突然、有名な冒頭「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」、というフレーズを思い出したからです。
初めて読んだ学生のころ、なんだか言い訳くさい随筆だな、と思いました。
しかし、今読むと、また違う感想を持ちます。
世を捨てて隠棲した筆者に、シンパシーを感じます。
今の私は、精神科医から出勤を禁じられ、いはば、期間限定の、世捨て人。その期間も、定かではありません。
鴨長明のように、方丈(約四畳半)の庵があって、時折琵琶を奏で、四季の移ろいを感じられれば満足、というわけにはいきませんが、私とて、どうせ出世するはずもなく、金持ちになれるわけもなく、私はただ、三食を食らって、夕餉にはわずかの酒を飲み、古人の残した名文に接し、その真似事ができれば満足です。
それにしても、日本の古典に接すると、現代作家も、作詞家や歌手も、仮に接したことはなくても、古典や日本の文化伝統から抜け出せないことを、思い知っていただきたいと思うばかりです。