最近インフルエンザが猛威をふるっているそうですね。
私は五年前インフルエンザにかかり、大変な思いをしたことから、その後毎年11月に予防接種を受けるようにしており、今のところ健康です。
インフルエンザに限らず、高熱が出ると、意識がおかしくなって、幻覚を見たり幻聴を聞いたり悪夢にうなされたりしますね。
私は繰り返し、吸血鬼の幻覚に悩まされました。
吸血鬼といっても、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」のような、吸血鬼でござい、という格好をしているわけではありません。
見た目は全く普通のおっさんやおばさん、にいちゃん、ねえちゃんが、病気の私を心配するようにベッドに近づいてきて、いきなりガブッとくるわけです。
敵だと思いもしなかった相手に攻撃されることほど怖ろしいことはありません。
インフルエンザから回復して、シンクロニシティ(必然性のある偶然、共時性ともいう)を感じる出来事がありました。
読もうと思って買っておいた長いホラー小説を回復してから読んだら、まるで私が見た幻覚とそっくりなのです。
その小説は、「屍鬼」と言います。
ある小さな村に洋館が建ち、ある一家が引っ越してきたことから、事件は発生します。
要するに吸血鬼の一族で、夜な夜な村人を襲うわけです。
血を吸われた村人もしばらくすると吸血鬼になって蘇りますから、村人と吸血鬼はやがて数の上で拮抗し、両者は激しく対立します。
しかし、吸血鬼は別に悪であるわけではありません。
そういう風に生まれついてしまっただけ。
理性や感情は人間とほぼ同じです。
両者はやがて凄惨な殺し合いを始めますが、村に一つだけある寺の住職が、吸血鬼にシンパシーを感じて、人間との共存を図ろうとします。
住職はやがて辛い決断を強いられます。
この小説は文庫本で5冊もあり、読み応えがありますが、無理のない魅力的なストーリー展開で、ぐいぐいと読ませます。
私は一日で読み終わってしまいました。
ベストセラーにもなったJホラーの代表作の一つです。
この手の小説につきものの、善悪の倒錯や、人間から見た敵の吸血鬼もまたこの世の普通の生き物に過ぎないことが、淡々と綴られます。
冬の夜、ホラー小説を楽しむのも一興かと思います。
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