木枯らし

文学

 木枯らしが吹きましたね。いよいよ冬が近づいています。

 ボードレールは、「人工楽園」で「カナダのような冬、ロシアのような冬であればあるほどよい。それだけ彼の住む巣は暖かく、甘美に、いとしいものとなろう」と、寒い冬を賛美しています。
 極寒のなか、暖かい部屋でくつろぐのは至福のひと時ですね。

 本朝では、蕪村が、「屋根ひくき宿うれしさよ冬ごもり」と詠んでいます。
 見事なまでの、ボードレールとのシンクロですね。

 さらに、三好達治は、
 「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」
 と、歌っています。

 18世紀の俳人、19世紀ヨーロッパの詩人、近代の日本詩人と、冬ごもりを幻想的なもの、暖かいものとして憧憬するその精神は、脈々と続いています。
 冬ごもりの幻想的風景は、家にこもることを介して、己れの内面に深く沈滞するかのごとくです。

 冬は酒が旨くなる、というのも、この冬ごもりの暖かさに由来すると言えましょう。

 人工楽園 (角川文庫クラシックス)
与謝蕪村の本
三好達治