今日は9月9日、重陽の節句ですね。
だからといって、菊を酒に散らせることもせず、平凡な平日にすぎません。
台風の影響か、私が住まい、働く千葉県は、急激に涼しくなりました。
今までの猛暑が嘘のような。
また暑さのぶり返しはあるでしょうが、それは夏の残照のようなもの。はかないに違いありません。
芭蕉の句に、
この道や 行く人なしに 秋の暮
というのがあります。
静かな秋の夕暮れ時の、寂しい路傍が目に浮かびます。
一方、蕪村の句で、
戸をたたく たぬきと秋を おしみけり
という、どこか滑稽味のある句が詠まれています。
四季折々を楽しむのがわが国古来のしきたりですから、秋には秋の良いものを楽しみたいものです。
秋は豊かな収穫を寿ぐ時季でもあります。
今年は秋刀魚が不漁だそうで、我が家ではまだ秋刀魚を食していません。
去年は一匹50円まで下がって、いやというほど食ったのですが、今年はまだ200円もしますね。
目黒の祭りも金がかかってしかたないでしょう。
また、秋はどこかさびしい季節でもありますね。春は春愁、秋は愁思とか言います。
人にとって過ごしやすいはずの春や秋に憂愁の情に捉われるというのは不思議ですね。
すむとても いく夜もあらじ 世の中に くもりがちなる 秋の夜の月 藤原公任
素直に読めば、秋の月といってもきれいに澄んで見えるのはわずかで、大抵は曇りがちだなあ、というほどの意かと思いますが、すむを住むと読めば、自ずと歌の趣は変わってきます。
そう読むべきではない、という方もいらっしゃるかと思いますが、私は、これを住むと読んで、秋の月夜に仮託して世の中の生きづらさを詠っている、と思いたいのです。
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冷泉 為人,西岡 陽子,山埜 幸夫,田中 久雄,四方 邦〓 | |
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